迷宮(ダンジョン)革命

あきとあき

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18.魔法の改良

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横浜から戻ってきた次の日の朝、アキラとマリは、食堂で朝食を食べていた。市ヶ谷の問題が片付いたので、自由にしていいと言われたからだ。

すると横浜組が、やってきて敬礼し、「おはようございます」「今日もよろしくお願いします」「何なりと申し付けて下さい」「昨日のを、またお願いします」などと言って、周りの席に座った。

アキラは笑顔で挨拶した。
「お早うございます」


「よし!」「やったああ!」「今日もがんばるぞ!」「もう、死んでもいい!」

横浜組がちょっとウザイとアキラは思ったが、

「昨日アキラが、余計なことをしたせいよ」
とマリに怒られた。

「すみません」
アキラは謝った。

マリの横に座った、若い女性隊員がマリにすり寄ってきた。
「マリさんがいてくれて、ほんとうに救われました。むさ苦しい男ばかりで、うんざりしていたんですよ」

目黒が元気な声でやってきた。
「みんな、青春してるなー!」

「はい!」「おう!」と横浜組が返事をし、「してません!」とマリは大声をあげた。

しまった、つっこむのを忘れていた、とアキラは心の中で反省した。

「君たち二人は食事が終わったら、田所司令の部屋に来てくれるかな?」
目黒は伝言を終えたら、すぐに去っていった。

「何かな?」
アキラが首を捻った。

「さっさと食事を済ませましょう」
マリは素っ気なく返事をした。


司令官室で、田所が座って待っていた。

「無事戻ってきてくれて、嬉しいよ。それと横浜の小隊を連れてきてくれたことも感謝する」
田所が頭を下げた。

「こちらこそ、安心して帰れましたので助かりました」
アキラとマリも頭を下げた。

「実家のことは残念だったね」
「いえ、覚悟はしていましたから。これで踏ん切りがつきました。これから、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしく頼む」
田所は手をさしのべ、アキラとマリと握手をした。

「実は、田中先生から、市ヶ谷で水魔法のお披露目と水の供給をして欲しいとお願いされたんだ」
田所が困った顔をしていた。

「嫌です。あの人たちに殺されかけたんです。行きたくないです」
アキラとマリは明確に拒否した。

「田中先生のおかげで、市ヶ谷と衝突せず、まるく収まったので、こちらとしても断りづらいんだ」

「水は出しますから、断ってください」
アキラは強く言った。

「わかった。君たちの気持ちを尊重する。先生には私から断るとしよう。では、部屋に戻ってかまわないよ」

「ありがとうございます」
アキラとマリは出ていった。


二人が部屋で休んでいると、朝比奈がやってきた。

「いま田中先生が来たらしいの、それで二人は表に出ない方がいいって、目黒隊長から伝言を頼まれたの」

アキラが残念そうな顔をした。
「さっそく来たのか。やだなー。なら部屋で大人しくしてよ」

「それが、よいと思うわ」
と言って朝比奈は出て行った。

「これから何する?」
「お風呂場でウォーターボールの実験をしようと思う」
マリが尋ね、アキラが答えた。

「どんな実験をするの?」
「いままで見てきたウォーターボールの魔法陣を比較して、試したいことがあるんだ」

「面白そう!いっしょに見てていい?」
「いいよ」
二人はお風呂場に行った。

「マリ、目隠ししなくちゃ、ダメ?もうよくね?」
「ダメ、私が恥ずかしいの!」
「ちぇっ、わかったよ」

アキラは、タオルで目隠され、あとはマリの為すがままだった。

マリはアキラの服を脱がせて、次に自分の服を脱ぎ、アキラの手を取って空の風呂桶に入った。

「それじゃあ、実験するからね」

アキラはウォーターボールをポン、ポンと打ち上げた。

ウォーターボールは天井に当たって、弾けて落ちてきた。

「きゃ、冷たい!」

アキラは、さらにポン、ポン、ポンと打ち上げた。

「アキラ、いじわるしてない?」

「してないよ」
ボーン、ボーンと大き目の打ち上げた。

「アキラ、怒るわよ」
「ちがうよ、ちゃんと真面目にやってるんだって」

アキラは実験をしながら、少し意地悪もしていた。

「ほんとかなー?」
マリはびしょ濡れになって、少し怒っていた。

「じゃあ、これはどう?」
雨粒のような小さな水玉がとめどもなく、天井に当たり降ってきた。

「雨?」

「これはどう?」
今度は霧のようなものが出てきた。

「霧?ちょっと素敵かも」
マリは、ちょっと感動していた。

「いろんなウォーターボールの魔法陣を比較して、大きさ、発射速度、一度に出せる数とか調整できるようになったんだ。ほかの魔法陣も調べれば、もっといろんな事が、できるようになると思う」

アキラは、昨夜ベッドの中で魔法陣を思い出して、それ切り貼りしたり、組み合わせたりして新しい魔法陣を作っていた。そして今、それを試していた。

「アキラって、すごいのね」
マリは心の底から感心していた。

「これは、どうかな?」
とアキラが言うと、ウォーターボールがみるみるうちに大きくなり、二人を包み、弾けた!二人は、あっという間にびしょ濡れになり、風呂桶が満タンになった。

「ア・キ・ラ!」
マリがアキラを叩いた。

「い、いてー、暴力反対!」
アキラが、マリにバシャと水を浴びせた。

「きゃ、やったわね!」
マリもアキラにバシャ、バシャ、シャと浴びせ返した。

しばらく、笑い声と水遊びが続いた。
いつの間にか、アキラの目隠しは取れていた。

「小さいころ、こんな風によく水遊びをしたわね」
「うん、そうだね」

「楽しかったわ」
「ああ」

「いつから、やらなくなったのかな?」
「さあ、わすれた」

「また、できるようになったのね」
「ほんとだ」

アキラがつぶやいた。
「これは青春?」
「青春でしょ」
と、マリが答え、二人は同時に笑った。


その日の午後、アキラはお風呂場でさらなる実験をしていた。今度はひとりきりで。

いろんな魔法陣を調べるうちに、スイッチのような術式を見つけた。一度そのスイッチを入れると、魔力がなくなるまで魔法を出し続けたのだ。

これで水を出すときに、傍につきっきりでなくても良くなった。これからは、時間の余裕ができ、他の魔法の研究ができるようになるので、アキラは歓喜した。

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