one hour writing short story

深月珂冶

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アイディア

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 株式会社「フォースムーブ」はアニメグッズ製造、販売している会社だ。
 社員は5人。主に漫画の版権元からの依頼を受けて、企画を考えたり、デザイン、素材やコストなども考える。
 会社内で協議をし、仮決定させたものを版権元に提出する。
 最終的な決定は版権元だ。今回は人気漫画の「ほうじんネンリン」のぬいぐるみを作ることになった。
 版権元からはデザインを社内で作ってほしいとのことだった。
 社員たちが各々のアイディアを出し合い、それをコンペ形式で決める。
 これでデザインが採用となると、該当社員のボーナスは割増になる。
 だから皆、張り切ってデザインをやる。 
 今回は内藤ないとうりょうしんしゃちょうになってからの初のコンペだった。
「社長。私。自信あります!どうですか?」
「うーん。そうだな」
 社員の相田あいだ梨子りこが、内藤社長にいち早くデザインを提出する。
 内藤は隅々すみずみまでデザインを見て、確認する。いい形のぬいぐるみのデザインで、原作の世界観を残している雰囲気だった。
「そうだな。うーん。これはダメだな」
 相田のアイディアは却下きゃっかされた。相田は納得いかない心情だが、言い返さなかった。その後、相田以外の社員が次々とアイディアを提出するも、却下が続く。最後にがわがアイディアを提出した。
 加古川はこの会社でのエース的存在だ。皆が彼女のアイディアが採用されるかと、息を飲む。しかし、採用に至らなかった。
 皆、どんなアイディアが採用されるのか考え込む。考えて提出しては却下が続く。
 しびれを切らした相田が抗議をする。
「社長。何が不満ですか。どれも中々、OK出さないじゃないですか!」
「うーん。どれもいいんだけど、何かが足りないな」
 相田は内藤の返答にモヤモヤとする。他の社員も内藤にモヤモヤしているのが解るくだらいだった。
「だから。僕が考えたアイディアを提出することにするよ」
内藤は皆を納得させずに、自身のアイディアを提出すると言い切った。社員たちは不満に思いながらも、それに反対しなかった。版権元に企画を提出した。
 後日、版権元から連絡がきた。どうやら、合格をもらえなかったらしい。
「はあ。どうしてだろう」
内藤がため息をついていた。他の社員は、それを呆れた目で見ていた。部下のアイディアを却下し、他者からの反応も確認せずに提出。
社内でのコンペをしないで提出しているから、アイディアが独りよがりになりがちなのだろう。
加古川が内藤のディスクに向かう。
「あの社長。社員の皆でもう一度、アイディアを出したり考えて多数決で決めてみるのはどうですか?社長一人での視点だと、一人よがりになるし。皆で多数決で決めたほうがいいです」
 加古川の圧が強めの言い分に内藤は少し怯む。けれど、加古川の言い分も一理あると思ったようだ。
「そうだな。そうしよ。皆。悪かった。大変かもしれんけど、もう一度、アイディアを提出してほしい。それと。その中で皆で多数決で、一番良かったのをまた版権元に提出するよ。いいかな?」
「了解」
 社員が口々に言った。加古川の行動力と、物怖じしない感じに皆、感心した。
相田が加古川に話しかける。
「加古川さん。すごい」
「いや。大したことないよ」
「中々、言えないよね。皆思っていても」
「立場があるかもだけど。効率性重視ならね」
「確かに。いくら新社長が優秀で、経験や実力あっても。独りよがりになってくだろうしね」
「皆でアイディアを出せば、他者の違った視点、違う考え方も時には取り入れるのも大事だよね」
相田は加古川の考えこそ、会社の成長やまたは人としての成長していく上で必要な人だと思えた。相田は加古川を見習おうと心に誓った。
了 53:31

 
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