7 / 188
ラピスラズリの復讐
ラピスラズリの復讐 3
しおりを挟む
私はお盆にコーヒーを二つ置き、森本のいる店の玄関に戻る。
「お待たせ」
「おう。本当、ごめん」
森本は頭を下げてきた。
「いいよ。それが私の役目だから。ところで、被害者の由加子はなんで死んだの?」
「実は犯人が死んでいて、どう死んだのか。殺されたには変わりないんだ。ただちょっと」
森本は言い難そうだった。事態は結構深刻なのだろうか。私は嫌な気分になる。
「ちょっとって?」
「あのその。白井由加子の遺体であったことも、確証が持てないんだ」
「確証が持てない?どういうこと?由加子は生きているの?」
私は混乱してきた。森本は私の動揺具合に、驚く。
「落ち着け。いいから、落ち着いてくれ。白井の家族にも遺体は確認してもらった。彼女に変わりはないって。でも、何となく腑に落ちなくて。行方不明になっている女性がいるんだ」
「どういうこと?」
森本が何を言いたいのか解らなかった。
「だからその女性と入れ替わったのかなと」
「入れ替わった?」
私はミステリ小説のような出来事に、驚くしかなかった。
「誰と入れ替わったの?」
「誰とはまだ断定できていなんだ。それも見てほしい」
私は頭が混乱する。入れ替わる?どうやって?
「ただ他にも気がかりが」
「ただ?なに勿体ぶっているの?」
「落ち着いて聞いてくれ。顔がつぶれていたんだ」
「つぶれていた……?」
私は目の前が真っ暗になった。
あんなに大変な思いをした由加子の最後は、悲惨なものだったのか。
「……う…うそ」
「だから、それをお前に確かめてほしい。お前にとって精神的苦痛が凄いのは解っている。お願いします」
森本は私に再び頭を下げた。
私は空を見つめる。由加子は顔を潰されて殺された?
どういうこと。私は自然と涙が出てきた。
嗚咽をし、声を出して泣いた。
森本は困惑する。私の背中をなでた。
「辛いよな。本当に」
「由加子は。由加子はどうして………」
「今日はもう止めたほうがいいか。俺、引き返すよ。お前の心が整ったらまた連絡してくれ。近いうちが望ましい」
私は泣きながら、首を縦に振る。
森本はラピスラズリのピアスを丁寧に、ジッパーのビニール袋に仕舞う。
森本は店を出て、帰って行った。
森本が居なくなった後、私は店の片づけを始める。
いくら悲しくても辛くても、やらないといけないことがある。
私は両親が死んでから多少、強くなった。
けれど、高校時代の友人の衝撃的な死にどう向き合ったらいいか、解らなかった。
ラピスラズリの復讐 3 了
「お待たせ」
「おう。本当、ごめん」
森本は頭を下げてきた。
「いいよ。それが私の役目だから。ところで、被害者の由加子はなんで死んだの?」
「実は犯人が死んでいて、どう死んだのか。殺されたには変わりないんだ。ただちょっと」
森本は言い難そうだった。事態は結構深刻なのだろうか。私は嫌な気分になる。
「ちょっとって?」
「あのその。白井由加子の遺体であったことも、確証が持てないんだ」
「確証が持てない?どういうこと?由加子は生きているの?」
私は混乱してきた。森本は私の動揺具合に、驚く。
「落ち着け。いいから、落ち着いてくれ。白井の家族にも遺体は確認してもらった。彼女に変わりはないって。でも、何となく腑に落ちなくて。行方不明になっている女性がいるんだ」
「どういうこと?」
森本が何を言いたいのか解らなかった。
「だからその女性と入れ替わったのかなと」
「入れ替わった?」
私はミステリ小説のような出来事に、驚くしかなかった。
「誰と入れ替わったの?」
「誰とはまだ断定できていなんだ。それも見てほしい」
私は頭が混乱する。入れ替わる?どうやって?
「ただ他にも気がかりが」
「ただ?なに勿体ぶっているの?」
「落ち着いて聞いてくれ。顔がつぶれていたんだ」
「つぶれていた……?」
私は目の前が真っ暗になった。
あんなに大変な思いをした由加子の最後は、悲惨なものだったのか。
「……う…うそ」
「だから、それをお前に確かめてほしい。お前にとって精神的苦痛が凄いのは解っている。お願いします」
森本は私に再び頭を下げた。
私は空を見つめる。由加子は顔を潰されて殺された?
どういうこと。私は自然と涙が出てきた。
嗚咽をし、声を出して泣いた。
森本は困惑する。私の背中をなでた。
「辛いよな。本当に」
「由加子は。由加子はどうして………」
「今日はもう止めたほうがいいか。俺、引き返すよ。お前の心が整ったらまた連絡してくれ。近いうちが望ましい」
私は泣きながら、首を縦に振る。
森本はラピスラズリのピアスを丁寧に、ジッパーのビニール袋に仕舞う。
森本は店を出て、帰って行った。
森本が居なくなった後、私は店の片づけを始める。
いくら悲しくても辛くても、やらないといけないことがある。
私は両親が死んでから多少、強くなった。
けれど、高校時代の友人の衝撃的な死にどう向き合ったらいいか、解らなかった。
ラピスラズリの復讐 3 了
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

消えた弟
ぷりん
ミステリー
田舎で育った年の離れた兄弟2人。父親と母親と4人で仲良く暮らしていたが、ある日弟が行方不明に。しかし父親は何故か警察を嫌い頼ろうとしない。
大事な弟を探そうと、1人で孤軍奮闘していた兄はある不可思議な点に気付き始める。
果たして消えた弟はどこへ行ったのか。
コドク 〜ミドウとクロ〜
藤井ことなり
ミステリー
刑事課黒田班に配属されて数ヶ月経ったある日、マキこと牧里子巡査は[ミドウ案件]という言葉を知る。
それはTMS探偵事務所のミドウこと、西御堂あずらが関係する事件のことだった。
ミドウはマキの上司であるクロこと黒田誠悟とは元同僚で上司と部下の関係。
警察を辞め探偵になったミドウは事件を掘り起こして、あとは警察に任せるという厄介な人物となっていた。
事件で関わってしまったマキは、その後お目付け役としてミドウと行動を共にする[ミドウ番]となってしまい、黒田班として刑事でありながらミドウのパートナーとして事件に関わっていく。

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
消された過去と消えた宝石
志波 連
ミステリー
大富豪斎藤雅也のコレクション、ピンクダイヤモンドのペンダント『女神の涙』が消えた。
刑事伊藤大吉と藤田建造は、現場検証を行うが手掛かりは出てこなかった。
後妻の小夜子は、心臓病により車椅子生活となった当主をよく支え、二人の仲は良い。
宝石コレクションの隠し場所は使用人たちも知らず、知っているのは当主と妻の小夜子だけ。
しかし夫の体を慮った妻は、この一年一度も外出をしていない事は確認できている。
しかも事件当日の朝、日課だったコレクションの確認を行った雅也によって、宝石はあったと証言されている。
最後の確認から盗難までの間に人の出入りは無く、使用人たちも徹底的に調べられたが何も出てこない。
消えた宝石はどこに?
手掛かりを掴めないまま街を彷徨っていた伊藤刑事は、偶然立ち寄った画廊で衝撃的な事実を発見し、斬新な仮説を立てる。
他サイトにも掲載しています。
R15は保険です。
表紙は写真ACの作品を使用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる