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トラウマ
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「で、何そんなに落ち込んでんだ?」
気怠げに聞いてきた委員長さんに目を向ければ、じっとこちらを見ていた。
顔に早く帰りたいって書いてある。…俺なんて放っておけばいいのに、お人好しだなぁ。
「…落ち込んでは、ない、ですけど…」
「けど?」
「……最近、悪夢ばかりで、眠れなくて」
眠れない事だけが理由ではないけれど、嘘ではない。
毎朝鏡に映る自分の顔を見て、酷い顔だなぁと思う回数が増えた。
クマはどんどん濃くなっていくし、ベルトの穴でさえ足りなくなりそうなぐらいになってしまったし。
あぁ、面倒臭い自分がいやになる。このまま消えてしまえたら、どんなに楽なんだろう。
そんな暗い己が出てきて、周りから見たら確かに落ち込んでいるように見えるのかもしれない。
「…それ、他の奴らは知ってんのか?」
「うーん、知らないと思います。クマの心配はすごくしてますけど、言ってないから」
「あー確かに真っ黒だぜ、ここ」
ここ、と言って俺の目の下を撫でるその手が案外優しくて、少しくすぐったい。
少しだけ笑って空を見上げる。
星がキラキラしてて、綺麗だなぁ…。
「…まあ、でも、人間案外どうとでもなるから、俺は大丈夫です」
「…」
「じゃあ、俺そろそろ戻りますね。付き合わせてしまって、ごめんなさい。それじゃあ」
ペコリと頭を下げて去ろうとすれば腕を掴まれて、前に進めなくなってしまった。
首を傾げてどうしました?と委員長さんに尋ねても答えは返ってこない。
…振り解くのもなぁ。
困ったなぁと掴まれた腕を見ながら委員長さんの行動を待っていると「俺は、」と話し出す。
「俺は、風紀委員長だ」
「んぇ?あ、はい?知ってます、よ?」
突然どうしたんだろう?この間自己紹介したばっかりだし、忘れてなんかないのにな。
「生徒が困っていたら、助けるのが仕事だ」
先程までの気怠げな雰囲気ではなく、真面目な、力強い目を俺に向けてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「お前も、そうだ。困っているなら、助けを求めろ」
「た、助けなんて…そんな、」
「…お前の周りの奴らは、お前が助けを求めるのを待ってるんじゃないか?」
その言葉に俺はギクリと体を強張らせた。
「…俺は、大丈夫です」
「だから…」
「大丈夫じゃなきゃ、いけないんです」
だから、もう、いいんです。そう言って力の弱まった腕をそっと離して委員長の元から離れる。
俺は、つらくなんかない。そうだ。そうなんだ。
俺なんか、俺なんかがつらいわけないじゃないか。
つらいなんて言ったって、迷惑をかけるだけで助けなんてこなかった。
それならいっそ、自分でため込んでしまった方がいいじゃないか。
助けなんて、必要ないんだから。
***
ふとしたときにブラックになるんですね。
そういえば先日キャラ紹介を中原京と安崎颯分と群青碧分を足しました。
忘れてました。読んでも読まなくても支障はないです。笑
気怠げに聞いてきた委員長さんに目を向ければ、じっとこちらを見ていた。
顔に早く帰りたいって書いてある。…俺なんて放っておけばいいのに、お人好しだなぁ。
「…落ち込んでは、ない、ですけど…」
「けど?」
「……最近、悪夢ばかりで、眠れなくて」
眠れない事だけが理由ではないけれど、嘘ではない。
毎朝鏡に映る自分の顔を見て、酷い顔だなぁと思う回数が増えた。
クマはどんどん濃くなっていくし、ベルトの穴でさえ足りなくなりそうなぐらいになってしまったし。
あぁ、面倒臭い自分がいやになる。このまま消えてしまえたら、どんなに楽なんだろう。
そんな暗い己が出てきて、周りから見たら確かに落ち込んでいるように見えるのかもしれない。
「…それ、他の奴らは知ってんのか?」
「うーん、知らないと思います。クマの心配はすごくしてますけど、言ってないから」
「あー確かに真っ黒だぜ、ここ」
ここ、と言って俺の目の下を撫でるその手が案外優しくて、少しくすぐったい。
少しだけ笑って空を見上げる。
星がキラキラしてて、綺麗だなぁ…。
「…まあ、でも、人間案外どうとでもなるから、俺は大丈夫です」
「…」
「じゃあ、俺そろそろ戻りますね。付き合わせてしまって、ごめんなさい。それじゃあ」
ペコリと頭を下げて去ろうとすれば腕を掴まれて、前に進めなくなってしまった。
首を傾げてどうしました?と委員長さんに尋ねても答えは返ってこない。
…振り解くのもなぁ。
困ったなぁと掴まれた腕を見ながら委員長さんの行動を待っていると「俺は、」と話し出す。
「俺は、風紀委員長だ」
「んぇ?あ、はい?知ってます、よ?」
突然どうしたんだろう?この間自己紹介したばっかりだし、忘れてなんかないのにな。
「生徒が困っていたら、助けるのが仕事だ」
先程までの気怠げな雰囲気ではなく、真面目な、力強い目を俺に向けてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「お前も、そうだ。困っているなら、助けを求めろ」
「た、助けなんて…そんな、」
「…お前の周りの奴らは、お前が助けを求めるのを待ってるんじゃないか?」
その言葉に俺はギクリと体を強張らせた。
「…俺は、大丈夫です」
「だから…」
「大丈夫じゃなきゃ、いけないんです」
だから、もう、いいんです。そう言って力の弱まった腕をそっと離して委員長の元から離れる。
俺は、つらくなんかない。そうだ。そうなんだ。
俺なんか、俺なんかがつらいわけないじゃないか。
つらいなんて言ったって、迷惑をかけるだけで助けなんてこなかった。
それならいっそ、自分でため込んでしまった方がいいじゃないか。
助けなんて、必要ないんだから。
***
ふとしたときにブラックになるんですね。
そういえば先日キャラ紹介を中原京と安崎颯分と群青碧分を足しました。
忘れてました。読んでも読まなくても支障はないです。笑
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