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ラピスラズリの復讐
ラピスラズリの復讐 5
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今度は由加子が電話をしている。誰と電話をしているのだろうか。
「はい。はい。そうです。間違いありませんでしたか。ありがとうございました。料金のお支払いは振込みでいたします」
由加子は何を依頼したのだろうか。スマートフォンの画面には、【藤山探偵事務所】と表記されていた。
由加子は探偵に何を依頼して調べていたのだろうか。
私はまさかと思った。由加子は少し震え出した。
由加子は笑い出す。
私は動悸がする。私はラピスラズリから手を離した。
森本が言う。
「大丈夫か?」
「うん」
私は首を縦に振る。
「休憩挟むか?」
「大丈夫。このまま、いく」
私は再び、ラピスラズリに触る。
場面は切り替わった。今度は由加子が、エレベーターに乗っている。
そこに男性社員が一人乗り込んできた。由加子が男性社員に話しかける。
「喜多さんって、旧姓は富田さんなんですね」
「え?結婚して婿養子になったからね。白井さん、どうしてそれを?」
由加子《ゆかこ》は男性社員にボディタッチをしている。男性社員は心なしか顔を赤らめていた。
私はその男性社員の顔が見たことある気がしてくる。
富田?もしかして、この男性社員は、富田礼二なのか。
私の予測は当っていく。
「何でって。好きな人のこと、知りたいじゃないですか?」由加子は富田の耳元で囁く。
「ええ?」
「私はいいんです。喜多さんが奥さん大切にしていても、それでも好きなので」
由加子は抱きつく。富田は戸惑いながらも由加子を抱きしめた。
エレベーターが開くと共に、由加子はすぐさま離れた。富田は名残惜しそうに由加子を見た。
もしかして、由加子は富田に復讐するために、伊澤商事に入社したのか。
私の予感は的中していく。今度はまた違う場面に切り替わる。
今度はどこかのスポーツジムに由加子が通っている。
健康のために通っているのか。それとも何かあるのだろうか。
ここでも由加子は美人で評判になっている。整形したとはいえ、こんなにも容姿に恵まれた。なのに、死んだのか。
私はやるせない思いになってきた。由加子はある女性に声を掛けている。
「あの、ちょっとこの器具の使い方が解らないんですけど、教えてもらえます?」
「いいですよ。白井さんだっけ?」
「はい。そうです。加藤梨乃さんですよね?」
私は由加子が、自分自身を陥れた人々への復讐をしようとしているのだと思った。
じゃあ、もしかして?嫌な予感が止まらない。
この先はバッドエンドしかない気がしてくる。
場面は切り替わり、由加子が加藤の信頼をスポーツジムで得ていく。
「加藤さん。三富川高校の出身なんですね。奇遇です」
「うん。え?白井さんも?えー。全然、気づかなかった。こんな美人なら気づくはずなのに」
気づくはずなどないのだ。由加子は整形しているのだから。
私は二人を見ていると、背格好や体系がそっくりであることに気づいた。
まさか、そんなことがあるのだろうか。
私は変な違和感を持ったまま、再び切り替わっていく場面を見るしかなかった。
切り替わった場面は、由加子が富田を口説いている場面だ。
由加子の誘いに富田は夢中になっていく。
「喜多さん。私、喜多さんがほしい」
由加子は富田を触る。その触り方はいやらしい。
「だ……だめだよ。俺には妻が」
「奥さんなんて関係ないよね。愛には障害があればあるほど……いいじゃない?」
由加子は自分の美貌をフルに使い、富田を口説いている。確かに綺麗な女性の口説きに落ちない男などいないのではないだろうか。私は複雑な思いで見るしかなかった。
私の憂鬱《ゆううつ》とは裏腹に、再び場面は切り替わる。
今度は由加子と富田がホテルに行った後だ。
どうやら、本当に関係を持ってしまったらしい。私はやるせない気分になる。
富田はすっかり由加子に夢中になっている。
情事が終わり、素っ気無い由加子に富田が後ろから抱きしめている。
「最高だった」
「……そう」
「もしかして、俺、いけなかった?」
由加子の素っ気無い態度に、富田は焦る。
由加子は笑い出す。由加子の突然の態度に、富田は戸惑う。
「何?どうしたの?」
由加子は服を着始める。スマートフォンを取り出すと、画像を開く。
富田が裸で寝ている写真だ。
「この写真、バラされたくなかったら、百万」
「は?」
「百万くらいだったら、丁度いいでしょう?」
「ふざけんな!」
富田は由加子の顔を思いっきり殴る。
由加子はその場に尻餅をつく。
由加子は睨みつける。富田は笑う。
「だったら、もう一度やらせろよ」
富田は由加子の腕を引っ張る。
私は富田の本質が、全く代わり映えしていないことに衝撃を受けた。
酷い男は何も変わらない。
由加子は再び笑う。
「お前は変わらないなぁ。性欲お化けか?ふふふふ」
「何が可笑しい?」
富田は由加子の笑いに少し恐くなり、腕を離した。由加子はスマートフォンを手にすると、電話を掛ける。
「あのー、梨乃ちゃん。前に言っていたストーカー男に殺られそうになって困っているの、来てくれる?今同じホテルにいるんだよね?」
「ふざけやがって」
富田が由加子に掴み掛かる。私は恐くなってくる。見ていられない。
見たくないと思った瞬間、再び、画面は切り替わった。
ラピスラズリの復讐 5 了
「はい。はい。そうです。間違いありませんでしたか。ありがとうございました。料金のお支払いは振込みでいたします」
由加子は何を依頼したのだろうか。スマートフォンの画面には、【藤山探偵事務所】と表記されていた。
由加子は探偵に何を依頼して調べていたのだろうか。
私はまさかと思った。由加子は少し震え出した。
由加子は笑い出す。
私は動悸がする。私はラピスラズリから手を離した。
森本が言う。
「大丈夫か?」
「うん」
私は首を縦に振る。
「休憩挟むか?」
「大丈夫。このまま、いく」
私は再び、ラピスラズリに触る。
場面は切り替わった。今度は由加子が、エレベーターに乗っている。
そこに男性社員が一人乗り込んできた。由加子が男性社員に話しかける。
「喜多さんって、旧姓は富田さんなんですね」
「え?結婚して婿養子になったからね。白井さん、どうしてそれを?」
由加子《ゆかこ》は男性社員にボディタッチをしている。男性社員は心なしか顔を赤らめていた。
私はその男性社員の顔が見たことある気がしてくる。
富田?もしかして、この男性社員は、富田礼二なのか。
私の予測は当っていく。
「何でって。好きな人のこと、知りたいじゃないですか?」由加子は富田の耳元で囁く。
「ええ?」
「私はいいんです。喜多さんが奥さん大切にしていても、それでも好きなので」
由加子は抱きつく。富田は戸惑いながらも由加子を抱きしめた。
エレベーターが開くと共に、由加子はすぐさま離れた。富田は名残惜しそうに由加子を見た。
もしかして、由加子は富田に復讐するために、伊澤商事に入社したのか。
私の予感は的中していく。今度はまた違う場面に切り替わる。
今度はどこかのスポーツジムに由加子が通っている。
健康のために通っているのか。それとも何かあるのだろうか。
ここでも由加子は美人で評判になっている。整形したとはいえ、こんなにも容姿に恵まれた。なのに、死んだのか。
私はやるせない思いになってきた。由加子はある女性に声を掛けている。
「あの、ちょっとこの器具の使い方が解らないんですけど、教えてもらえます?」
「いいですよ。白井さんだっけ?」
「はい。そうです。加藤梨乃さんですよね?」
私は由加子が、自分自身を陥れた人々への復讐をしようとしているのだと思った。
じゃあ、もしかして?嫌な予感が止まらない。
この先はバッドエンドしかない気がしてくる。
場面は切り替わり、由加子が加藤の信頼をスポーツジムで得ていく。
「加藤さん。三富川高校の出身なんですね。奇遇です」
「うん。え?白井さんも?えー。全然、気づかなかった。こんな美人なら気づくはずなのに」
気づくはずなどないのだ。由加子は整形しているのだから。
私は二人を見ていると、背格好や体系がそっくりであることに気づいた。
まさか、そんなことがあるのだろうか。
私は変な違和感を持ったまま、再び切り替わっていく場面を見るしかなかった。
切り替わった場面は、由加子が富田を口説いている場面だ。
由加子の誘いに富田は夢中になっていく。
「喜多さん。私、喜多さんがほしい」
由加子は富田を触る。その触り方はいやらしい。
「だ……だめだよ。俺には妻が」
「奥さんなんて関係ないよね。愛には障害があればあるほど……いいじゃない?」
由加子は自分の美貌をフルに使い、富田を口説いている。確かに綺麗な女性の口説きに落ちない男などいないのではないだろうか。私は複雑な思いで見るしかなかった。
私の憂鬱《ゆううつ》とは裏腹に、再び場面は切り替わる。
今度は由加子と富田がホテルに行った後だ。
どうやら、本当に関係を持ってしまったらしい。私はやるせない気分になる。
富田はすっかり由加子に夢中になっている。
情事が終わり、素っ気無い由加子に富田が後ろから抱きしめている。
「最高だった」
「……そう」
「もしかして、俺、いけなかった?」
由加子の素っ気無い態度に、富田は焦る。
由加子は笑い出す。由加子の突然の態度に、富田は戸惑う。
「何?どうしたの?」
由加子は服を着始める。スマートフォンを取り出すと、画像を開く。
富田が裸で寝ている写真だ。
「この写真、バラされたくなかったら、百万」
「は?」
「百万くらいだったら、丁度いいでしょう?」
「ふざけんな!」
富田は由加子の顔を思いっきり殴る。
由加子はその場に尻餅をつく。
由加子は睨みつける。富田は笑う。
「だったら、もう一度やらせろよ」
富田は由加子の腕を引っ張る。
私は富田の本質が、全く代わり映えしていないことに衝撃を受けた。
酷い男は何も変わらない。
由加子は再び笑う。
「お前は変わらないなぁ。性欲お化けか?ふふふふ」
「何が可笑しい?」
富田は由加子の笑いに少し恐くなり、腕を離した。由加子はスマートフォンを手にすると、電話を掛ける。
「あのー、梨乃ちゃん。前に言っていたストーカー男に殺られそうになって困っているの、来てくれる?今同じホテルにいるんだよね?」
「ふざけやがって」
富田が由加子に掴み掛かる。私は恐くなってくる。見ていられない。
見たくないと思った瞬間、再び、画面は切り替わった。
ラピスラズリの復讐 5 了
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