僕は平凡に生きたい

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体育祭

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怒ってないの?って…。

「…怒ってるよ。」

素っ気なく返すと「そっか…そうだよな。ごめん。」としょぼんとされた。
うう、ないはずの耳が見えてくる…じゃなくて!

「俺が怒ってるのは、何も聞かずに自己完結して終わらせようとしたことなの!」

「…え?」

「…俺、嫌じゃないって言ったのに。嘘だろって決めつけて…。」

いや、だからといって嬉しかったわけでもないんだけどさぁ…それは言わないけど。今は言うべきじゃない気がする。

「でも…。」

「でもも何もなーい!とにかく!俺がいいって言ってるんだからもう気にしちゃだめ!いや少しは気にして欲しいけど!とりあえず今は何も考えませーん!」

勢いで俺が言うと豆鉄砲を食らったような顔をする颯くん。それも一瞬ですぐに破顔した。
うんうん、颯くんは笑顔が一番だよ。

「あ、でもやっぱりちょーっと罰を与えちゃおうかなぁ。」

「罰?」

「うん。…これから体育祭まで俺の体力アップ運動に付き合ってね!」

「…はは、それは罰なんかじゃないよ…喜んで付き合うぜ。」

「やったー!ありがとう!それじゃあ早速今日からやろ~?」

「おう!」

こうして颯くんと俺の体力アップ運動が始まった。
筋トレもする予定だからムキムキになれるかもしれない…!そう言って目を輝かせた俺を見ながら颯くんが「それは無理だと思う。」と真顔で言ってきたのは許せない。


***
そんなこんなで毎日毎日運動してたら普通に走る分には息は上がらなくなっていた。
最初の頃は慣れない運動に筋肉痛がすごくてすぐに根をあげそうになってたけど今じゃもっともっとって思っちゃう。
うーん走るって気持ちいいんだね。いつも息が上がってそれどころじゃなかったし。

…ムキムキになれたのかって?…聞かないでほしい。
なんであんなに頑張ったのに筋肉つかないのさぁ!一緒にやってた颯くんの方は筋肉がついてたのに!
一度颯くんに言ったら「筋肉つきにくい人もいるんだぜ。佳乃、諦めたほうがいい。」と告げられた。
…うぅ…ひどい。

夜ご飯も時々みんなで食べたりして前よりももっと仲良くなれた気がする。

そんな毎日を過ごして気づけば明日は体育祭だった。
あっという間だったなぁ。もうそんなに経っちゃったのかぁ。

そういえば、体育祭終わった後は講堂に集まるんだって。何かあるのかな?
みんな疲れてそうだし早く解散してほしいなぁ…。俺が帰りたいだけだけど…。

ぐでーっとリビングのソファでくつろいでいると、最初にこの部屋で会ったきりの千蘿くんがひょこっと顔をのぞいてきた。
びくっと体を思わず揺らすとクスリと静かに笑われた。は、恥ずかしい…。

「佳乃、久しぶりだね。」

「千蘿くん!…本当に久しぶりだね…。」

「ふふ、寂しかった?…なんだかいい匂いがするね。」

「あ、多分さっき作ったご飯…。」

「へぇ、佳乃が作ったの?」

「よかったら食べる?」

首を傾げて言うと少し驚いたように俺を見てから小さく笑みを浮かべて「佳乃が良ければ食べたいな。」と言った。

よし、と勢いをつけて立ち上がるとくらりと立ちくらみがして倒れそうになる。
すぐ千蘿くんが支えてくれたから倒れなかったけど、体力つけても貧弱な自分が恨めしい。

「ご、ごめんね。ありがとう。」

「いや、いいけど。大丈夫なの?」

「うん。毎回こうだからもう慣れた。」

苦笑しながら伝えそのままキッチンへと行く。明日用に少し多めに作ってたからよかった。
そういえば明日の体育祭に千蘿くんは出るのだろうか?
どのクラスにいるのかも知らないし、すれ違ったこともないからなぁ。

ささっと準備をしてどうぞと千蘿くんの前に出す。
一口食べて美味しいと微笑んでくれる千蘿くんによかったと返しつつ「明日の体育祭は何か出るの?」と聞いてみた。

「明日?あぁ、体育祭だっけ?…俺は出ないよ。」

「そうなの?そっかぁ…ちょっと楽しみだったんだけどな…。」

「…どうして?」

「あんまり会うこともないから気になって。」

「…ふーん…ま、明日頑張ってよ。」

「うん…。」

「ごちそうさま。」と完食したお皿を持ってキッチンに行く千蘿くん。
俺がやるよ!と言うけどいいよ。とすぐお皿を洗う音が聞こえてきたのでそのままお任せすることにした。
会うの2回目だけど全然そんな感じしないなぁ。
最初は急に冷たくなって怖かったけど、今日はすごくフレンドリーだ。

明日いないのは寂しいけど、部屋では会えるよね。

明日もがんばろーっと!

***
早く終わらせたいその気持ちしかないです。
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