死が二人を別こうとも。

すずなり。

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カレカノ・・・?

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週明けの月曜日・・・




学校の最寄り駅で電車から降りた俺は、改札を出て歩いていた。

肩に鞄をひっかけ、ウォークマンで音楽を聞きながら。




秋臣(・・・ったく、この曲をピアノ版にアレンジしたやつ誰だよ。)




金曜日に中谷に薦めてもらったCDの曲。

ピアノ版の自分の曲を何度も聞き返していた。




秋臣(ここはもっと音を少なくして・・・最後は厚くして・・・。)



頭の中で音符を描いていく。

一点を見つめながら歩いていると、俺の左耳からイヤホンが外れた。

どうも誰かに引っ張られたみたいだ。




秋臣「?」

りら「おはよ。・・・そんな怖い顔して何聞いてるの?」



俺のイヤホンを抜いたのは中谷だ。

自分の耳にイヤホンを入れてる。



りら「あ・・・この曲好きなの?」

秋臣「まぁ。」

りら「私も好きだよ?ピアノになるとガラッと雰囲気が変わるよねー。」





にこにこ笑いながら歩く中谷。

抜けそうになるイヤホンを手で押さえ、歩幅を合わせるようにしながら俺も歩く。




りら「工藤くんはいつも何聞いてるの?」

秋臣「俺は・・・基本的にはなんでも。洋楽、邦楽問わず。」

りら「へぇーっ、今度お薦め教えてくれる?」

秋臣「もちろん。」




普通に歩きながら話す中谷。

登校途中の同じ学校のやつらが話す声が耳に入る。




「あの二人って付き合ってんの!?」

「いつから!?」

秋臣「・・・。」




1つのイヤホンを二人で使ってる。

離れるとイヤホンが外れてしまうから、側をあるくのが必然になってくる。

どう見ても・・・『カレカノ』だ。





秋臣「・・・・中谷?」

りら「うん?」

秋臣「その・・・一緒に歩いてていいのか?」


中谷にも好きなやつとかいるかもしれない。

もしかしたら彼氏がいたりとか・・・。



俺と一緒に歩いてる光景とか見られたくないんじゃないかと思って聞いた。




りら「?・・・うん。同じクラスに行くんだし。それにこの曲最後まで聞きたいし。」

秋臣「そ・・・っか。」

りら「?」



音楽を聞きながら歩いてるからか、ご機嫌な彼女。

鼻歌混じりに歌いながら歩いてる。



りら「♪~♪♪~・・・。」

秋臣「・・・ははっ。」

りら「なに?」

秋臣「いや、結構自由なタイプなんだなと思って。」



才色兼備、容姿端麗・・・

そんな言葉が似合う彼女。

実際、賢く可愛いけど本人は気取ったりはしないタイプだった。




秋臣(文武両道じゃなくて文美両道って感じだな。)



体育が苦手だから。




りら「あー・・・お兄ちゃんにもよく言われる。」




くすくすと笑いながら言う中谷。




秋臣「お兄さんいるんだ?」

りら「うん。あとは・・・私の人生だし、楽しいことたくさんしたいし。」

秋臣「まぁ、そうだな。」




誰かと比べる人生も、誰かと比べられる人生も真っ平だ。



『人生楽しんだもの勝ち』



誰が言ったのかは知らないけど、それでいいと俺は思ってる。



りら「あ、曲終わっちゃったね。」




ちょうど学校の校門をくぐったところでイヤホンから流れてた音が消えた。

中谷は自分の耳からイヤホンを外して、俺に返してきた。




りら「ありがと。私、寄るとこ思いだしたから先行くねー。」

秋臣「おぅ。」



すたすたと歩いていく彼女の後姿を見送り、俺は昇降口に入った。

靴を脱ぎ、上靴に履き替えてると翼が現れた。



翼「おはよ。」

秋臣「おはよ。」

翼「今、中谷と一緒に歩いてたよな?」

秋臣「あぁ。」




俺はさっきのことを翼に話した。

偶然レンタルショップで会ったこと。

イヤホンを取られ、一緒に聞きながら来たことを。




翼「へぇー、よかったじゃん。」

秋臣「?・・・何が?」

翼「オミ、中谷のこと好きだろ?仲良くなんないと進展はないからな。」

秋臣「!?」




翼の言葉に、足が止まった。

驚きすぎて声も出せない。




秋臣(・・・何で翼が知ってるんだ?俺、言った?)



頭の中で記憶を手繰り寄せるけど

俺の考えが読まれてるのか、翼は言葉を続けた。



翼「いっつも見てんじゃん。」

秋臣(バレてる・・・。)

翼「中谷は彼氏いないみたいだし・・・好きなタイプでも聞いてやるよっ。」





バシバシと肩を叩いて、翼は走っていった。



秋臣「・・・好きなタイプか。」




中谷のストライクゾーンに入ってることを願いながら、俺も教室に向かって歩き始めた。





ーーーーーーーーーー





キーンコーンカーンコーン・・・




担任「おはよー。席についてー。」



教室のドアが開き、担任が入ってきた。

もうホームルームが始まるというのに、中谷が戻ってこない。



翼「・・・中谷は?朝、一緒だったろ?」




翼がこそっと聞いてきた。




秋臣「なんか寄るとこあるって先に行ったんだけど・・・。」



学校で寄るとこなんて数が限られてる。

職員室か図書室、保健室くらいだ。



秋臣(保健室・・・?)



中谷は金曜に離れの校舎の保健室にいた。

また保健室にいるのかもしれない。

そう考えてると、翼が担任に聞いた。



翼「せんせー、中谷がまだでーす。」




翼の言葉を聞いた担任は、出席簿を開きながら答える。




担任「中谷はさっき帰った。」

秋臣「・・・帰った!?」

担任「ご自宅から連絡があって・・・家庭の事情ってやつだ。」

秋臣「あー・・・。」

翼「あー・・・。」




なんとなく理解した俺と翼。

翼は残念そうに言う。




翼「好きなタイプ聞きたかったのになー・・。」

秋臣「まぁ・・・また今度で。」




俺はその日の授業をつまらなく受けていった。

好きな子を見れないだけで気持ちが少し沈む。



秋臣(明日は・・・来るかな。)



家庭の事情で休みと言っていた担任。

なら明日も来ないかもしれない。



秋臣(特に仲がいいわけでもないけど・・・。)



レンタルショップで話をしてから距離が縮まった気がする。

今度CDの話をしたときは連絡先を聞こうと心に決め、俺は中谷が学校に来る日を待つことにした。





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