堕落のマリア(R18)

深月珂冶

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芳子の悩み

芳子の悩み

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 しばらくすると、芳子がやってくる。真理亜は正気に戻り、その紙を引き出しにしまった。
 真理亜はインターフォンで芳子の姿を確認すると、すぐに玄関のドアを開けた。

「こんにちは、おじゃまします」
「どうぞ~」

 真理亜は芳子を招きいれた。芳子は真理亜の様子が可笑しいと思った。

「何かあった?」
「うんうん。何も」
「あ。そうだ。このマンションにめっちゃ美形の男性いるよね」

 芳子は嬉しそうに話した。真理亜はそれがすぐに来宮だと解った。

「ううん。いるね」
「噂によるとこのマンションのオーナーなんでしょう?」
「そうだね。大家さんだね」
「へー。大家さんってどんな人?」

 芳子は来宮に興味津々だった。真理亜は来宮の先ほどの出来事を言うべきか迷った。

「どんな人?うーん。ちょっとなんとも」
「なんとも?どういうこと?」

 真理亜は誤魔化したが、それでも言わなければいけない気がした。

「遊び人かな」
「あ、遊び人なの?」
「ううん。だって、その。さっきね」

 真理亜は少し言うのをはばかった。

「さっき?」
「ベランダでセックスしていた」

 芳子は真理亜の発言に目を丸くした。よほど驚いたらしい。
 来宮は見た目からモテそうではあるが、白昼に堂々と外でセックスをするように見えない。
 真理亜は芳子の反応が妥当だと思った。きっと普段の来宮を見ている人は、そう思わないだろう。

「そ。そうなんだ。意外」
「うん。意外だよね」

 芳子は意外と言いつつも、来宮に興味を示した。

「ねぇ。大家さんは独身なの?」
「独身だよ。離婚歴はあるけど」
「へぇ」
「え?まさか?」
「私でもイケるかな?」

 芳子は照れくさそうに言った。真理亜は芳子の態度に驚いた。
 芳子の見た目から、淫らなことが嫌いそうに見えたからだ。

「イケるって?遊ぶってこと?」

 芳子は首を縦に振った。真理亜は想定外のことに驚くばかりだった。
 真理亜はふと、先ほどの来宮の連絡先が頭を過ぎった。

「大家さんの名前、来宮っていうの。実は私、口説かれたよ」

 真理亜は来宮が芳子と遊んで欲しくないと咄嗟に思った。

「えー!マジで!そうなの?で、真理亜さんは?どうするの?」
「えっと。その」
「ちょっと詳しく聞かせてよぉ」

 真理亜は来宮からのアプローチを洗いざらい芳子に話した。
 芳子はその話を興味津々に聞いた。真理亜は芳子の興奮具合に少し引く。
 真理亜は自分で話したことを後悔した。これが他の人にでも漏れたら?と思えてきた。

「なんか、凄いね。でも、割り切った関係とかでもいいのでは?」
「え?ちょっと、まって」
「でもさ、旦那以外の人と関係持つって何か刺激的じゃない?」

 芳子はにやにやとした。芳子は楽しくて仕方ないようだ。真理亜は少しため息をつく。

「でも、優貴はどうなるの?」
「隠れていればいいんじゃないの?私も憧れるけど、やれないっていうか」
「芳子さん。本当、どうしたの?」

 真理亜は芳子の様子が可笑しい気がしてきた。不倫を容認するなんて、有り得ない気がした。
 問い詰められた芳子は少し黙る。

「実はね」
「実は?」
「旦那が不倫している。それも人妻と」
「不倫?本当なの?」
「そうなの」

 芳子は深刻そうな表情だった。思いつめ、自暴じぼう自棄じきになっているのだろうか。
 真理亜は心配になった。
 芳子は旦那のみさきの不倫の内容を話し始めた。
 岬は同僚の古谷ふるやしゅうの妻、璃子りこと不倫関係にあるらしい。
 それも不倫というよりも肉体関係で、所謂いわゆるセックスフレンドというものらしい。
 同僚の古谷もそれを理解しているらしく、寧ろ、二人がやっているところを見て興奮しているらしい。

 真理亜は全くの変態的思考に少し気持ち悪さを感じた。
 それが露呈したのは、璃子が芳子に接触してきたらしい。それは今日の朝の出来事であった。

芳子の悩み 了
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