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7 伊津優子(1)

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 伊津優子(いづゆうこ)はベッドから起き上がると、本棚の前まで来て一冊のアルバムを手に取った。色あせた表紙が、長い年月を物語っている。ホコリも少し被っていて、手で払い落としてからページをめくった。


 ページをめくる毎に、ホコリがパラパラと落ちる。長いあいだ蓄積されたホコリは本の内部まで入り込んでいて、細かいホコリがこぼれ落ちていく。


 何ページ目かに、小学校の運動会で一等賞を取って、紙製の金メダルを自慢げに掲げている娘の写真があった。つい昨日のように懐かしい。隣りのページには、花火大会の日に、家の庭でバーベキューをしたときの様子が写っている。カメラ目線で肉を美味しそうに頬張る息子と少し離れたところで線香花火に興じる娘。その背後には河川敷から打ち上げられた色鮮やかな大輪が咲き誇り、暗闇で撮った写真に、読んで字の如く花を添えていた。


 かなり綺麗な一枚である。よくこんな写真をカメラ初心者のあたしが撮れたものだと思う。花火と息子たちが一緒に写るように苦労して、ようやく撮った一枚なのだ。自分のことを褒めてあげたい。


 さらに優子は何ページかをめくった。海に行った写真、山に行った写真、誕生日ケーキのロウソクを吹き消す瞬間の写真。そして、最後のページには、プレゼントを大事そうに抱える写真が隅に収まっていた。


 ページをめくる度、視界が霞んでいく。写真を見たいのに、目の前がぼやけているせいで、まともに見ることができない。頬を冷たい雫が一筋伝った。知らないうちに、どんどんアルバムは水分を含んでふやけていった。


 あのときから、優子の中の時計は、錆び付いたまま動かなくなってしまった。きっと頬を伝う塩水によって、酸化してしまったからだろう。あれから何年も経っているのに、ちっとも枯れ果てることがない。時間が癒してくれるとは言っても、その時間が止まってしまっては、元も子もないことだ。


 わたしは、これから、何をして、何を生きがいに、何を目的に、生きていけばいいのだろう。教えて? ねえ……
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