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大家の素顔
※大家の素顔※
しおりを挟む「っはあ」
「俺も気持ちよかったよ」
来宮と女性は向き合うと、激しくディープキスをし始めた。
ここで、女性の顔が見え、真理亜は再び驚いた。
その女性はさきほど、来宮と話をしていた人だった。
この二人は付き合っているのだろうか。女性の艶やかな表情が印象的だった。
真理亜はショックというより、妙な興奮を感じた。
むらむらとした感覚がわき、自制を利かせた。
互いの口が離れ、来宮がこちらを向いた。
真理亜と目が合うと、来宮は驚きも恥じらいもせず、ただ色気のある目で微笑む。
真理亜は完全に気付かれたと思い、すぐに窓を閉めてレースカーテンをした。
真理亜は確実に、次に会ったとき気まずいと思った。
真理亜は落ち着くために、台所の浄水器を捻り、水をコップに入れる。
それを一気飲みした。真理亜は来宮が遊び人だと確信した。
だから、結婚している自分を誘ったのだと思った。
真理亜は来宮が遊び相手が欲しくて、アプローチしてきたのか?
改めて、気をつけようと思った。
けれど、真理亜は先ほどの興奮が抑えられず、そわそわする。
真理亜は「落ち着け」とつぶやき、深呼吸をした。
ひとまず、真理亜は自分のポケットから、来宮からもらった連絡先の紙取出し、ゴミ箱に棄てた。
真理亜はしばらくすると、スマートフォンにラインのメッセージが来ているのに気付く。
スマートフォンを見ると、芳子からのメッセージだった。
『真理亜さん
仕事、思ったより早く終わりそう。
13時くらいにそちらに来れそうです!ではまた!』
真理亜はそのメッセージを読み終わると、『了解』と一言だけ返信し、スマートフォンを置いた。
来宮から貰った連絡先の紙を思い出した。
真理亜は見てしまった光景が脳裡に焼きつき、落ち着くどころか、余計に気が散った。
とりあえず、来宮とはあまり話さないようにしようと考えた。
そうこうしているうちに、昼食の時間になった。
真理亜は昼食を食べる気にならず、バナナだけを食べた。
真理亜はふと疑問に思った。
このマンションに住む来宮に好意を寄せている人たちは、来宮自身の実態を知っているのだろうか。
知っていてもいなくても、私には関係ない。真理亜は自分に言い聞かせた。
昼の12時が過ぎると、マンションのインターフォンが押された。
真理亜はインターフォンの画面を見る。そこに写っていたのは、大家の来宮だった。
「はい。どうしました」
真理亜は毅然とした態度で応対した。インターフォン越しの来宮は面白そうな表情を浮かべていた。
【真理亜さん。ちょっといいかな】
「ちょっとって?」
【解っているでしょう?】
真理亜はインターフォンを閉じ、玄関を開ける。来宮はさっきの表情と違い、爽やかな笑顔だった。
「あの、ことですよね?」
「そうそう」
「言いませんから」
真理亜は来宮の顔を見なかった。来宮は大声で笑う。
「あはははは。いや、そういうんじゃないんだよ。別に言ってもいいんだよ?ただ、あれを見た真理亜さんの反応を見たかっただけだから」
「……っ。っていうか、外でやるとか常識疑いますよ」
「ごめんごめん。誰も見ていないかと思ったからね。いつもは部屋でね」
真理亜はいつもその女性とそういうことをしているのかと思った。
真理亜は来宮の顔を見る。来宮はすかさず、真理亜の顔を覗き込む。
「やっと見てくれた」
「……軽蔑しました」
「軽蔑かぁ。女性の気持ちに応えているだけなんだよ。彼女が僕とシたいなら、それに応えているだけだ。真理亜さんだって、旦那さんに応えている。それと一緒さ」
「じゃあ、私に連絡先の紙を渡したのは、セックスのお誘いですか?」
真理亜は直球に質問した。来宮は再び笑う。
「っはははは。まあ、それもあるけど、僕としては真理亜さん自身を単純に知りたいと思ったんだ」
来宮は真理亜の手を取り、目線を合わせて屈んだ。
来宮の大きいな目が、真理亜の顔を映し出す。来宮の声はバリトンの通る声だった。
真理亜は近すぎる距離に、離れようとするも、しっかりと腕をつかまれた。
「……私は結婚していて、子供もいます。何を言っているんですか?」
「でも、それはそれだよ。僕はそれを承知で言っている。それに……時々、真理亜さんの表情が『本当にこれでいいのか』って見えて。それを見ていたら、何か」
来宮は真理亜に熱の篭った視線を向けた。真理亜は直視できず、次第に体が温かくなってきた。
真理亜は自身が赤面しているのを悟られたくなく、下を向く。
「……無理にとは言わないさ。でもね、いつでも僕は待っているからね」
来宮は真理亜の腕をゆっくりとはがした。
「……どうして、そう思うんですか?」
「どうしてって?理由はないよ。ただ女性は結婚しても女性であるべきだと僕は思うからだよ」
来宮は真理亜のでこにキスをすると、玄関を出て行った。
玄関の向こうに消えた来宮を真理亜はドア越しに見つめた。
『本当にこれでいいのか』。真理亜は核心を突かれた気がした。
このまま、普通の主婦として何事もなく終えていく。
平々凡々でいいのか。真理亜は自分の中で、くすぶる何かを感じた。
居間に戻ると、真理亜はゴミ箱に棄てた来宮の連絡先の紙を取り出した。
それをしばらく見つめた。
※大家の素顔※ 了
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