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01.神霊出生の章
No.003「カミムスヒ」
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古事記において、高御産巣日神に次いで誕生した三番目の神が、神産巣日神である。
日本書紀では、神皇産霊尊と表記している。
また、造化三神や別天つ神の一柱とされている。
(No.001「アメノミナカヌシ」を参照)
配偶神のいない独神であり性別もないが、タカミムスヒを男性的な神格であるとするのに対して、カミムスヒは女性的な神格であると考える説もある。
(No.002「タカミムスヒ」を参照)
また、同じ性格を持つ二柱だが、タカミムスヒが高天原(天)を中心として神話に関わるのとは対照的に、カミムスヒは出雲国(地)にまつわる神話に多く登場する。
殺されたオオクニヌシを蘇生されるために「キサガイヒメ」と「ウムギヒメ」を派遣したり、のちに国づくりを始めたら今度はスクナビコを派遣したり、オオゲツヒメの死体から生えた五穀を取ったりと、記紀神話では裏からサポートする役回りに徹している。
出雲国風土記にしか登場しない神々の祖神として、出雲国風土記の至るところにも名前が散見される。
出雲国風土記での記述は以下のとおり。
~~~~~
生馬郷。郡家の西北一十六里二百九歩。神魂命の御子、八尋鉾長依日子命、詔りたまひしく、「吾が御子、平明かにして憤まず」と詔りたまひき。故、生馬と云ひき。
カミムスヒの孫(記紀には見られない)に当たる人物が、とても心が穏やかで怒ることがなかったため、ここを「イクマ」の名前にしたという由来譚が記されてる。
~~~~~
加賀の神埼。窟有り。高さ一十丈許。周り五百二歩許。東と西と北は通ふ。所謂佐太の大神の産出れましし処なり。産出れまさむ時に臨みて、弓箭亡せ坐しき。その時、御祖神魂命の御子、枳佐加比賣命、願ぎたまひしく、「吾が御子、麻須羅神の御子に坐さば、亡せし弓箭出で来」と願ぎ坐しき。その時、角の弓箭、水の随に流れ出づ。その時、弓を取りて詔りたまひしく、「此は、弓箭に非ず」と詔りたまひて、擲げ廃て給ふ。又、金の弓箭流れ出で来。即ち、待ち取らし坐して、闇鬱き窟なるかも」と詔りたまひて、射通し坐しき。御祖支佐加比賣命の社、此処に坐す。今の人、是の窟の辺を行く時に、必ず声磅礚かして行く。若し密かに行かば、神現れて、飄風起り、行く船は必ず覆へる。
ここでも名前しか出てこない。カミムスヒの娘であるキサカヒメ(記紀のキサガイヒメか)が、加賀にある岬の洞窟に鎮座し、この洞窟を人々が通る際は必ず、大声を出さなければならぬという。
~~~~~
楯縫と号けし所以は、神魂命詔りたまひしく、「五十足天の日栖の宮の縦横の御量は、千尋の栲紲持ちて、百八十結結び下げて、此の天の御量持ちて、天の下造らしし大神の宮造り奉れ」と詔りたまひて、御子、天御鳥命を楯部と為て、天下し給ひき。その時、退り下り来坐して、大神の宮の御装の楯、造り始め給ひし所、是なり。仍りて、今に至るまで、楯、桙造りて、皇神等に奉り出す。故、楯縫と云ひき。
カミムスヒの子(記紀には見られない)を楯部(楯を作ることが役目の身分)として地上へ下ろし、神社の装備として作り始めたのが、この場所なのだという。
~~~~~
漆治郷。郡家の正東五里二百七十歩。神魂命の御子、天津枳比佐可美高日子命の御名を、又、薦枕志都治値と云ひき。此の神、郷の中に坐す。故、志丑治と云ひき。神亀三年、字を漆治と改む。即ち正倉有り。
カミムスヒの子(記紀には見られない)の別名がシツチチといい、この神が郷の中に鎮座しているため、この地域をそう呼ぶのだという。
~~~~~
宇賀郷。郡家の正北一十七里二十五歩。天下造らしし大神命、神魂命の御子、綾門日女命に誂へ坐しき。その時、女神肯はずて逃げ隠りし時、大神伺ひ求め給ひし所、此是の郷なり。故、宇賀と云ひき。
天下を作った神(大国主神か)が、カミムスヒの娘(記紀には見られない)に求婚したという。この地域の「ウカ」は、伺い求めるところから名づけられたそうだ。
~~~~~
朝山郷。郡家の東南五里五十六歩。神魂命の御子、真玉著玉邑日女命坐しき。その時、天の下所造らしし大神、大穴持命、娶ひ給ひて、毎朝に通ひ坐しき。故、朝山と云ひき。
カミムスヒの娘(記紀には見られない)がいる場所へ毎朝、天下を作った神・オオアナモチ(大国主神)が通い続けたことから、この地域を「アサヤマ」というらしい。
~~~~~
(『風土記(上)現代語訳付き』監修・訳注:中村啓信)
日本書紀では、神皇産霊尊と表記している。
また、造化三神や別天つ神の一柱とされている。
(No.001「アメノミナカヌシ」を参照)
配偶神のいない独神であり性別もないが、タカミムスヒを男性的な神格であるとするのに対して、カミムスヒは女性的な神格であると考える説もある。
(No.002「タカミムスヒ」を参照)
また、同じ性格を持つ二柱だが、タカミムスヒが高天原(天)を中心として神話に関わるのとは対照的に、カミムスヒは出雲国(地)にまつわる神話に多く登場する。
殺されたオオクニヌシを蘇生されるために「キサガイヒメ」と「ウムギヒメ」を派遣したり、のちに国づくりを始めたら今度はスクナビコを派遣したり、オオゲツヒメの死体から生えた五穀を取ったりと、記紀神話では裏からサポートする役回りに徹している。
出雲国風土記にしか登場しない神々の祖神として、出雲国風土記の至るところにも名前が散見される。
出雲国風土記での記述は以下のとおり。
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生馬郷。郡家の西北一十六里二百九歩。神魂命の御子、八尋鉾長依日子命、詔りたまひしく、「吾が御子、平明かにして憤まず」と詔りたまひき。故、生馬と云ひき。
カミムスヒの孫(記紀には見られない)に当たる人物が、とても心が穏やかで怒ることがなかったため、ここを「イクマ」の名前にしたという由来譚が記されてる。
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加賀の神埼。窟有り。高さ一十丈許。周り五百二歩許。東と西と北は通ふ。所謂佐太の大神の産出れましし処なり。産出れまさむ時に臨みて、弓箭亡せ坐しき。その時、御祖神魂命の御子、枳佐加比賣命、願ぎたまひしく、「吾が御子、麻須羅神の御子に坐さば、亡せし弓箭出で来」と願ぎ坐しき。その時、角の弓箭、水の随に流れ出づ。その時、弓を取りて詔りたまひしく、「此は、弓箭に非ず」と詔りたまひて、擲げ廃て給ふ。又、金の弓箭流れ出で来。即ち、待ち取らし坐して、闇鬱き窟なるかも」と詔りたまひて、射通し坐しき。御祖支佐加比賣命の社、此処に坐す。今の人、是の窟の辺を行く時に、必ず声磅礚かして行く。若し密かに行かば、神現れて、飄風起り、行く船は必ず覆へる。
ここでも名前しか出てこない。カミムスヒの娘であるキサカヒメ(記紀のキサガイヒメか)が、加賀にある岬の洞窟に鎮座し、この洞窟を人々が通る際は必ず、大声を出さなければならぬという。
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楯縫と号けし所以は、神魂命詔りたまひしく、「五十足天の日栖の宮の縦横の御量は、千尋の栲紲持ちて、百八十結結び下げて、此の天の御量持ちて、天の下造らしし大神の宮造り奉れ」と詔りたまひて、御子、天御鳥命を楯部と為て、天下し給ひき。その時、退り下り来坐して、大神の宮の御装の楯、造り始め給ひし所、是なり。仍りて、今に至るまで、楯、桙造りて、皇神等に奉り出す。故、楯縫と云ひき。
カミムスヒの子(記紀には見られない)を楯部(楯を作ることが役目の身分)として地上へ下ろし、神社の装備として作り始めたのが、この場所なのだという。
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漆治郷。郡家の正東五里二百七十歩。神魂命の御子、天津枳比佐可美高日子命の御名を、又、薦枕志都治値と云ひき。此の神、郷の中に坐す。故、志丑治と云ひき。神亀三年、字を漆治と改む。即ち正倉有り。
カミムスヒの子(記紀には見られない)の別名がシツチチといい、この神が郷の中に鎮座しているため、この地域をそう呼ぶのだという。
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宇賀郷。郡家の正北一十七里二十五歩。天下造らしし大神命、神魂命の御子、綾門日女命に誂へ坐しき。その時、女神肯はずて逃げ隠りし時、大神伺ひ求め給ひし所、此是の郷なり。故、宇賀と云ひき。
天下を作った神(大国主神か)が、カミムスヒの娘(記紀には見られない)に求婚したという。この地域の「ウカ」は、伺い求めるところから名づけられたそうだ。
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朝山郷。郡家の東南五里五十六歩。神魂命の御子、真玉著玉邑日女命坐しき。その時、天の下所造らしし大神、大穴持命、娶ひ給ひて、毎朝に通ひ坐しき。故、朝山と云ひき。
カミムスヒの娘(記紀には見られない)がいる場所へ毎朝、天下を作った神・オオアナモチ(大国主神)が通い続けたことから、この地域を「アサヤマ」というらしい。
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(『風土記(上)現代語訳付き』監修・訳注:中村啓信)
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