不良先輩の片思い

久我真白

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不良先輩の片思い②

不良先輩の片思い

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「ちっ。おい、降りろよ。」
「ごめんなさい!悪気はなくて!ちょっとフラフラして倒れこんだ先にあなたが居たんです!すみませんでした!」
最悪だ。
今日で2回も八神先輩に迷惑を…。
「それじゃ…」
「待て。」
「え…?」
「お前、階段から落ちてきたやつか?」
バレた…!
「えっと…あの、悪気はないんです!」
「腕と足。」
「え?」
「怪我したのか?」
「あ…はい。」
「落ちたときだろ。何で言わなかった?」
「先輩は、被害者なのに私が怪我したって言うと先輩が悪いみたいになっちゃうから…。」
「意味分かんねぇ…。お人好しすぎるだろ。」
「…?」
「はぁ。保健室、行くのか?」
「あ、はい。」
「行くぞ。早く来い。」
「え?何で先輩も?」
「そんなに、怪我してフラフラなやつを放っておけると思うか?」
「あ…。すみません。」
「別にいい。早く来いよ。」
「はい…。   痛っ。」
「…はぁ。仕方ないな。」
それから、10秒もしないうちに。
「嘘!?お、降ろしてください!」
「おい、バカ!暴れんなよ!」
「だ、だって、先輩が…お、お姫様抱っこなんてするから…。」
「お前がフラフラするからだろ。」
「…。」
思ってたより、優しい。
いい人だなぁ。
「着いた。…高嶺居ねぇし。」
先生を呼び捨て…。
やっぱり、ちょっとひどいかも…。
「そこ、座れ。」
「あ…はい。」
「腕。」
「…。」
「足。」
「…。」
「終わり。」
「…綺麗。上手なんですね。」
「…ああ。」
「ありがとうございました。」
「帰りは?」
「え?」
「歩いて行けんの?」
「はい!手当てのおかげで。」
「ん。じゃ、もう怪我すんなよ。」
「…はい!」
優しい人だったなぁ。
やっぱ、怖いっていうのは噂だけかな…?
手先も器用だし。
あ…チャイムなった。
丁度、終わったんだ。
早く、教室行かないと!
「萌歌ちゃん。大丈夫?」
「うん!ありがとね!四宮くん。」
「うん…。でも、ごめん。今日、先生居なかったでしょ?」
「あ、うん。でも、先輩がしてくれたの。器用だよね!」
「…そっか。良かったね。」
「うん!」
このときの私は、あんなことが起こるなんて思ってもいなかった。
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