世界の「妖怪・怪物・幻獣・神獣・神様・悪魔」図鑑

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鵺

　鵺ぬえ


　西洋の合成獣「キメラ」を連想させる、複数の動物の特徴を持った妖怪。『平家物語へいけものがたり』や『源平盛衰記げんぺいせいすいき』などに登場し、その姿は「頭が猿で胴体は狸、手足は虎で尾は蛇」とされ、そして鳴き声は鳥の虎鶫とらつぐみに似ていると言われ、文献によっては「虎の身体に狸の手足」とも書かれる。「鵼」と書かれることもあり、その鳴き声は「ひーひー」という不気味なもので、もともと鵺という名前は虎鶫という鳥のことを指し、鵺（虎鶫）のような声で鳴く妖怪、と呼ばれて正式名称はなかった。鵺については、源頼政みなもとのよりまさが退治した話が最も有名である。それによると、仁平にんぴょう三（一一五三）年、丑刻（午前二時頃）になると毎晩のように帝（近衛天皇このえてんのう）の御所を黒雲が覆い、とうとう帝は病床に伏せてしまった。かつて堀河天皇ほりかわてんのうの代にも似たような騒動があったため、公家たちが集まって協議した結果、源頼政にこの妖怪退治を命じることになった。退治された鵺の死骸は、人々を安心させるために都中を引き回され、見世物となったが、同時期に起こった流行病が鵺の祟りとされたため、その死骸を丸木舟に乗せて鴨川に流した。それが大阪府や兵庫県に流れ着いたとされ、それぞれの地域で怨念を鎮めるための「鵺塚」を作って祀ったと言われる。