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第6話 教会潜入
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その夜、ゼノアはシスターから教会の勅命書の話を聞かされた。
シスターは涙を流しながら悔しそうにしていた。
「あの勅命書は正式なものです。でも通常、上司の司祭から必ず前もって相談なり、話があるはずです。こんな横暴聞いたことありません」
「あなたの上司に掛け合って、取り消してもらうことはできないかしら?」
「正式に出されたものなので、難しいと思います」
そう言われては、どうしようもない。重苦しい雰囲気に誰もが黙ってしまった。
突然シリルが手をポンと叩いた。
「あの司祭を捕まえて、取り消してもらったら? 姉さんなら簡単でしょ?」
ゼノアは軽くシリルの頭を叩いた。
「そんな事をしたら、後々面倒になるからダメよ」
シリルは「ゼノアの魅了で司祭を操れば簡単だ」と考えたが、ゼノアは違った。
教会関係者に「魅了」を使うと、ばれる可能性が高く、教会と敵対することになるので「魅了」は使いたくなかった。
「司祭を調べてみましょう。明日領都に行くわ、シリル」
翌日領都の教会前にゼノアとシリルは立っていた。
「私は中に入れないから、シリルが調べてきて。暴力沙汰は絶対ダメだからね」
「分かってるよ、姉ちゃん」
ゼノアが心配そうに見守るなか、シリルは教会に入っていった。
「ここで一番偉い人に会いたいんだけど」
シリルは近くの修道士に声をかけた。
気品に満ちた金髪美少女、しかも初めて見たエルフに見惚れてしまった。
「す、すぐに司祭長を呼んできますので、お待ちください」
彼は奥へと小走りで向かっていった。
しばらくして修道士に連れられて数人の人たちが現れた。
司祭長はぶつぶつと文句を言って出てきた。
「忙しいのに呼びつけるとは何様だ。しかし本当にエルフなら会ってみたい気はする……」
司祭長は、目の前に現れた女の子を見て、とても驚き感嘆した。
「おお、これが話に聞くエルフか……なんという気品に満ちていることか!」
司祭長は笑顔で、シリルに手を差し出した。
「私にどうような御用件でしょうか?」
するとシリルは笑顔で剣を抜き、自慢げに掲げて見せた。
司祭長は、いきなり目の前で剣を抜かれて驚いて腰を抜かしてしまった。
「な、何をする気だ……」
シリルは、さらに剣を司祭に押し付けた。満面の笑顔で。
「ほら、じっちゃんの神剣だよ。凄いでしょ!」
司祭長は恐怖に絶叫した。
「え、衛兵! こ、こやつを捕えよ!」
すぐに大勢の衛兵がやってきて、彼女に槍を向けた。
「えっ? 噓でしょ? 剣を見せてあげただけなんだけど……」
シリルは困惑してしまった。
「は、早く捕えよ!」
司祭の声に、衛兵たちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。
シリルは一目散に飛び立ち、窓ガラスを割って逃げ出した。
騒動の気配に気づき、ゼノアがシリルの元へ駆け寄った。
「シリル! あなた何をしでかしたの?」
「ボク、悪いとこは何もしてないよ!」
「とにかく、ここを離れましょう」
ゼノアはシリルから話を聞いて、呆れて、ため息をついた。
「いきなり剣を向けるなんて、なんておバカさんなの?」
シリルは抗議した。
「だってパランテの大司教さんは、この剣を見て喜んでくれたんだよ!」
「教会の誰もが、その剣のことを知ってるわけではないわ」
「ええ? そうなの?」
「仕方ないわね。別の手を考えましょう」
その騒動を司祭ポリナルドは遠くから見ていた。
あのエルフは自分を殺すため、来たに違いないと恐怖し、何とかしなければと焦った。
「司祭長、バステトの教会で勅命に反抗したのが、あのエルフです」
司祭ポリナルドは司祭長に説明した。
「おそらくバステトの教会の件で、怒って乗り込んできたのではないでしょうか?」
それを聞いた司祭長は激怒した。
「教会を脅そうとは、言語道断! 領主に連絡して騎士団に出動してもらおう」
「ならば冒険者ギルドにも指名手配の依頼を出しましょう」
「うむ、そうしよう。そちらは任せる」
その日のうちに、シリルの指名手配書は冒険者ギルドに張られた。
翌日の午前中、領都の冒険者ギルドは指名手配のエルフの話で盛り上がっていた。
銀等級冒険者パーティー「銀の剣」がシリルの手配書を見て相談していた。
リーダーのビンダジがズグニとブンザに確認した。
「おまえたちが手玉にされたと言うのが、このエルフか」
「はい、油断していたから負けましたが、次は負けません」
油断していたと言え二人がかりで負けたので用心に越したことはない。
「全員でかかれば、何とかなるだろう。急ぎバステトに向かうぞ!」
「銀の剣」は他の冒険者に先を越されなように、急いで準備にかかった。
さらに第一騎士団の団長室。
サザン隊長が団長に報告していた。
「例の奴隷商人が自白しました。司祭ポリナルドは賄賂を受け取り、奴隷売買にも関与していたようです」
「なるほど、例のエルフは白か」
「素晴らしく強く、美しい方です。ぜひ我が隊に迎え入れたいと思いますが」
「しかし逮捕状は出てしまったからな……」
騎士団長はしばらく考え、サザンに命令した。
「サザンは司祭ポリナルドの逮捕へ向かえ! 例のエルフの方は話し合いで済むように努力してみよう」
こうして第一騎士団は司祭ポリナルドの逮捕とバステトへ向かう準備に取り掛かった。
この騒動の噂は領都にすぐ広まった。
ゼノアは頭を抱えて、ため息をついた。
「冒険者ギルドの指名手配に、第一騎士団……大事になってしまったわね」
「ボクのせいじゃないよ」
「あなたのせいです! いえ、違うわね。常識の足りないあなたに任せた私が悪かったわ」
「ええ? 何か酷い言われよう……」
「シリル、あなたは孤児院を守ってちょうだい。絶対に人を殺してはダメよ」
「分かった。姉ちゃんは?」
「私は最後の手を使ってみるわ」
その夜、シリルは孤児院へ、ゼノアは王都へ急行した。
シスターは涙を流しながら悔しそうにしていた。
「あの勅命書は正式なものです。でも通常、上司の司祭から必ず前もって相談なり、話があるはずです。こんな横暴聞いたことありません」
「あなたの上司に掛け合って、取り消してもらうことはできないかしら?」
「正式に出されたものなので、難しいと思います」
そう言われては、どうしようもない。重苦しい雰囲気に誰もが黙ってしまった。
突然シリルが手をポンと叩いた。
「あの司祭を捕まえて、取り消してもらったら? 姉さんなら簡単でしょ?」
ゼノアは軽くシリルの頭を叩いた。
「そんな事をしたら、後々面倒になるからダメよ」
シリルは「ゼノアの魅了で司祭を操れば簡単だ」と考えたが、ゼノアは違った。
教会関係者に「魅了」を使うと、ばれる可能性が高く、教会と敵対することになるので「魅了」は使いたくなかった。
「司祭を調べてみましょう。明日領都に行くわ、シリル」
翌日領都の教会前にゼノアとシリルは立っていた。
「私は中に入れないから、シリルが調べてきて。暴力沙汰は絶対ダメだからね」
「分かってるよ、姉ちゃん」
ゼノアが心配そうに見守るなか、シリルは教会に入っていった。
「ここで一番偉い人に会いたいんだけど」
シリルは近くの修道士に声をかけた。
気品に満ちた金髪美少女、しかも初めて見たエルフに見惚れてしまった。
「す、すぐに司祭長を呼んできますので、お待ちください」
彼は奥へと小走りで向かっていった。
しばらくして修道士に連れられて数人の人たちが現れた。
司祭長はぶつぶつと文句を言って出てきた。
「忙しいのに呼びつけるとは何様だ。しかし本当にエルフなら会ってみたい気はする……」
司祭長は、目の前に現れた女の子を見て、とても驚き感嘆した。
「おお、これが話に聞くエルフか……なんという気品に満ちていることか!」
司祭長は笑顔で、シリルに手を差し出した。
「私にどうような御用件でしょうか?」
するとシリルは笑顔で剣を抜き、自慢げに掲げて見せた。
司祭長は、いきなり目の前で剣を抜かれて驚いて腰を抜かしてしまった。
「な、何をする気だ……」
シリルは、さらに剣を司祭に押し付けた。満面の笑顔で。
「ほら、じっちゃんの神剣だよ。凄いでしょ!」
司祭長は恐怖に絶叫した。
「え、衛兵! こ、こやつを捕えよ!」
すぐに大勢の衛兵がやってきて、彼女に槍を向けた。
「えっ? 噓でしょ? 剣を見せてあげただけなんだけど……」
シリルは困惑してしまった。
「は、早く捕えよ!」
司祭の声に、衛兵たちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。
シリルは一目散に飛び立ち、窓ガラスを割って逃げ出した。
騒動の気配に気づき、ゼノアがシリルの元へ駆け寄った。
「シリル! あなた何をしでかしたの?」
「ボク、悪いとこは何もしてないよ!」
「とにかく、ここを離れましょう」
ゼノアはシリルから話を聞いて、呆れて、ため息をついた。
「いきなり剣を向けるなんて、なんておバカさんなの?」
シリルは抗議した。
「だってパランテの大司教さんは、この剣を見て喜んでくれたんだよ!」
「教会の誰もが、その剣のことを知ってるわけではないわ」
「ええ? そうなの?」
「仕方ないわね。別の手を考えましょう」
その騒動を司祭ポリナルドは遠くから見ていた。
あのエルフは自分を殺すため、来たに違いないと恐怖し、何とかしなければと焦った。
「司祭長、バステトの教会で勅命に反抗したのが、あのエルフです」
司祭ポリナルドは司祭長に説明した。
「おそらくバステトの教会の件で、怒って乗り込んできたのではないでしょうか?」
それを聞いた司祭長は激怒した。
「教会を脅そうとは、言語道断! 領主に連絡して騎士団に出動してもらおう」
「ならば冒険者ギルドにも指名手配の依頼を出しましょう」
「うむ、そうしよう。そちらは任せる」
その日のうちに、シリルの指名手配書は冒険者ギルドに張られた。
翌日の午前中、領都の冒険者ギルドは指名手配のエルフの話で盛り上がっていた。
銀等級冒険者パーティー「銀の剣」がシリルの手配書を見て相談していた。
リーダーのビンダジがズグニとブンザに確認した。
「おまえたちが手玉にされたと言うのが、このエルフか」
「はい、油断していたから負けましたが、次は負けません」
油断していたと言え二人がかりで負けたので用心に越したことはない。
「全員でかかれば、何とかなるだろう。急ぎバステトに向かうぞ!」
「銀の剣」は他の冒険者に先を越されなように、急いで準備にかかった。
さらに第一騎士団の団長室。
サザン隊長が団長に報告していた。
「例の奴隷商人が自白しました。司祭ポリナルドは賄賂を受け取り、奴隷売買にも関与していたようです」
「なるほど、例のエルフは白か」
「素晴らしく強く、美しい方です。ぜひ我が隊に迎え入れたいと思いますが」
「しかし逮捕状は出てしまったからな……」
騎士団長はしばらく考え、サザンに命令した。
「サザンは司祭ポリナルドの逮捕へ向かえ! 例のエルフの方は話し合いで済むように努力してみよう」
こうして第一騎士団は司祭ポリナルドの逮捕とバステトへ向かう準備に取り掛かった。
この騒動の噂は領都にすぐ広まった。
ゼノアは頭を抱えて、ため息をついた。
「冒険者ギルドの指名手配に、第一騎士団……大事になってしまったわね」
「ボクのせいじゃないよ」
「あなたのせいです! いえ、違うわね。常識の足りないあなたに任せた私が悪かったわ」
「ええ? 何か酷い言われよう……」
「シリル、あなたは孤児院を守ってちょうだい。絶対に人を殺してはダメよ」
「分かった。姉ちゃんは?」
「私は最後の手を使ってみるわ」
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