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悪魔・堕天使 - Devils and Fallen angels -

バティン

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 バティン


 地獄の強大にして強力な公爵であり、その配下の軍団の数は三十である。『ソロモンの小さき鍵』によれば、ソロモンの七十二柱の悪魔中、序列第十八位。召喚されると、蛇の尾を持つたくましい男性の姿で、蒼ざめた馬に騎乗して現れる。ただし、バティンの乗騎については『ソロモンの小さき鍵』の写本によって異なっている。ロバとなっているものや、その種類が明示されないものも存在しているようだ。薬草の効能や宝石について該博がいはくな知識を持っている。『ソロモンの小さき鍵』には、バティンのほかにもストラスやデカラビアなどの薬草と宝石に詳しい悪魔が紹介されているが、これらの悪魔との関連性はわからない。ほかにも「人間を一瞬のうちに、ある国から別の国まで移動させる」と記述されているので、どうやらテレポーテーションのような能力を持っているようだ。ヨハン・ヴァイヤーの『悪魔の偽王国』では、バティンあるいはバティムとして、十番目に記載され、その他、マルティム、マティムなどの別称を持つとされる。イギリスの文筆家であり政治家であるレジナルド・スコットが著した『妖術の暴露』の一六五五年版には、このバティンとペイモン、バルマを呼び出す方法について触れている。ルキフェルの使い魔の二番手であり、彼の仲間は素早さと愛想のよさにおいて地獄の階級の中で並ぶものがいないとされている。フレッド・ゲティングズは『悪魔の辞典』の中で、『妖術の暴露』のこうした記述は、偽エノク文書からの引用だと指摘している。「愛想のよさ」については、文献からは詳細を読み取ることができないが、魔界の実力者ルシフェル(ルキフェル)の側近を務めるくらいだから、相手の機嫌を窺うくらいのことは朝飯前なのだろう。
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