ほう、婚約破棄ですか？

第四部一話

　私の名はアナスタシア・エレオノール・ド・ラ・ヴァレンヌ。かつては王国でも屈指の名門、ラ・ヴァレンヌ家の令嬢として、多くの者から敬愛を受けていた。しかし、父の急死によって家は没落し、私の未来は一瞬にして暗転した。私を救ってくれるはずだったのは、婚約者であり、幼馴染でもあるジュリアン・フランソワ・ド・シャルティエだった。しかし、彼は私を裏切り、婚約を破棄した。
その日、王宮の広間で私はジュリアンと対峙していた。彼の表情は硬く、その冷たい瞳が私を突き刺すように見つめていた。

「アナスタシア、我々の婚約をここに解消する。」

その言葉に、私は息を呑んだ。彼の声はまるで凍った刃のように冷たく、無慈悲だった。

「どうして、ジュリアン？なぜこんなことを言うの？」

彼は一瞬、迷いを見せたが、すぐに冷静を取り戻した。

「これは国のためだ。新たな同盟が必要なのだ。」

その瞬間、私の心に怒りと復讐心が燃え上がった。私を、そして私の家族を裏切った彼に、必ず報いを受けさせると決意した。
王宮を後にした私は、母のもとへ戻った。母は私の決意を聞き、冷静に頷いた。

「アナスタシア、あなたの気持ちはよくわかる。彼に復讐するためには、まず彼の弱点を探り出さねばならない。」

母の助言に従い、私はジュリアンの動向を監視し始めた。彼の行動を調べ、彼の秘密を暴くための情報を集める日々が続いた。

数ヶ月後、私はついにジュリアンの隠された秘密を見つけ出した。彼が新たに婚約したのは、隣国の王女であり、その婚約は純粋な愛情ではなく、政治的な取引だったのだ。ジュリアンの真の目的は、自らの地位と権力を強固にすることにあった。

「これで彼を追い詰める材料が揃ったわ。」

私は母にその情報を伝え、彼の陰謀を暴露する計画を立て始めた。

王宮に再び足を踏み入れた私は、かつての私とは異なる。私は冷静で、強く、復讐心に燃える一人の女性となっていた。

「ジュリアン、あなたに話がある。」

彼は私の言葉に驚きの表情を見せたが、すぐに平静を装った。

「アナスタシア、何をしに来たのか？」

「あなたの終わりを告げるためよ。」

私はジュリアンの陰謀を暴露する証拠を王宮の前で公開し、その真実を明らかにした。彼の顔が青ざめ、王宮の人々がざわめく中、私は勝利の笑みを浮かべた。

ジュリアンはその陰謀が明らかになったことで、王宮から追放され、名誉も地位も失った。私は彼に対する復讐を果たし、ラ・ヴァレンヌ家の名誉を取り戻した。

「これで、あなたの時代は終わりよ。」

私の中に残るのは、冷たい決意と、新たな未来への希望だけだった。