アマテラスの力を継ぐ者【第一記】

モンキー書房

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章第三「化物坂、蟷螂坂」

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※グロ注意です。

   💭   🔁   ❤×????



 眩しくて、目が覚めた。

「ん……ぅ……」

 起き上がる。ここは実家の前。僕は何故か、実家の玄関に倒れていたらしい。
 何故? ここで寝入る前、一体何が――

「――――あッ!?」

 思い出した!
『呪い』の正体が星狩さんで、僕は星狩さんから逃げようとしているうちに、ここに行きついたんだった。それで、でも、星狩さんに追いつかれて――

 ふと、背後に気配を感じた。
 振り向くと――

「――ヒッ!?」

 星狩さんが立っていた。彼女はスマホを操作して、

『ヒッ、って何。ヒッ、って』

 という文を僕に見せてくる。
 その表情はいつもの彼女のように、穏やかだ。昨夜感じたあの禍々しさが無い。それに気づけば、あの赤黒いオーラも纏っていない。まるで今まで通りのような――
 いや、そんな事よりも!!

「じゅ、余命!! 僕の余命は!?」

 ポケットをまさぐる。よかった! スマホはちゃんとある!
 震える指でスマホを立ち上げ、Twittooを開く。
 果たして――





『🔁 + ❤ = ????』





 スマホに新しいヒビが入っていて、余命が分からない!

「あぁ、あぁぁ……」

『ひどいなぁ、私の事を無視するなんて』

 視界に星狩さんのスマホが差し込まれた。

「え?」

 顔を上げると、星狩さんが恥ずかしそうな顔でスマホに文字を打ち込んでから、

『ね、生まれて初めてのキスの味、どうだった?』

「~~~~ッ!!」

 思い、出した。僕は昨夜、星狩さんに、き、き、キキキキスされたんだ!!

「きゅ、急に何だってあんな事――」

 味!? 味って何だよ!? そもそも僕には視力以外の霊感は無い。星狩さんの唇の感触なんて、感じられるわけがない。
 ……いや? 昨日の夜、気絶する前に、わずかに感触を覚えたんじゃなかっただろうか? でも、それも気が動転して勘違いしただけだろう、と思う。

『さぁ、どうしてだろう?』

「ああいうのは、好きな人に対してやるもんやろ!?」

『物部くんは私の事、好きじゃないの?』

「は、はぁっ!?」

『私の事好きだから、いっぱいいっぱい守ってくれてたんじゃないの?』

「いやっ、その! それは――そもそも君は!!」

 言い淀んで、星狩さんの顔を直視できなくなり、手癖でスマホをいじる。手が勝手に、ここ数日でルーチンと化した作業を始める――つまり、2年4組のアカウント巡りを、だ。
 良かった。みんなまだ生きて――――……

「うっ――…」





『サブカル男子組』の一人、【撮り鉄】寄道よりみちくんのアカウントに――――……1分間動画が、上がって、いた。





 震える指で、動画を再生する。

『はぁ……はぁ……いいね……いいねを集めないと……』

 寄道くんと思しき声がする。わずかな喧噪、チチチ、という雀の声。映っているのは、

「駅のホーム……三ノ宮駅?」

 寄道くんは撮り鉄だ。大方、関西でしか見られない車両を撮ってUPして、いいねに変えようとしていたんだろう……そう、『いた』んだろう。
 1分間動画がUPされているというのは、そういう事だ。

『き、来た!! 225系統だ!!』

 寄道くんの声とともに、身を乗り出すようにして線路に近づく映像。寄道くんがスマホで撮影しているのだろうか。

 ファーーーーーンッ!!

『お客様! 危ないですので黄色い線の内側までお下がりください!!』

 激しいクラクションの音と、駅員さんの慌てた声。
 そして、

『あ…れ……?』

 駅のホームに入って来る電車が、





 ファーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!

































 ギギギギギャイーーーンギャリギャリギャリンッ!!

 ドカシッゴボッグガガガガガガボガボ!!

 ガココココココバキバキバキャキャキャ!!

 ガコッガコッガコッガコッグゴゴゴゴゴ!!


 グモッチュイーーンボゴゴゴゴゴッ!!















 ――――ィィィイイイキキキキキキキキキッ!!

 急停車した車両と、その前に転がる寄道くんの体が、動画に映し出されている。
 跳ね飛ばされたはずのスマホが、姿

『君、大丈夫――』駅員さんが飛び降りて来て――、『うっ』

 ――言葉を、失った。
 それはそうだろう。

『た、たすけ…く……だ…………』

 寄道くんが、ずりずりと匍匐前進をするかのようにして、駅員さんの方へ進もうとする。

『ヒッ……』

 けれど逆に、駅員さんは後退あとずさる。

『たす……ごぼッ』

 大量の血を吐く寄道くん。
 駅員さんは駆け寄るでもなく、立ちすくんでいる。
 駅のあちこちから悲鳴が上がる。





 それは、そうだろう。








































 

 動画はそこで終わっている。
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