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12.水魔法のお披露目
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自衛隊の朝は早い。六時に起床だ。しかし、アキラとマリは民間人なので、自由だった。
七時に目黒が部屋にやってきた。
「実は君たちに相談があるんだ」
「オレたちも、相談したいことがあります」
「じゃあ、君たちの話から聞こうか」
目黒がじっとアキラたちを見つめていた。
「明日ここを出ます。私たちは横浜の家に帰りたいです」
マリがそう切り出し、アキラも頷いた。
目黒はため息をついてた。
「まあ、そうだよな」
それかえら、窓から外を見て、頭を下げ手を合わせて懇願した。
「お願いだ。水を供給してくれ。水が底を尽きそうなんだ。頼む」
アキラは、それを眺めながら返事をした。
「三日後には横浜に帰すと約束してください。約束してもらえるなら水を出します」
目黒は、ほっとして顔をあげて笑った。
「約束する。君たちが横浜に帰れるよう、私が責任をもつ」
アキラが目をキラリと光らせた。
「杖を用意してください」
「杖?」
目黒がキョトンとした。
アキラがウィンクしながら、にっこり笑った。
「だって、杖をもたない魔法少女なんて、有り得ないでしょう?」
「わ、わかった。あとで基地を案内するついでに、杖を探すとしよう」
目黒も笑顔で答えた。
ひと息ついてから、目黒が口を開いた。
「実は、もう一つ話しておかなければいけないことがある」
さらに、ひと呼吸おいて話をつづけた。
「君たちが持っていた銃のことだ。あれは市ヶ谷基地のものなんだ。市ヶ谷とは物資の取り合いで度々衝突していてね。先日、話し合いで新宿は彼らのテリトリーと決まったばかりなんだ。」
「ああ、だから、あいつら縄張りって言っていたのか」
アキラはつぶやいた。
さらに目黒が話を続けた。
「新宿で隊員が二人殺された。その場に君たちがいて、アキラ君は目立つ。そしてその隊員の銃がこちらにある。たとえ証拠がなくても、市ヶ谷は難癖をつけてくると思う。あそこは関東で一・二を争う武力を持っているんだが、大災害でトップが全滅し、ダンジョン討伐隊が幅をきかせている。あいつらは銃器を持った愚連隊に近いんだ。だから君たちにも危険が迫るかもしれない。駐屯地から出ないでほしいんだ」
アキラが、申し訳なさそうな顔をした。
「オレたちのせいで、やっかいごとが増えてすみません」
目黒は再び頭を下げた。
「水の問題に比べれば、些細な事さ。だから水をよろしく頼む」
「わかりましたから、頭をあげてください」
「じゃあ朝食のあとで、また来る」
そう言って目黒は出ていった。
その後、女性隊員が朝食を運んできてくれた。
「三十分後にまた来るので、ごゆっくり。」
と言って出ていった。
食事をしながら、アキラがつぶやいた。
「あいつら市ヶ谷だったのか」
「見られたかな?」
「見られたと思っておいた方がいいだろうね」
「せっかく生き残れたのに、争うなんて、バカね」
「まったくだ」
ため息をつきながら、食事を続けた。
翌日、アキラたちは会議室に案内された。
これから関係者立会いのもと、水魔法のお披露目と水供給の初仕事である。
まずは、魔法の水のお披露目から。アキラは少し緊張した。
桶が地面に置かれていて、関係者がそれを囲んで並んでいた。
アキラが紹介され、集まった人々の前に歩いていった。マリのように振舞えるわけがなかったが、オーダーメイドの服を着た金髪の少女は、ただ立っているだけでも美しく、みんなの注目を集めた。
アキラは杖を持っていた。その先端には魔石がはめられていた。魔法を使うなら、やっぱり魔法使いの恰好をしたい!と昨日杖を作ってもらったのだった。
アキラは一礼し、杖を優雅に振ってみる。「うん、なかなか様になってると思う。これなら、少しは魔法少女に見えるんじゃないかな」とアキラは思った。
金髪の美少女が、ゆっくりと杖を振り、桶にかざし、「ウォーター」と叫ぶと、杖から水が流れ出した。
「おおーー!」という歓喜の声があがり、拍手が鳴った。
「奇跡だ!」「本当に魔法が見られとは、生きていてよかった」「これで助かった」という声が聞こえた。
「そうでしょう、そうでしょう」とアキラはほくそ笑んだ。
スーツを着た偉そうなオジサンがコップに水を注ぎ、一口飲んで「美味い」と叫んだ。それを契機にみんながコップに水を注ぎ、飲んだ。口々に「美味い」「本当に水だ」「魔法か」などと声を出した。「金髪美少女」と誰かがつぶやくと、一斉にみんなが声の聞こえたほうを向き、じっと目を向けた。
偉そうなオジサンが目をぎらぎらさせながらやってきて、握手を求めてきた。
「君は救世主だ!」
目つきが気味悪かったが、これも仕事と諦めて、アキラは握手をしてあげた。
その偉そうなオジサンが精悍な顔つきのオジサンと握手をしていた。偉そうなオジサンは元衆議院議員の田中弘で、精悍な顔つきのオジサンは、田所雄二1等陸佐である。
田中が大満足の顔をしていた。
「最初にお話があったときは耳を疑いましたが、実際にこの目で見て感嘆しました。まるで聖書の中の奇跡です。」
「本当に仰る通りです。今後よろしくお願いします。先生」
田所は恭しく礼をし、「こちらの思惑どおりに働いてくれると良いのだが」と心の中でつぶやいた。
水魔法のお披露目は大成功だった。
七時に目黒が部屋にやってきた。
「実は君たちに相談があるんだ」
「オレたちも、相談したいことがあります」
「じゃあ、君たちの話から聞こうか」
目黒がじっとアキラたちを見つめていた。
「明日ここを出ます。私たちは横浜の家に帰りたいです」
マリがそう切り出し、アキラも頷いた。
目黒はため息をついてた。
「まあ、そうだよな」
それかえら、窓から外を見て、頭を下げ手を合わせて懇願した。
「お願いだ。水を供給してくれ。水が底を尽きそうなんだ。頼む」
アキラは、それを眺めながら返事をした。
「三日後には横浜に帰すと約束してください。約束してもらえるなら水を出します」
目黒は、ほっとして顔をあげて笑った。
「約束する。君たちが横浜に帰れるよう、私が責任をもつ」
アキラが目をキラリと光らせた。
「杖を用意してください」
「杖?」
目黒がキョトンとした。
アキラがウィンクしながら、にっこり笑った。
「だって、杖をもたない魔法少女なんて、有り得ないでしょう?」
「わ、わかった。あとで基地を案内するついでに、杖を探すとしよう」
目黒も笑顔で答えた。
ひと息ついてから、目黒が口を開いた。
「実は、もう一つ話しておかなければいけないことがある」
さらに、ひと呼吸おいて話をつづけた。
「君たちが持っていた銃のことだ。あれは市ヶ谷基地のものなんだ。市ヶ谷とは物資の取り合いで度々衝突していてね。先日、話し合いで新宿は彼らのテリトリーと決まったばかりなんだ。」
「ああ、だから、あいつら縄張りって言っていたのか」
アキラはつぶやいた。
さらに目黒が話を続けた。
「新宿で隊員が二人殺された。その場に君たちがいて、アキラ君は目立つ。そしてその隊員の銃がこちらにある。たとえ証拠がなくても、市ヶ谷は難癖をつけてくると思う。あそこは関東で一・二を争う武力を持っているんだが、大災害でトップが全滅し、ダンジョン討伐隊が幅をきかせている。あいつらは銃器を持った愚連隊に近いんだ。だから君たちにも危険が迫るかもしれない。駐屯地から出ないでほしいんだ」
アキラが、申し訳なさそうな顔をした。
「オレたちのせいで、やっかいごとが増えてすみません」
目黒は再び頭を下げた。
「水の問題に比べれば、些細な事さ。だから水をよろしく頼む」
「わかりましたから、頭をあげてください」
「じゃあ朝食のあとで、また来る」
そう言って目黒は出ていった。
その後、女性隊員が朝食を運んできてくれた。
「三十分後にまた来るので、ごゆっくり。」
と言って出ていった。
食事をしながら、アキラがつぶやいた。
「あいつら市ヶ谷だったのか」
「見られたかな?」
「見られたと思っておいた方がいいだろうね」
「せっかく生き残れたのに、争うなんて、バカね」
「まったくだ」
ため息をつきながら、食事を続けた。
翌日、アキラたちは会議室に案内された。
これから関係者立会いのもと、水魔法のお披露目と水供給の初仕事である。
まずは、魔法の水のお披露目から。アキラは少し緊張した。
桶が地面に置かれていて、関係者がそれを囲んで並んでいた。
アキラが紹介され、集まった人々の前に歩いていった。マリのように振舞えるわけがなかったが、オーダーメイドの服を着た金髪の少女は、ただ立っているだけでも美しく、みんなの注目を集めた。
アキラは杖を持っていた。その先端には魔石がはめられていた。魔法を使うなら、やっぱり魔法使いの恰好をしたい!と昨日杖を作ってもらったのだった。
アキラは一礼し、杖を優雅に振ってみる。「うん、なかなか様になってると思う。これなら、少しは魔法少女に見えるんじゃないかな」とアキラは思った。
金髪の美少女が、ゆっくりと杖を振り、桶にかざし、「ウォーター」と叫ぶと、杖から水が流れ出した。
「おおーー!」という歓喜の声があがり、拍手が鳴った。
「奇跡だ!」「本当に魔法が見られとは、生きていてよかった」「これで助かった」という声が聞こえた。
「そうでしょう、そうでしょう」とアキラはほくそ笑んだ。
スーツを着た偉そうなオジサンがコップに水を注ぎ、一口飲んで「美味い」と叫んだ。それを契機にみんながコップに水を注ぎ、飲んだ。口々に「美味い」「本当に水だ」「魔法か」などと声を出した。「金髪美少女」と誰かがつぶやくと、一斉にみんなが声の聞こえたほうを向き、じっと目を向けた。
偉そうなオジサンが目をぎらぎらさせながらやってきて、握手を求めてきた。
「君は救世主だ!」
目つきが気味悪かったが、これも仕事と諦めて、アキラは握手をしてあげた。
その偉そうなオジサンが精悍な顔つきのオジサンと握手をしていた。偉そうなオジサンは元衆議院議員の田中弘で、精悍な顔つきのオジサンは、田所雄二1等陸佐である。
田中が大満足の顔をしていた。
「最初にお話があったときは耳を疑いましたが、実際にこの目で見て感嘆しました。まるで聖書の中の奇跡です。」
「本当に仰る通りです。今後よろしくお願いします。先生」
田所は恭しく礼をし、「こちらの思惑どおりに働いてくれると良いのだが」と心の中でつぶやいた。
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