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5.ダンジョン崩壊
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ついに第二層に入る時が来た。
「アキラはその盾で彼女をしっかり守れよ」
隊長が冷やかすような表情で、アキラを鼓舞した。ここからは魔物との戦闘が始まるのだ。アキラもマリも緊張してきた。
第二層の魔物もネズミだが、第一層の倍くらいの大きさがあり、さらに素早く厄介になり、数も増えるらしい。しかし、ポリカーボネートの盾でまわりを囲えば、安全に倒すことができるそうだ。十二名の隊員全員で円陣を組み、撮影隊と高校生を中に囲んで門をくぐっていった。
マリは震えていた。急に怖くなってきたのでアキラに掴まろうとした。しかし、それより早くアキラがマリの手を握り、彼女を自分の方に引き寄せてつぶやいた。
「マリはオレが守る」
マリはドキッとした。そして思い出した。幼稚園の時に同じようなことがあったのだ。幼稚園の悪ガキから髪を引っ張られるという、いじめを受けた。そしたらアキラが割って入り、両手を大きく広げて叫んだ。
「マリはオレが守る」
アキラは弱虫で、泣き虫で、いつもはマリがお姉さんのように守ってる感じだった。それがあの時は違った。カッコいいと思ってしまった。そう、あの時からアキラを好きになってしまったんだ。
それを思い出したら、急に顔が火照ってしまっていた。
「ちゃんと守ってよね」
マリは小さくつぶやいた。
第二層に入った。しかし、何も起こらず、辺りは静寂に包まれていた。
隊長がいぶかしんだ。
「おかしいな。魔物がいない」
副隊長も腑に落ちない顔をした。
「確かに変ですね。もうリポップしてるはずですが」
「俺たちの他に別のグループが入ったということはないよな」
「私が第一層で番をしていましたから、絶対に有り得ないです」
副隊長がきっぱりと答えた。
隊長は腕を組んで思案した。
「休憩にする。副隊長とチーフは残ってくれ。あとは自由にしてくれ」
「緊張して損しちゃった」
マリがアキラの腕に抱きついてきて、胸を強く押し当ててきた。
「う、うん。そうだね。」
柔らかい感触に思わずドキッとして顔を赤らめた。
マリは門をくぐるとき赤面したので、お返しのつもりだった。
マリが冷やかし気味に言った。
「あれ?顔が赤いわよ?」
「えっ、そ、そんなことないけど」
マリは、してやったりとほくそ笑んだ。
「青春だねえ」
例の女性隊員がさらに冷やかす。
もうどうでもいいや。アキラはさらに赤面し、マリは満足していた。
隊長たちは今後のことを話し合っていた。
隊長は今日の撮影を中止することを提案した。こんな事態は初めてだった。予想外のことが起こると対応が後手に回る。だから中止して戻るのが一番良いと考えた。
撮影のチーフプロデューサーはどうしても撮影を完了させたいから、第三層に向かうことを主張した。
本来なら隊長の意見が通るのだが、今回はチーフプロデューサーが参加していた。この企画のトップなので、戦闘以外だと強い権限がある。そのため話し合いは平行線をたどった。
痺れを切らした副隊長が発言した。
「討伐隊だけで第三層に入り様子を確認。通常通りなら第二層に戻って、撮影隊を伴って第三層に入る。様子が変なら撤退し地上に戻る。というのはどうでしょうか?」
隊長もチーフプロデューサーもその案で妥協することにした。
「円陣隊形!…他の者はできるだけ出口の近くにいてくれ。」
隊長がそう叫ぶと、素早く円陣隊形ができた。
「突入!」
隊長の号令で第三層に入っていった。アキラたちは出口に向かって歩き始めた。
アキラたちが出口近くに着いたとき、討伐隊が戻ってきた。
「魔物がいない。明らかに異常だ。撤収する!」
隊長がそう宣言した時、ダンジョンが揺れた!そして辺りが強く光りだした。アキラはマリの手を引っ張って出口に走り出した。大変なことが起ころうとしている、それだけは分かった。
出口に入った瞬間、底が抜けたような感覚に襲われた。このまま死んでしまうのか?そんな考えがよぎった。
アキラは思わず叫んでいた。
「マリ、大好きだ!」
「私も好き!」
マリも叫んだ。
二人はしっかりと抱き合った。
「マリはオレが守る」
「アキラ、守って!」
死にたくない。絶対生きて帰るんだ。二人ともそう強く強く念じた。
何かに触れたような気がした。
次の瞬間、虹色に光る円環が現れた。
まるでアニメの魔術の術式、魔法陣みたいだった。
すると、魔法陣からネズミの魔物が出現し、魔法陣は消えた。人間の倍くらい大きい魔物はアキラたちをすり抜けて飛んでいってしまった。まるで3D映像、ホログラムのようだった。
それを皮切りに無数の魔法陣が出現し、大小様々なネズミ、猫、犬、ハト、カラスのような魔物が無数に現れては消えていった。ネズミや猫が合体したもの、犬やカラスが合体したもの、そして三つ首の大犬が現れた。まるでケルベロスだなとアキラは思った。
最後に自分の周りに魔法陣があらわれ、やがて意識が消えていった。
この日、世界は大災害に見舞われた。すべてのダンジョンが光りだし、その中から魔物が次々に現れ、津波のごとく人々を襲っていった。その日のうちに全人類の半数が亡くなった。そして二週間がたったとき魔物はすべて自然消滅し、人類は一割にまで減少していた。
「アキラはその盾で彼女をしっかり守れよ」
隊長が冷やかすような表情で、アキラを鼓舞した。ここからは魔物との戦闘が始まるのだ。アキラもマリも緊張してきた。
第二層の魔物もネズミだが、第一層の倍くらいの大きさがあり、さらに素早く厄介になり、数も増えるらしい。しかし、ポリカーボネートの盾でまわりを囲えば、安全に倒すことができるそうだ。十二名の隊員全員で円陣を組み、撮影隊と高校生を中に囲んで門をくぐっていった。
マリは震えていた。急に怖くなってきたのでアキラに掴まろうとした。しかし、それより早くアキラがマリの手を握り、彼女を自分の方に引き寄せてつぶやいた。
「マリはオレが守る」
マリはドキッとした。そして思い出した。幼稚園の時に同じようなことがあったのだ。幼稚園の悪ガキから髪を引っ張られるという、いじめを受けた。そしたらアキラが割って入り、両手を大きく広げて叫んだ。
「マリはオレが守る」
アキラは弱虫で、泣き虫で、いつもはマリがお姉さんのように守ってる感じだった。それがあの時は違った。カッコいいと思ってしまった。そう、あの時からアキラを好きになってしまったんだ。
それを思い出したら、急に顔が火照ってしまっていた。
「ちゃんと守ってよね」
マリは小さくつぶやいた。
第二層に入った。しかし、何も起こらず、辺りは静寂に包まれていた。
隊長がいぶかしんだ。
「おかしいな。魔物がいない」
副隊長も腑に落ちない顔をした。
「確かに変ですね。もうリポップしてるはずですが」
「俺たちの他に別のグループが入ったということはないよな」
「私が第一層で番をしていましたから、絶対に有り得ないです」
副隊長がきっぱりと答えた。
隊長は腕を組んで思案した。
「休憩にする。副隊長とチーフは残ってくれ。あとは自由にしてくれ」
「緊張して損しちゃった」
マリがアキラの腕に抱きついてきて、胸を強く押し当ててきた。
「う、うん。そうだね。」
柔らかい感触に思わずドキッとして顔を赤らめた。
マリは門をくぐるとき赤面したので、お返しのつもりだった。
マリが冷やかし気味に言った。
「あれ?顔が赤いわよ?」
「えっ、そ、そんなことないけど」
マリは、してやったりとほくそ笑んだ。
「青春だねえ」
例の女性隊員がさらに冷やかす。
もうどうでもいいや。アキラはさらに赤面し、マリは満足していた。
隊長たちは今後のことを話し合っていた。
隊長は今日の撮影を中止することを提案した。こんな事態は初めてだった。予想外のことが起こると対応が後手に回る。だから中止して戻るのが一番良いと考えた。
撮影のチーフプロデューサーはどうしても撮影を完了させたいから、第三層に向かうことを主張した。
本来なら隊長の意見が通るのだが、今回はチーフプロデューサーが参加していた。この企画のトップなので、戦闘以外だと強い権限がある。そのため話し合いは平行線をたどった。
痺れを切らした副隊長が発言した。
「討伐隊だけで第三層に入り様子を確認。通常通りなら第二層に戻って、撮影隊を伴って第三層に入る。様子が変なら撤退し地上に戻る。というのはどうでしょうか?」
隊長もチーフプロデューサーもその案で妥協することにした。
「円陣隊形!…他の者はできるだけ出口の近くにいてくれ。」
隊長がそう叫ぶと、素早く円陣隊形ができた。
「突入!」
隊長の号令で第三層に入っていった。アキラたちは出口に向かって歩き始めた。
アキラたちが出口近くに着いたとき、討伐隊が戻ってきた。
「魔物がいない。明らかに異常だ。撤収する!」
隊長がそう宣言した時、ダンジョンが揺れた!そして辺りが強く光りだした。アキラはマリの手を引っ張って出口に走り出した。大変なことが起ころうとしている、それだけは分かった。
出口に入った瞬間、底が抜けたような感覚に襲われた。このまま死んでしまうのか?そんな考えがよぎった。
アキラは思わず叫んでいた。
「マリ、大好きだ!」
「私も好き!」
マリも叫んだ。
二人はしっかりと抱き合った。
「マリはオレが守る」
「アキラ、守って!」
死にたくない。絶対生きて帰るんだ。二人ともそう強く強く念じた。
何かに触れたような気がした。
次の瞬間、虹色に光る円環が現れた。
まるでアニメの魔術の術式、魔法陣みたいだった。
すると、魔法陣からネズミの魔物が出現し、魔法陣は消えた。人間の倍くらい大きい魔物はアキラたちをすり抜けて飛んでいってしまった。まるで3D映像、ホログラムのようだった。
それを皮切りに無数の魔法陣が出現し、大小様々なネズミ、猫、犬、ハト、カラスのような魔物が無数に現れては消えていった。ネズミや猫が合体したもの、犬やカラスが合体したもの、そして三つ首の大犬が現れた。まるでケルベロスだなとアキラは思った。
最後に自分の周りに魔法陣があらわれ、やがて意識が消えていった。
この日、世界は大災害に見舞われた。すべてのダンジョンが光りだし、その中から魔物が次々に現れ、津波のごとく人々を襲っていった。その日のうちに全人類の半数が亡くなった。そして二週間がたったとき魔物はすべて自然消滅し、人類は一割にまで減少していた。
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