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章第一「両面宿儺」

※注釈

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 蒲黄かまのはな……日本の神話で、怪我をした因幡いなば素兎しろうさぎを助けるため、大国主命おおくにぬしのみことが助言した際に登場する植物。実際の蒲黄ほおうも、止血や鎮痛作用があるとされ、漢方薬・生薬としても用いられている。


 木精くくのち野精のつち土神はにやす草女神かやのひめ風男神しなつひこ風女神しなとべ石土神いわつちびこ水女神みずはのめ……日本の神話に登場する神々。それぞれの自然(木、野、土、草、風、岩、水)を神格化したもの。


 グラウンドの土や芝生しばふが泡雪のように舞い散る……古事記に出てくる表現を引用した。それだけ力強く踏みしめた、という意味。


 もしかして、逆さまで川にでもかった? ……これは、ギリシャ神話のエピソードから引用したもの。生後まもないアキレウスを不死身にしようと思った母親が、冥府を流れるステュクス川に両足のかかとつかんでひたしたという。その結果、川に浸からなかった踵部分(アキレス腱)だけが不死身にならず弱点となってしまった。


 にほふ……におう。「」は赤土の意。転じて、赤く輝くものについて言う。「」は目立つものの意。「ふ」は動詞化する接尾語。赤く色が浮き出るのがもともとの意で、視覚的な美しさを言う。『源氏物語げんじものがたり』の「光る」から「匂う」に続く情緒は有名。しかし上代の『万葉集まんようしゅう』には、すでに「匂う」の使い方として、嗅覚的な情緒を表現している。(『全訳 古語辞典』)
 本作においても、単なる嗅覚としての匂いではなく、風に漂って感じた「気配」として書いている。


 気配けはひ……けはい。名詞「」に、一面に伸び広がる意の動詞「ふ・這ふ」の連用形がついて名詞化した語。全体の漠然ばくぜんとした雰囲気の意を表す。(『全訳 古語辞典』)


 きみのような、勘のいいガキは嫌いだよ……漫画『はがね錬○術師れんきんじゅつし』の登場人物「ショウ・タッカー」の台詞せりふ。ネット上では、その汎用性から様々な場面でたびたび引用されている。(「ピクシブ百科事典」https://dic.pixiv.net/a/君のような勘のいいガキは嫌いだよ)


 花子はなこさん・二宮にのみやくん……「トイレの花子さん」と「二宮金次郎にのみやきんじろう」のこと。学校の怪談として有名。


 仁徳天皇にんとくてんのうの名前を……「社会の教科書で見た」というのは、仁徳天皇りょう大山古墳だいせんこふん)のこと。


 茶枳尼天だきにてん稲荷神いなりのかみ……茶枳尼天は仏教における神。日本では、全国の稲荷神社にまつられている神と習合した。また稲荷神は、保食神うけもちのかみとも同一視されている。


 天獄寺てんごくじ……本作に登場する、架空の寺院。


 大鏡おおかがみ……詳しくは「今回の古典」にて。今回引用した個所は、「肝試し」に関する最古の記述とされている。


 五月さつきしもつ闇・そうなきこと・げに……いずれも『大鏡』から引用した。「下つ闇」は「下旬の夜」、「証なきこと」は「証拠がないことだ」、「げに」は「本当に、まことに」の意味。ちなみに「柱を刀でけずってくればいいの?」という台詞も、大鏡を意識したものである。


 板取優二いたどりゆうじ一条聡美いちじょうさとみ黒井恩くろいめぐむ釘宮花梨くぎみやかりん七海健ななうみたける……名前のモデルは、漫画『呪術○戦じゅじゅつかいせん』のキャラクター。順に虎杖悠仁いたどりゆうじ五条悟ごじょうさとる伏黒恵ふしぐろめぐみ釘崎野薔薇くぎさきのばら七海建人ななみけんと


 丹治瑞葉たじいみずは……本作に登場した、板取優二の想い人。キャラクター名は「多遅比瑞歯別天皇たぢひのみつはわけのすめらみこと(第十八代・反正はんぜい天皇のこと)」から取った。古事記には「陸拾歳むそとせ」で崩御したとあり、在位もおよそ五年のみで、記されている事跡は少ない。この天皇は、古事記によると歯の長さが一寸(約三センチ)で広さが二分(約六ミリ)あり、上下の歯が等しく整っていると書かれ、日本書紀には生まれながらにして歯が一本の骨のようであると表現されている。また日本書紀に、んだ水で当時は太子だった反正天皇を洗った、との記述があり、そのとき汲んだ井戸のなかに多遅たぢの花があったことから、たたえて上記の名前で呼ばれたという。この多遅の花は現在の虎杖のことであり、虎杖つながりで本作に登場させた名前である。(『古事記注釈 第七巻』ちくま学芸文庫)(『全現代語訳 日本書紀(上)』講談社学術文庫)(『日本書紀(二)』岩波文庫)
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