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夫婦の不満ありますか?
夫婦の不満ありますか?
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真理亜は自宅に戻ると、先ほどのことを思い出した。
大家の来宮が自分を気に入っていたなんて知りもしなかった。
知ったからってどうにかなるわけでもない。
ただ、これから先、どういう顔で来宮に会えばいいのだろうか。
とにかく、一日の仕事をやらなくてはいけない。
真理亜は来宮から貰った紙を捨てられず、ポケットに入れた。
今日は芳子が家に来る前に、部屋を綺麗にしよう。真理亜は掃除機を取り出す。
来宮と草田好は知り合いのようだが、どんな知り合いなのだろうか。
真理亜はいつの間にか、来宮が気になっていた。
「私には関係ない」真理亜は小さく口にし、掃除を始める。
掃除が終わると、真理亜は一息入れるためにお茶を入れた。
インターフォンが鳴る。
インターフォンの画像に映し出されたのは、知らない若い男性だった。
「はい。どちら様ですか?」
インターフォンはマンションのエントランスではなく、上山の玄関のインターフォンを押していた。
つまりは、アレクサンドロエステートのエントランスには入れたらしい。
【すいません。あの、草田好さんって何時帰ってきますか?】
「え。エントランスに入れたのは何故ですか?」
どうやら、草田好の来客人のようだった。恐らく、この男性は芸能関係者か、タレントなのだろうか。
【えっと、草田さんの鍵は持っていて。家に入ったら、居なくて何時戻るかなと】
真理亜はなぜ、この人は私に聞いてくるのだろうと思った。
「そうですか。帰ってくるのはいつかわからないです。ごめんなさい」
【そうですか。ご迷惑おかけします】
男性はすぐに引き下がった。男性は草田好の連絡先を知らないのだろう。
真理亜はお茶を片付けて、スマートフォンに連絡が無いか確認した。
芳子からラインでメッセージが着ていたのは、10分くらい前だったようだ。
『午後の1時すぎくらいに行きます^▽^』
真理亜はそのメッセージに返信する。
『了解!待っています☆ミ』
スマートフォンをカバンに仕舞う。
芳子が来るまでに今日のご飯の材料と、何かお茶の時間の菓子折りでも買おうと考えた。
真理亜は外出用の服に着替える。
化粧をし直した。天気予報を確認するために、テレビをつける。
朝の出勤の時間が過ぎているテレビ番組では、天気予報はやっていなかった。
画面の左上くらいに市内の天気が小さく表示されている。
真理亜はわかりにくいと思いながら、確認した。
降水確率0%と確認が取れると、テレビを消そうとする。
その直後、朝の情報番組の特集が始まった。
『夫婦の不満ありますか?』
タイトルコールが流れ、真理亜はふとそれを見てしまった。
テレビのコメンテイターが言う。
「今は不倫不倫って騒ぐけど、昔もあったからね」
「そうですね。今更って感じですよね。皆さんどんなところに不満を感じているのでしょう。聞いてみました」
司会の綺麗な女性が言った。もう一人の司会の男性が、女性の見て言う。
「さらさちゃんなんか、既婚《きこん》男性に好かれそうじゃない?」
「今田さん。それセクハラです」
「ごめんごめんよ」
司会の今田は笑いを取ろうとしていたようだが、滑っている。真理亜も、少しドン引きした。
「さっそく街頭インタビュー流しますね」
司会のさらさと呼ばれている女性が言った。その直後に街頭インタビューが流れた。
最初に流れてきたのは、三十代の女性だった。
インタビューアワーが聞く。
「旦那さんへの不満ってありますか?」
「不満。ですか?そうですね。うち、今セックスレスでして」
女性は静かに言った。
「そうなんですか」
「でも、私、元々、セックスは……。旦那は浮気していると思います」
女性は元気がなさそうに言った。インタビューアワーが言う。
「そうですか。これからどうしますか?」
「……旦那との性交とかもう気持ち悪いので、そのまま離婚しまーす」
女性は元気良く言った。どうやら、女性は旦那のことが好きではないようだ。
「旦那さんはもういいんですか?」インタビューアワーが笑いながら言った。
「えーだってもうねぇ。気持ち悪いんです。結婚したときは良かったんですけど。面倒臭いし」
VTRが切り替わった。今度は男性に聞いている。
インタビューアワーが聞く。
「奥さんへの不満ってありますか?」
40代と思われる男性が答える。きりっとした身なりの男性だった。
「不満ですか。ないです。本当に良くしてくれていて。僕を支えてくれています」
真理亜はその男性が人間的に素晴らしいからこそ、その奥さんも支えてくれているのだろうと思った。
「ラブラブですね」インタビューアワーが言った。
「そんなことないですよ。仕事柄、僕、出張が多くて。休みの日は必ず家族サービスしています」
「おお。素晴らしい。これからも良いご夫妻で」
「ありがとうございます」
VTRは再び、切り替わった。また違う女性に聞いている。
女性はセレブな雰囲気をしている人だった。
インタビューアワーが聞く。
「旦那さんに不満ってありますか?」
女性は二十代らしく、上品ではあるものの、子供らしさがあった。
女性が言う。
「えっと。強いていうならエッチが下手です」
「どんな風にですか?」インタビューアワーが聞く。
真理亜はそんなことを聞くのはデリカシーがないだろうと思った。しかし、女性は難なく答える。
「ええっとピー」
女性の発言に規制音が流れた。真理亜はため息をつく。この番組は本当にインタビューしたのだろうか。
再び場面は切り替わり、今度は普通の女性に聞いている。
「旦那さんに不満ありますか?」
インタビューアワーが聞いた。
女性は首をかしげ思い出しながら言う。
「えっとぉ。靴下を丸めて洗濯機に入れること、家事育児全然、手伝わない。あと、ゴミの分別がダメ。あと、太りすぎ。痩せろ以上」
インタビューアワーは女性がはっきりと言うと思わず、驚く。
「意外とはっきり言うんですね」
「意外とって。旦那の不満を言えといいましたので」
「色々あるんですね」
「ま、働いてくれてるだけでも有難いですけど、本当、靴下丸めているのが許せなくって」
女性は靴下を丸めていれていることが相当不満のようだ。インタビューアワーはたじたじとなった。
その後も、様々な人にインビューをしていった。
【旦那への不満】【妻への不満】で何が一番多いか、これから発表するようだ。
しかし、テレビは宣伝に入った。
夫婦の不満ありますか? 了
大家の来宮が自分を気に入っていたなんて知りもしなかった。
知ったからってどうにかなるわけでもない。
ただ、これから先、どういう顔で来宮に会えばいいのだろうか。
とにかく、一日の仕事をやらなくてはいけない。
真理亜は来宮から貰った紙を捨てられず、ポケットに入れた。
今日は芳子が家に来る前に、部屋を綺麗にしよう。真理亜は掃除機を取り出す。
来宮と草田好は知り合いのようだが、どんな知り合いなのだろうか。
真理亜はいつの間にか、来宮が気になっていた。
「私には関係ない」真理亜は小さく口にし、掃除を始める。
掃除が終わると、真理亜は一息入れるためにお茶を入れた。
インターフォンが鳴る。
インターフォンの画像に映し出されたのは、知らない若い男性だった。
「はい。どちら様ですか?」
インターフォンはマンションのエントランスではなく、上山の玄関のインターフォンを押していた。
つまりは、アレクサンドロエステートのエントランスには入れたらしい。
【すいません。あの、草田好さんって何時帰ってきますか?】
「え。エントランスに入れたのは何故ですか?」
どうやら、草田好の来客人のようだった。恐らく、この男性は芸能関係者か、タレントなのだろうか。
【えっと、草田さんの鍵は持っていて。家に入ったら、居なくて何時戻るかなと】
真理亜はなぜ、この人は私に聞いてくるのだろうと思った。
「そうですか。帰ってくるのはいつかわからないです。ごめんなさい」
【そうですか。ご迷惑おかけします】
男性はすぐに引き下がった。男性は草田好の連絡先を知らないのだろう。
真理亜はお茶を片付けて、スマートフォンに連絡が無いか確認した。
芳子からラインでメッセージが着ていたのは、10分くらい前だったようだ。
『午後の1時すぎくらいに行きます^▽^』
真理亜はそのメッセージに返信する。
『了解!待っています☆ミ』
スマートフォンをカバンに仕舞う。
芳子が来るまでに今日のご飯の材料と、何かお茶の時間の菓子折りでも買おうと考えた。
真理亜は外出用の服に着替える。
化粧をし直した。天気予報を確認するために、テレビをつける。
朝の出勤の時間が過ぎているテレビ番組では、天気予報はやっていなかった。
画面の左上くらいに市内の天気が小さく表示されている。
真理亜はわかりにくいと思いながら、確認した。
降水確率0%と確認が取れると、テレビを消そうとする。
その直後、朝の情報番組の特集が始まった。
『夫婦の不満ありますか?』
タイトルコールが流れ、真理亜はふとそれを見てしまった。
テレビのコメンテイターが言う。
「今は不倫不倫って騒ぐけど、昔もあったからね」
「そうですね。今更って感じですよね。皆さんどんなところに不満を感じているのでしょう。聞いてみました」
司会の綺麗な女性が言った。もう一人の司会の男性が、女性の見て言う。
「さらさちゃんなんか、既婚《きこん》男性に好かれそうじゃない?」
「今田さん。それセクハラです」
「ごめんごめんよ」
司会の今田は笑いを取ろうとしていたようだが、滑っている。真理亜も、少しドン引きした。
「さっそく街頭インタビュー流しますね」
司会のさらさと呼ばれている女性が言った。その直後に街頭インタビューが流れた。
最初に流れてきたのは、三十代の女性だった。
インタビューアワーが聞く。
「旦那さんへの不満ってありますか?」
「不満。ですか?そうですね。うち、今セックスレスでして」
女性は静かに言った。
「そうなんですか」
「でも、私、元々、セックスは……。旦那は浮気していると思います」
女性は元気がなさそうに言った。インタビューアワーが言う。
「そうですか。これからどうしますか?」
「……旦那との性交とかもう気持ち悪いので、そのまま離婚しまーす」
女性は元気良く言った。どうやら、女性は旦那のことが好きではないようだ。
「旦那さんはもういいんですか?」インタビューアワーが笑いながら言った。
「えーだってもうねぇ。気持ち悪いんです。結婚したときは良かったんですけど。面倒臭いし」
VTRが切り替わった。今度は男性に聞いている。
インタビューアワーが聞く。
「奥さんへの不満ってありますか?」
40代と思われる男性が答える。きりっとした身なりの男性だった。
「不満ですか。ないです。本当に良くしてくれていて。僕を支えてくれています」
真理亜はその男性が人間的に素晴らしいからこそ、その奥さんも支えてくれているのだろうと思った。
「ラブラブですね」インタビューアワーが言った。
「そんなことないですよ。仕事柄、僕、出張が多くて。休みの日は必ず家族サービスしています」
「おお。素晴らしい。これからも良いご夫妻で」
「ありがとうございます」
VTRは再び、切り替わった。また違う女性に聞いている。
女性はセレブな雰囲気をしている人だった。
インタビューアワーが聞く。
「旦那さんに不満ってありますか?」
女性は二十代らしく、上品ではあるものの、子供らしさがあった。
女性が言う。
「えっと。強いていうならエッチが下手です」
「どんな風にですか?」インタビューアワーが聞く。
真理亜はそんなことを聞くのはデリカシーがないだろうと思った。しかし、女性は難なく答える。
「ええっとピー」
女性の発言に規制音が流れた。真理亜はため息をつく。この番組は本当にインタビューしたのだろうか。
再び場面は切り替わり、今度は普通の女性に聞いている。
「旦那さんに不満ありますか?」
インタビューアワーが聞いた。
女性は首をかしげ思い出しながら言う。
「えっとぉ。靴下を丸めて洗濯機に入れること、家事育児全然、手伝わない。あと、ゴミの分別がダメ。あと、太りすぎ。痩せろ以上」
インタビューアワーは女性がはっきりと言うと思わず、驚く。
「意外とはっきり言うんですね」
「意外とって。旦那の不満を言えといいましたので」
「色々あるんですね」
「ま、働いてくれてるだけでも有難いですけど、本当、靴下丸めているのが許せなくって」
女性は靴下を丸めていれていることが相当不満のようだ。インタビューアワーはたじたじとなった。
その後も、様々な人にインビューをしていった。
【旦那への不満】【妻への不満】で何が一番多いか、これから発表するようだ。
しかし、テレビは宣伝に入った。
夫婦の不満ありますか? 了
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