30の世界

深月珂冶

文字の大きさ
上 下
1 / 3

インスタグラマー(2020/08/19)

しおりを挟む
  
  私には憧れのインタグラマーがいる。それは黒岩悟くろいわさとるという人だ。
  いつもイケメンでスマートな自撮りをアップしている。

『今日は渋谷で買い物♪』

  私は黒岩君が渋谷のセンター街でピースをしている投稿に『いいね』を押した。
  彼のインスタのフォロワーは七万を越えている。
  毎度のことながら『いいね』の数も桁違いに凄い。
  私はいつも黒岩君のファンとネットのSNSでやり取りしている。

「黒岩君、今日もカッコいいね」
「うん。モデルとかやっているのかな」

  黒岩君のファンは、彼がモデルだと思っている。しかし、それは違うらしい。
  更にファンの多くは黒岩君の経歴を知りたがっている。
  私もその一人だ。けれど、そんなものは一切見つからない。
  ネットで検索しても見つからない。
  同級生の証言でも見つかればいいのにと私は思っていた。
  それでも見つからないのは彼の周りが黙っていてくる人ばかりなのだろう。
  目撃証言でもあればいいのに。
  私はそんなことを思っていた。

  ある日、ネットに『黒岩悟はホログラム』という書き込みが上がった。
  黒岩君のファンは猛反論し、炎上。
  けれど、どういう訳か、その一週間後、それまでの投稿も全て消え、アカウントだけが残った。
  私は一瞬、ホログラムなのかと思えてきた。
  けれど、その数日後、初めて黒岩君の動画が投稿された。

  私は緊張しながらそれを再生する。
  その動画には顔を怪我した男性が写っていた。
  男性は酷く悲痛な表情を浮かべてゆっくり話す。

『今まで騙していて、すいません。僕は事故で顔に大きな怪我をしました。顔を写真で修正しネットに投稿していました。さようなら』

  その後、黒岩君のアカウントは消滅した。
 
 その三日後、身元不明の自殺の報道があった。
  私は騙されたというより、何とも言えない気分になった。
  もしも、黒岩君のアカウントを探る人がいなかったら、彼はどうなっていただろう。
  ネットから現実を知ることが本当に良いことなのだろうか。

インスタグラマー (了)
題材 インスタグラム 
製作時間 32:37 文字数790
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

処理中です...