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病院。
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葵「・・・ったく、電車に乗っていったのか?」
揺れる救急車の中で、中谷は点滴の針を刺されていく。
りら「あ・・・ぅく・・・っ。」
葵「15分くらいで楽になるからな。・・・次、お前な。」
長椅子に座ってる俺の腕に消毒液が塗られていく。
針が刺され、冷たい液体が血の中を流れ始めた。
葵「・・・工藤って言ったっけ?」
秋臣「はい・・・。」
葵「りらの我が儘に付き合ってくれたんだろ?ありがとな。」
秋臣「我が儘っていうか・・・1人で行こうとしたんで・・・。」
葵「・・・そっか。寝るとこなくて悪いな。もう喋るな。お前も入院だから。」
『喋るな』と言われなくても、もう俺は喋れなかった。
意識を手放さないよう耐えるのに必死だ。
秋臣(くそ・・・もっと早くに帰せばよかった・・・。)
好きな子に苦しい思いをさせてるのは自分だ。
でも、彼女について来なかったらもっと大変なことになってたかもしれない。
目を閉じて、朦朧とする意識をなんとか留める。
でも・・・
秋臣(やば・・・も・・限界かも・・・。)
揺れる車内に合わせるように意識が飛び始める。
葵「椅子で横になっとけ。その方が楽だ。」
体を押さえつけられ、俺は上半身だけ横になった。
それと同時に意識が遠くなっていき、俺は眠りについた。
ーーーーーーーーーー
秋臣「・・・う。」
目が覚めた俺は自分の状況を確認する。
見慣れない天井。
自分のじゃないベッドの感触。
どこか遠くで人の声が聞こえる。
秋臣(どこだ・・・ここ・・・。)
体を起こして回りの見渡す。
狭い空間。
俺の右側だけカーテンがあって、反対側はなかった。
壁沿いに棚が立ち並び、薬品らしきものがたくさん詰め込まれてるのが見える。
一度は嗅いだことのある独特な匂いが鼻についた。
秋臣「病院・・・。」
自分の腕に違和感を覚え、見てみると針が刺さってた。
繋がれた管をたどっていくと、点滴のパックが見える。
薬液はほぼ空だ。
秋臣(どうしよう・・・。)
勝手に出て行っていいものか分からずにいると人の足音が聞こえ、カーテンが開けられた。
看護師「あ、気がついた?どう?体調は。」
白衣を着た人が入ってきた。
どう見ても病院の看護師さん。
俺の首もとや手首をやたら触ってくる。
看護師「うん、大丈夫そうだけど・・・気分はどう?」
秋臣「大丈夫・・・です。」
看護師「一回先生に診てもらおうね。ちょっと待ってて?」
看護師さんはカーテンを閉めて、パタパタとどこかへ行ってしまった。
秋臣「これ・・・抜いて行って欲しかったな・・。」
ベッドに腰かけるようにして座り直し、俺は医者が来るのを待った。
数分もすればさっきの看護師さんが医者を連れて戻って来てくれた。
葵「お、気がついたか。」
秋臣「!!」
看護師さんが連れてきたのは中谷のお兄さんだった。
白衣を着て、聴診器を肩にぶら下げてる。
葵「保護者には連絡したから。」
そう言いながら俺の体の様子を診ていく。
聴診器で胸の音を聞かれ、ペタペタと俺の首元を触る。
秋臣「あー・・・。」
葵「もうすぐ迎えに来ると思う。支払いしたら帰っていいぞ。なんかおかしいとこあったらまた来い。」
お兄さんは俺の腕から点滴の針を抜いてくれた。
絆創膏を貼られ、『俺の』診察は終わった。
秋臣「・・・あの、中谷は・・?」
揺れる救急車の中で、中谷は点滴の針を刺されていく。
りら「あ・・・ぅく・・・っ。」
葵「15分くらいで楽になるからな。・・・次、お前な。」
長椅子に座ってる俺の腕に消毒液が塗られていく。
針が刺され、冷たい液体が血の中を流れ始めた。
葵「・・・工藤って言ったっけ?」
秋臣「はい・・・。」
葵「りらの我が儘に付き合ってくれたんだろ?ありがとな。」
秋臣「我が儘っていうか・・・1人で行こうとしたんで・・・。」
葵「・・・そっか。寝るとこなくて悪いな。もう喋るな。お前も入院だから。」
『喋るな』と言われなくても、もう俺は喋れなかった。
意識を手放さないよう耐えるのに必死だ。
秋臣(くそ・・・もっと早くに帰せばよかった・・・。)
好きな子に苦しい思いをさせてるのは自分だ。
でも、彼女について来なかったらもっと大変なことになってたかもしれない。
目を閉じて、朦朧とする意識をなんとか留める。
でも・・・
秋臣(やば・・・も・・限界かも・・・。)
揺れる車内に合わせるように意識が飛び始める。
葵「椅子で横になっとけ。その方が楽だ。」
体を押さえつけられ、俺は上半身だけ横になった。
それと同時に意識が遠くなっていき、俺は眠りについた。
ーーーーーーーーーー
秋臣「・・・う。」
目が覚めた俺は自分の状況を確認する。
見慣れない天井。
自分のじゃないベッドの感触。
どこか遠くで人の声が聞こえる。
秋臣(どこだ・・・ここ・・・。)
体を起こして回りの見渡す。
狭い空間。
俺の右側だけカーテンがあって、反対側はなかった。
壁沿いに棚が立ち並び、薬品らしきものがたくさん詰め込まれてるのが見える。
一度は嗅いだことのある独特な匂いが鼻についた。
秋臣「病院・・・。」
自分の腕に違和感を覚え、見てみると針が刺さってた。
繋がれた管をたどっていくと、点滴のパックが見える。
薬液はほぼ空だ。
秋臣(どうしよう・・・。)
勝手に出て行っていいものか分からずにいると人の足音が聞こえ、カーテンが開けられた。
看護師「あ、気がついた?どう?体調は。」
白衣を着た人が入ってきた。
どう見ても病院の看護師さん。
俺の首もとや手首をやたら触ってくる。
看護師「うん、大丈夫そうだけど・・・気分はどう?」
秋臣「大丈夫・・・です。」
看護師「一回先生に診てもらおうね。ちょっと待ってて?」
看護師さんはカーテンを閉めて、パタパタとどこかへ行ってしまった。
秋臣「これ・・・抜いて行って欲しかったな・・。」
ベッドに腰かけるようにして座り直し、俺は医者が来るのを待った。
数分もすればさっきの看護師さんが医者を連れて戻って来てくれた。
葵「お、気がついたか。」
秋臣「!!」
看護師さんが連れてきたのは中谷のお兄さんだった。
白衣を着て、聴診器を肩にぶら下げてる。
葵「保護者には連絡したから。」
そう言いながら俺の体の様子を診ていく。
聴診器で胸の音を聞かれ、ペタペタと俺の首元を触る。
秋臣「あー・・・。」
葵「もうすぐ迎えに来ると思う。支払いしたら帰っていいぞ。なんかおかしいとこあったらまた来い。」
お兄さんは俺の腕から点滴の針を抜いてくれた。
絆創膏を貼られ、『俺の』診察は終わった。
秋臣「・・・あの、中谷は・・?」
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