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01.神霊出生の章

No.016「イザナキ」、No.017「イザナミ」

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 古事記・日本書紀において、神世七代かみよななよの最後に誕生した、七世代目の二柱ふたはしら
 古事記では「伊耶那岐神いざなきのかみ」「伊耶那美神いざなみのかみ」と記され、日本書紀では「伊弉諾尊いざなぎのみこと」「伊弉冉尊いざなみのみこと」と記されている。
 それまでの神々に親はなく、個別に誕生していたが、はじめて夫婦のちぎりをわし、日本の国土(島々)や数多あまたの神々を生んだ。
(詳細は『No.010~No.015「カミヨナナヨ」(2)』にて)
 以下は、夫婦として地上へ下りた際の記述である。はじめに古事記、続いて日本書紀の内容を記している。


ここあま神諸かみもろもろ命以みこともち、伊耶那岐命いざなきのみこと伊耶那美命いざなみのみこと二柱ふたはしらの神にりたまはく、『のただよへる国を修理おさめ固め成せ』とのりたまひ、あめ沼矛ぬほこたまひて、言依ことよさし賜ふ。かれ二柱の神、天の浮橋うきはしに立たして、の沼矛を指し下ろしてかせば、しほこをろこをろに画きして、引き上ぐる時に、其の矛のさきよりしただり落つる塩の累積かさなしまと成る。淤能碁呂嶋おのごろしまなり。其の嶋に天降あまくだして、天の御柱みはしらを見立て八尋殿やひろどのを見立てたまふ。是に其のいも伊耶那岐命をひてりたまはく、『が身はいかにか成れる』とのたまふ。答へてまをさく、『が身は成り成りて、成りはぬ処一処在ところひとところあり。故の吾が身の成り余れる処をち、汝が身の成り合はぬ処に刺しふたぎて国土くにを生み成さむと以為おもふ。生むこといかに」とのりたまふ。伊耶那美命答へてまをさく、『然善しかえけむ』とまをす。しかして伊耶那岐命詔りたまはく、『しかあらば吾と汝と、是の天の御柱をめぐひて、美斗能麻具波比みとのまぐはひむ』とのりたまふ。ちぎへて廻る時に、伊耶那美命まづ、『阿那迩夜志あなにやしをとこを』と言ひ、のちに伊耶那岐命、『阿那迩夜志、愛をとめを』とりたまふ」


「伊弉諾尊・伊弉冉尊、天の浮橋のうへに立たして、共にはからひて曰はく、『底つ下に豈国無あにくになけむや』とのたまひて、すなは天之瓊あまのぬ(瓊は玉なり。此をばと云ふ)ほこて、指しおろしてかきさぐる。是に滄溟あをうなはらき。其の矛のさきより滴瀝しただしほりてひとつしまれり。なづけて磤馭慮嶋おのごろしまふ。ふたはしらの神、是に、の嶋にあまくだして、りて共為夫婦みとのまぐはひして、洲国くにつち産生まむとす。便すなはち磤馭慮嶋を以て、国中くになかみはしら〔柱、をば美簸旨邏みはしらと云ふ〕として、陽神をかみは左よりめぐり、陰神めかみは右より旋る。国の柱を分巡めぐりて、ひとしく一面ひとつおもてひき。時に、陰神となへてのたまはく、『憙哉あなうれしゑや可美少男うましをとこひぬること』とのたまふ。〔少男、此をば烏等孤をとこと云ふ〕陽神よろこびずして曰はく、『吾は是男子ますらをなり。理当ことわりまさに先づ唱ふべし。如何いかに婦人たわやめにして、かへりて言先ことさきだつや。事すで不祥さがなし。以て改め旋るべし』とのたまふ。是に、ふたはしらの神かへりて更に相遇ひたまひぬ。たびは、陽神先づ唱へて曰はく、『憙哉、可美少女をとめに遇ひぬること』とのたまふ。〔少女、此をば烏等咩をとめと云ふ〕りて陰神に問ひて曰はく、『いましが身に何の成れるところか有る』とのたまふ。こたへて曰はく、『吾が身に一のはじめといふところ有り』とのたまふ。陽神の曰はく、『吾が身に亦雄またおの元といふ処有り。吾が身の元の処を以て、汝が身の元の処にあはせむと思欲おもふ』とのたまふ。是に、陰陽めを始めて遘合みとのまぐはひして夫婦をうとめと為る」


 このふたつに共通するのが、海をかき混ぜた矛の先から滴り落ちた塩の塊が、オノゴロという島になったという話である。さらに柱を立てると、そこを中心に左右へ分かれて巡り、声をかけ合うという儀式の様子が描かれている。
 アナニヤシは、日本書紀で「姸哉乎あなにや、国をつること(なんと素晴らしい国を得たのだ)」という例もあり、感動を表す言葉である。ヤは詠嘆の助詞で、シは強調の助詞。「はしけやし(いとおしい)」や「よしゑやし(どうなっても構わない)」などがある。


 お互いに「素晴らしい男」「素晴らしい女」と声をかけ(オモダル・アヤカシコネの項目を参照)、ミトノマグハヒわいをしたと書かれている。
 日本書紀で使われている「遘」と「合」の漢字は、どちらも「あう」という意味である。もともとは目交で、目と目を見合わせ、愛情を通わす意から転じた、といわれている。現在でも「見合い」として語が残っている。
 トは生殖器のことを指し(オホトノヂ・オホトノベの項目を参照)、ミは尊敬の接頭語。マグハヒだけで交合の意だが、ミトがついているのは聖婚だからである。


 ここからもわかるとおり、お互いをいざない合う男女き(こ)み(め)という意味である。つまり、自分とともに行動を起こそうと誰かに呼びかける「いざ!」も同じだと考えられる。
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