死が二人を別こうとも。

すずなり。

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海まで。

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中谷が家庭の事情で学校を休んで1週間が経った。

借りていたCDは返却した。

そのことを彼女に伝えたいけど、連絡先を知らない上に彼女は学校を休んでる。



秋臣(返したらそのまま借りるって言ってたのになー・・・。)





いつもより早い時間の電車に乗り、朝一番に教室に着いた。

自分の席にすわり、ぼーっと音楽を聞く。

耳に入れてるウォークマンから流れてくるのは洋楽。

ピアノがメインの・・・愛を歌う曲だ。




秋臣(・・・こんだけ『好きだ』って言える外人さんが羨ましい・・・。)




1週間、中谷の姿が見えないのが・・・辛かった。

勝手に想いを寄せてるだけだけど、毎日姿が見たい。




秋臣(重症だな・・・俺。)



告白してフラれたら・・・こうやって思い悩むこともなくなるんだろうか・・・。

それとも落ち込みまくって何も考えられなくなったりとかするんだろうか・・・。



秋臣(うーん・・・。)




机に突っ伏して目を閉じる。

まだ朝が早いからか、窓から入ってくる風はそんなに暑くない。

昼間の暑さに比べたら心地よささえ感じてしまえそうだ。




秋臣(今日は来るといいな・・・。)




淡い期待を胸に寄せてるとき、俺の耳からイヤホンが外れた。

誰かに引っ張られた感じがある。

それは・・・身に覚えがあった。




秋臣「・・・中谷。」




目を開けると中谷の姿があった。

にこにこ笑いながらイヤホンを耳に入れてる。



りら「おはよ。今日はなに聞いてるの?」

秋臣「1週間ぶりに来て言うセリフかよ・・・。」

りら「・・・あ、この歌詞いいねっ。」

秋臣「聞けよ。」



英語で歌われてる歌詞を訳せるとこもすごい。

でもこの歌詞は・・・



『私を海に連れていって。波打ち際で夕陽をみたいの。泳げないけど・・・あなたと一緒にいってみたいの。』



秋臣(簡単に訳すとこうなんだけど・・・。)




中谷はこの歌詞がいいって言ってた。

ということは・・・




秋臣「海・・・行きたい?」




そう聞くと中谷の目が輝いた。



りら「うんっ!行ったこと無いから・・・見てみたい。」

秋臣「え?見たこともないのか?」

りら「無いよ?」





高校生にもなって海を見たことがないとか・・・少し驚いた。

なぜ驚いたかというと・・・ここから電車で1時間も行けば海を見ることはできるから・・・。




秋臣「へぇー・・・電車ですぐだけどな。」



そういうと中谷は目を丸くして驚いた。




りら「何行きに乗ったら見れる!?電車でどれくらい!?」

秋臣「?・・・南行きだけど・・・1時間くらい?」




俺が答えると、中谷は耳からイヤホンを取り外した。




りら「ありがとっ。ちょっと行ってくる!」

秋臣「は!?海に!?」

りら「うんっ。じゃあまた明日ねっ。」




中谷はそのまま教室をでていってしまった。




秋臣「え・・・?1週間も学校休んどいて・・・今日も休むのか・・?」



休むというよりサボり・・・。

俺は辺りを見回した。



まだ誰も来てない教室。

俺が学校に来てることは誰もしらない。

今、帰れば・・・休み扱いになるだけだ。






秋臣(よしっ!)




俺は鞄を持って中谷を追いかけた。

駅に向かうはずの彼女をひたすら探しながら走る。

幸いにも学校のやつらはまだ登校時間じゃない。

同じ制服を来た人たちに出会うこと無く、俺は駅についた。

切符を買おうとしてる彼女の姿が目に入る。




秋臣「中谷!」

りら「?・・・どうしたの?工藤くん。」

秋臣「俺も行く。」




学校をサボると言ってるようなものだ。

普通なら『ダメだよ』とかいうところなのに、彼女は違った。




りら「・・・ふふっ。共犯だね(笑)」

秋臣「ーーーっ!」




まるで俺が来たことが嬉しいとでもいうかの表情を見せる彼女。

そんな顔を見せられて、心が跳ねないやつなんかいない。




秋臣「『岬の浜』って駅だ。小さい駅だけど目の前が海水浴場になってる。」

りら「わかった。」




自動券売機にお金を入れて切符を買う。

改札をくぐり、やってきた電車に二人で乗り込んだ。



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