迷宮(ダンジョン)革命

あきとあき

文字の大きさ
上 下
10 / 41

10.ダンジョン・コア

しおりを挟む
「じゃあ、ダンジョン・コアに触れるよ。」

「うん。」
マリは心配そうに頷いた。

アキラはダンジョン・コアに触れた。その瞬間、光の線が伸びてダンジョン・コアに繋がった気がした。すると引き込まれる感じがして、気がついたら光の空間の中にいた。

新宿一番ダンジョンときと同じだ。

成功した?ダンジョン・コアの中に入ったのだろうか?しかし魔法陣らしきものは何もなかった。意識を集中した。

臍や眉間のあたりが光り出した。

知識に関するところなら眉間かな?今度は眉間にだけ意識を集中した。
眉間の光がさらに強くなる、それをどんどん広げていった。知りたい、このダンジョンのことを知りたい、そんな思いを乗せて、広げていった。

何かに触れた感じがした。

次の瞬間、魔法陣が目の前に現れた。次々と無数に。周囲は魔法陣だらけになっていた。

ひとつの魔法陣に意識を集中する。すると、それが何を意味しているのか何となく分かった。この中にあるはずだ。心と体を入れ替える、「魂の魔法陣」が。別の魔法陣に意識で触れてみる。これも違う。片っ端から触れていった。

どれだけの時間が経っただろうか?多すぎて気が遠くなりそうだ。

突然魔法陣が流れ出し、次々と消えていった。ま、待ってくれ!まだ知りたいことがあるんだ!アキラは叫んだ。しかし突然意識が消えた。

「アキラ、アキラ」
遠くからマリが呼ぶ声が聞こえる。

「アキラ、戻ってきて、アキラ」
だんだんと声が近近づいてきた。

「アキラ、戻ってきて、私を置いていかないで、お願い。」
目を開けると、泣きそうになっているマリが目の前にいた。

「魔物?」
がばっと体を起こす。周りを見たが魔物はいなかった。

「何かあった?」
涙目のマリに尋ねた。

「アキラがあれに触れてから、しばらくして体が光りだしたの。どんどん光が強くなっていって…光の卵みたいになって。恐ろしかった。あのまま消えしまうんじゃないかと思って…引っ張って、離したの」

「そうか…」

マリが抱きついてきた。ぎゅーっと締めつけられた。
「マ、マリ、苦しい!」

「え、えっ?ご、ごめんなさい。」

「も、もっと優しくして…」
本来のマリ口調にそっくりだったので、ドギマギして赤面した。
自分の声で赤面して、どうすんだよ、と思ったアキラだった。

「どれくらいの時間光っていたのかな?」
「たぶん5分も経ってないと思う」

ダンジョン・コアの中の体感時間は外とは違うようだ。

「ねえ、何か分かった?」
「うーん、分かっと言えば分かったんだけど…」

「何よ。はっきりしてよ!」
「もの凄い量の情報で、全部読み取れなかったんだ。残念だけど、心を入れ替える方法は今のところ見つかっていない。でも、もう一度触れば、きっと…」

「ダメ!」
マリが大声で遮ってきた。

「消えそうだったのよ!アキラが、アキラが消えたら…私…生きていけない…」
マリは泣きだした。

アキラは無言で宙を見つめていた。しばらくして

「うん、分かった」
軽く返事をした。

「ほんと?ほんとうよね?嘘じゃないよね?絶対よ?」
マリが念を押してきた。

「うん、触らないから」
軽く頷く。

しばらくして、

「さて、最後の仕事をしようか!」

アキラは元気に立ち上がった。

「えっ?何?」
マリがアキラの両肩をがっしり捕まえた。

「い、痛いよ、マリ。ダンジョン・コアを壊すだけだから」
「あれを壊すの?」

「うん」
アキラはダンジョン・コアを指さして、そうつぶやいた。マリは恐くてダンジョン・コアから目をそらしていた。

アキラはダンジョン・コアの中で知った。ダンジョンは一定時間、おそらく七年経過すると崩壊し、魔物を放出する。ひとつの魔法陣に触れた時、それを確信したのだった。

「壊さないと、いずれ大災害が起こる。だから壊す」
アキラはキッパリと言い放った。

マリは大きく深呼吸してから、息をはいた。
「分かったわ」


二人でダンジョン・コアの前に立った。

「マリ、さっき練習したようにすればいいから」

そう言って銃身を二人で握った。

アキラは、マリの手から光の線が伸びていく様子をイメージし、さらに自分の手からも光の線を伸ばす。二人の光の線が銃床へ伸びていき銃床の全体を覆うようにイメージした。

「いくよ!三、二、一、えい!」

壊れろ!とアキラが念じて、銃床がダンジョン・コアに当たると、弾けて光が溢れた。
二人は光に包まれていった。

光の空間の中にいた。

様々な術式の魔法陣が現れては、消えていった。

きっとあるはずだ。さあ、来い!魂を入れ替える魔法陣「魂の魔法陣」よ、来い!

アキラは祈るように、流れては消えていく魔法陣に意識を集中していった。やがて光が消えるとともに、アキラの意識も消えていった。


二人は明治神宮の道の真ん中にいた。
そう、ダンジョンがあった場所だ。

二人は無言で見つめ合っていた。

「ダメだったか…」
アキラがつぶやいた。

マリが怒った顔で睨んでいた。
「嘘つき、もうしないって約束したわよね」

アキラは気まずそうに眼をそらしたながら、
「触ってはいないだろ。」
と言った。

「あれの中に入ったでしょ」
マリが怒って、手を挙げた。

「ス、ストップ!その馬鹿力で殴られたら顔が変形するから止めて」

マリがグッと拳を握りしめて手を降ろした。

「騙したようになってゴメン。でも、ちゃんと消えずに戻れることが分かっただろ」

今回は魂を入れ替える情報は得られなかった。でも得るための手段は分かった。しかも、他に多くの情報を得たのだ。アキラは前向きに考えることにした。

魔石がたくさん転がっていたので、拾って、渋谷へ向かって歩きだした。


途中、食べ物を探した。さすがに腹が減っていた。

瓦礫に埋もれたコンビニの前で、二人は残念そうに立っていた。瓦礫の隙間から覗いてみると、食べられそうなお菓子や無事なペットボトル飲料が見えたのだ。しかし、人が通れそうな隙間がなかった。

「二人であの瓦礫をどかしてみよう。そしたら通れるかも?」
アキラは人間の倍以上あるコンクリートの瓦礫を指さして、マリを見た。

マリは、そっぽを向いた。
「無理に決まってるじゃない」


するとアキラは両手で、マリの手を包み込むように握って、目を閉じて、マリの臍に意識を集中した。マリの臍が強く光り、それが全身を輝かせる、そんなイメージを思い浮かべた。
目を瞑って、強く強くイメージしていたら、マリの臍が本当に光出し、それが全身に広がり、全身が光出したように見えた。目を開けてみると、実際に光っているわけでない。でも目を閉じてると見えるのだ。これが魔力だとアキラは思った。

アキラが祈るように、真剣に、マリの手を握っている。その姿にマリは、少しドキドキした。そして、お腹の中が温かくなったような気がし、何故か力があふれてくる感じがした。

「もう、仕方ないわね。一回だけだからね」
と言って、瓦礫を持ち上げてみた。

すると、ゴ、ゴゴ、ズ、ズゴーと音がして、瓦礫が動き出した。

「嘘!」
マリは驚いた。すかさずアキラが

「今だ、横に投げて」
と叫んだ。マリは無我夢中で言われるままに、瓦礫を横に放った。

人ひとり通れる隙間ができた。

マリはポカーンと口を開けたまま、瓦礫を見つめていた。

「入るよ。食べ物を探そう」
アキラが、そう言って、マリの手を引いてコンビニに入っていった。

「ねえ、何かしたの?」
「あとで説明するから。今は食べ物が先」

アキラは嬉しそうに、コンビニで食べ物を漁った。



半壊したコンビニの前で、二人は食事をした。

マリがアキラに尋ねた。
「ねえ、あれはどういうこと。早く教えて」

アキラが嬉しそうに答ええた。
「あれは、魔力で全身を強化したんだ。身体強化ってやつ」


「マリは、何か感じなかった?お臍のあたりとか」
「そう言えば、お腹の中が温かくなって、力が湧いてくるような感じがしたわ」


アキラは身体強化の説明をした。

それから、今夜の寝床を探しながら、マリは身体強化をやってみた。

結果、マリは常に軽い身体強化状態だった。しかし自分では、さらなる強化はできなかった。魔法のときと同じで、光のイメージができず、魔力操作ができないからだった。アキラが魔力操作で補助したらスーパーマンみたいになった。だからアキラは残念でならなかった。


その夜、ホテルの一室。

アキラは、ウォーターとファイアを使ってお風呂の準備をしていた。
明治神宮のダンジョンの中でウォーターの魔法陣を見つけたのだ。

それを眺めながら、マリはつぶやいていた。
「いいなー、私も魔法が使いたい」

「光のイメージトレーニングをしたら、できるようになるよ」
アキラは、平然と答えた。

「はー、できる気がしないわ」
マリは、ため息交じりに返事をした。

「お腹の中の温かい感じが分かったんだ、練習すれば、いつかできるよ」

マリは、さらにため息をついた。

お風呂に入り、食事をしたあと、二人は寝た。
ベッドが一つしかなかったから、窮屈だったけど仕方がないと諦めた。

まだ暗いうちに、寝苦しくなって、アキラは目を覚ました。

男の顔が目の前にあり、生温かい鼻息が顔に当たった。

思わずビックリして、ベッドから飛び上がった。それは、見慣れた自分の顔だった。自分で自分の顔に驚いて、正直しょげた。明日からは、ベッドは別々にしようと、アキラは思い、再びベッドに横たわって寝たのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...