堕落のマリア(R18)

深月珂冶

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夫婦の不満ありますか?

夫婦の不満ありますか?

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 真理亜まりあは自宅に戻ると、先ほどのことを思い出した。
 大家の来宮くのみやが自分を気に入っていたなんて知りもしなかった。
 知ったからってどうにかなるわけでもない。
 ただ、これから先、どういう顔で来宮に会えばいいのだろうか。

 とにかく、一日の仕事をやらなくてはいけない。
 真理亜は来宮から貰った紙を捨てられず、ポケットに入れた。
 今日は芳子が家に来る前に、部屋を綺麗にしよう。真理亜は掃除機を取り出す。
 来宮と草田好は知り合いのようだが、どんな知り合いなのだろうか。
 真理亜はいつの間にか、来宮が気になっていた。

「私には関係ない」真理亜は小さく口にし、掃除を始める。
 掃除が終わると、真理亜は一息入れるためにお茶を入れた。
 インターフォンが鳴る。
 インターフォンの画像に映し出されたのは、知らない若い男性だった。

「はい。どちら様ですか?」
 
 インターフォンはマンションのエントランスではなく、上山の玄関のインターフォンを押していた。
 つまりは、アレクサンドロエステートのエントランスには入れたらしい。

【すいません。あの、草田くさだこのみさんって何時帰ってきますか?】
「え。エントランスに入れたのは何故ですか?」

 どうやら、草田好の来客人らいきゃくじんのようだった。恐らく、この男性は芸能関係者か、タレントなのだろうか。

【えっと、草田さんの鍵は持っていて。家に入ったら、居なくて何時戻るかなと】

 真理亜はなぜ、この人は私に聞いてくるのだろうと思った。

「そうですか。帰ってくるのはいつかわからないです。ごめんなさい」
【そうですか。ご迷惑おかけします】

 男性はすぐに引き下がった。男性は草田好の連絡先を知らないのだろう。
 真理亜はお茶を片付けて、スマートフォンに連絡が無いか確認した。

 芳子よしこからラインでメッセージが着ていたのは、10分くらい前だったようだ。

『午後の1時すぎくらいに行きます^▽^』

 真理亜はそのメッセージに返信する。

『了解!待っています☆ミ』

 スマートフォンをカバンに仕舞う。
 芳子が来るまでに今日のご飯の材料と、何かお茶の時間の菓子折りでも買おうと考えた。
 真理亜は外出用の服に着替える。
 化粧をし直した。天気予報を確認するために、テレビをつける。

 朝の出勤の時間が過ぎているテレビ番組では、天気予報はやっていなかった。
 画面の左上くらいに市内の天気が小さく表示されている。
 真理亜はわかりにくいと思いながら、確認した。
 降水確率0%と確認が取れると、テレビを消そうとする。
 その直後、朝の情報番組の特集が始まった。

『夫婦の不満ありますか?』

 タイトルコールが流れ、真理亜はふとそれを見てしまった。
 テレビのコメンテイターが言う。

「今は不倫不倫って騒ぐけど、昔もあったからね」
「そうですね。今更って感じですよね。皆さんどんなところに不満を感じているのでしょう。聞いてみました」

 司会の綺麗な女性が言った。もう一人の司会の男性が、女性の見て言う。

「さらさちゃんなんか、既婚《きこん》男性に好かれそうじゃない?」
今田こんださん。それセクハラです」
「ごめんごめんよ」

 司会の今田は笑いを取ろうとしていたようだが、滑っている。真理亜も、少しドン引きした。

「さっそく街頭インタビュー流しますね」

 司会のさらさと呼ばれている女性が言った。その直後に街頭インタビューが流れた。
 最初に流れてきたのは、三十代の女性だった。

 インタビューアワーが聞く。

「旦那さんへの不満ってありますか?」
「不満。ですか?そうですね。うち、今セックスレスでして」

 女性は静かに言った。

「そうなんですか」
「でも、私、元々、セックスは……。旦那は浮気していると思います」

 女性は元気がなさそうに言った。インタビューアワーが言う。

「そうですか。これからどうしますか?」
「……旦那との性交せいこうとかもう気持ち悪いので、そのまま離婚しまーす」

 女性は元気良く言った。どうやら、女性は旦那のことが好きではないようだ。

「旦那さんはもういいんですか?」インタビューアワーが笑いながら言った。
「えーだってもうねぇ。気持ち悪いんです。結婚したときは良かったんですけど。面倒臭いし」

 VTRが切り替わった。今度は男性に聞いている。
 インタビューアワーが聞く。

「奥さんへの不満ってありますか?」

 40代と思われる男性が答える。きりっとした身なりの男性だった。

「不満ですか。ないです。本当に良くしてくれていて。僕を支えてくれています」

 真理亜はその男性が人間的に素晴らしいからこそ、その奥さんも支えてくれているのだろうと思った。

「ラブラブですね」インタビューアワーが言った。
「そんなことないですよ。仕事柄、僕、出張が多くて。休みの日は必ず家族サービスしています」
「おお。素晴らしい。これからも良いご夫妻で」
「ありがとうございます」

 VTRは再び、切り替わった。また違う女性に聞いている。
 女性はセレブな雰囲気をしている人だった。
 インタビューアワーが聞く。

「旦那さんに不満ってありますか?」

 女性は二十代らしく、上品ではあるものの、子供らしさがあった。
 女性が言う。

「えっと。強いていうならエッチが下手です」
「どんな風にですか?」インタビューアワーが聞く。
 真理亜はそんなことを聞くのはデリカシーがないだろうと思った。しかし、女性は難なく答える。

「ええっとピー」
 
 女性の発言に規制音が流れた。真理亜はため息をつく。この番組は本当にインタビューしたのだろうか。


 再び場面は切り替わり、今度は普通の女性に聞いている。

「旦那さんに不満ありますか?」

 インタビューアワーが聞いた。
 女性は首をかしげ思い出しながら言う。

「えっとぉ。靴下を丸めて洗濯機に入れること、家事育児全然、手伝わない。あと、ゴミの分別がダメ。あと、太りすぎ。痩せろ以上」

 インタビューアワーは女性がはっきりと言うと思わず、驚く。

「意外とはっきり言うんですね」
「意外とって。旦那の不満を言えといいましたので」
「色々あるんですね」
「ま、働いてくれてるだけでも有難いですけど、本当、靴下丸めているのが許せなくって」

 女性は靴下を丸めていれていることが相当不満のようだ。インタビューアワーはたじたじとなった。
 その後も、様々な人にインビューをしていった。

【旦那への不満】【妻への不満】で何が一番多いか、これから発表するようだ。
 しかし、テレビは宣伝に入った。

夫婦の不満ありますか? 了
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