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「。」(死ネタ表現有)
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最初の出会いは、貴方が僕のいるレジにきて小銭をばらまいてしまった時。
慌てて一緒に拾って、貴方が顔を上げて笑顔でお礼を言ってくれたその顔に僕は恋をした。
仕事場が近いのかよく僕の働いているカフェに来てくれて、お互い最初は「あの時の…。」だったけど段々会話をするようになって。
共通の趣味があってそこから連絡先を交換して、遊びにも出かけるようになって。
何度も、何度も貴方に恋をした。
けれど貴方には決して悟られないよう、気付かれないように仲の良い友人で終われるように。
絶対に伝えられない想いを吐き出せないまま、日々を過ごしていた。
そんなある日貴方が照れ臭そうに僕に告白をしてくれたんだ。
「いつも優しい笑顔を見せてくれる君が好きだ。俺と付き合ってほしい。」
って。
僕は本当に嬉しくて、嬉しくて。
思わず泣いてしまった僕を見て慌てる貴方が面白くて、泣きながらふふっと笑ってしまったのを今でも思い出してしまう。
たくさん、色んなところに行って、色んなことを話して…同棲も始めて。
慣れない事もたくさんあったけど、貴方とならどんなことでも乗り越えていける気がした。
3年目の記念日に貴方は突然、畏まって真剣な顔をして僕に指輪を差し出しながら
「…俺の将来や未来を考えた時。君がいつも隣にいてくれる。そんな未来しか考えられなかった。愛してる。結婚して下さい。」
とプロポーズをしてくれた。
また僕は涙を流しながら「はい!」と貴方に抱きついて指輪をはめてもらった。
何回も指輪を上にかざしては眺め、笑みをこぼす。
幸せだって本当に思った。
「…あっという間、だったねぇ。」
僕が、貴方の年齢を越してから。
「…癌が見つかった。」
「え…?」
「もう、手術の意味もないぐらいに進んでいるらしい。」
「…うそ、嘘だよね…?」
「…すまない。」
泣き崩れる僕を貴方は静かに涙を流しながら抱きしめてくれた。
体調が悪そうな貴方に気付いて、病院に行ってもらって最初はただの風邪だったと言っていたのに。
それからすぐに貴方は入院して、治療が始まった。
治療といっても、治すものではなく延命のための治療が。
薬の副作用で嘔吐や髪の毛が抜けていった。
それでも笑う貴方に、僕が泣いてはいけないと思って僕も笑っていた。
だけどやっぱりつらくて、貴方のいない家で泣いていた。
どうして、貴方なんですか?
貴方を苦しめるものが全部僕にうつったらいいのに。
何度考えても思っても現実は僕を置いていく。
「りんごが、食べたいな。」
酸素マスク越しに言いづらそうにだったけど、貴方がそう言ったから「すぐに買ってくるから、待っててね!」と走って買いに出掛けた。
貴方の願いだから、叶えたくて。
急いでりんごを買って貴方の喜ぶ顔が見たくて、どんな顔をするのかなってわくわくしながら病室に戻った。
もしかして貴方は分かっていたのかな。
自分の最期が。
慌ただしい病室。
その部屋は、貴方がいた部屋。
呼ばれている名前は、貴方の名前。
ドサッとりんごの入った袋が手から滑り落ちて。
スローモーションのように見える光景にただ呆然と立っていることしか出来なくて。
気付いたら貴方は眠ったように目を閉じていて、二度とその目が開くことはなかった。
「…ねぇ、秋人さん…りんご…買って、きた、んだよ…?起きて一緒に食べよ…?…ッ…あき、ひと…さん…ッ!」
貴方が食べたいと言ったりんご。
とっても美味しそうなものを選んだんだよ。
貴方に喜んで欲しくて…1つじゃ足りないかなって、3つも買ってきたんだよ…。
僕だけじゃ、食べきれないよ…。
「…だいすきだよ、ずっと…今までも…これからも…、…。」
何度言っても返事が返ってくることはない。
そして、貴方の命日にはりんごを持っていく。
そっちで食べてくれたらいいなぁ。たくさんあるからおすそ分けでもしてね。
「秋人さん、あのね…——。」
揺れた花に貴方を見た気がした。
慌てて一緒に拾って、貴方が顔を上げて笑顔でお礼を言ってくれたその顔に僕は恋をした。
仕事場が近いのかよく僕の働いているカフェに来てくれて、お互い最初は「あの時の…。」だったけど段々会話をするようになって。
共通の趣味があってそこから連絡先を交換して、遊びにも出かけるようになって。
何度も、何度も貴方に恋をした。
けれど貴方には決して悟られないよう、気付かれないように仲の良い友人で終われるように。
絶対に伝えられない想いを吐き出せないまま、日々を過ごしていた。
そんなある日貴方が照れ臭そうに僕に告白をしてくれたんだ。
「いつも優しい笑顔を見せてくれる君が好きだ。俺と付き合ってほしい。」
って。
僕は本当に嬉しくて、嬉しくて。
思わず泣いてしまった僕を見て慌てる貴方が面白くて、泣きながらふふっと笑ってしまったのを今でも思い出してしまう。
たくさん、色んなところに行って、色んなことを話して…同棲も始めて。
慣れない事もたくさんあったけど、貴方とならどんなことでも乗り越えていける気がした。
3年目の記念日に貴方は突然、畏まって真剣な顔をして僕に指輪を差し出しながら
「…俺の将来や未来を考えた時。君がいつも隣にいてくれる。そんな未来しか考えられなかった。愛してる。結婚して下さい。」
とプロポーズをしてくれた。
また僕は涙を流しながら「はい!」と貴方に抱きついて指輪をはめてもらった。
何回も指輪を上にかざしては眺め、笑みをこぼす。
幸せだって本当に思った。
「…あっという間、だったねぇ。」
僕が、貴方の年齢を越してから。
「…癌が見つかった。」
「え…?」
「もう、手術の意味もないぐらいに進んでいるらしい。」
「…うそ、嘘だよね…?」
「…すまない。」
泣き崩れる僕を貴方は静かに涙を流しながら抱きしめてくれた。
体調が悪そうな貴方に気付いて、病院に行ってもらって最初はただの風邪だったと言っていたのに。
それからすぐに貴方は入院して、治療が始まった。
治療といっても、治すものではなく延命のための治療が。
薬の副作用で嘔吐や髪の毛が抜けていった。
それでも笑う貴方に、僕が泣いてはいけないと思って僕も笑っていた。
だけどやっぱりつらくて、貴方のいない家で泣いていた。
どうして、貴方なんですか?
貴方を苦しめるものが全部僕にうつったらいいのに。
何度考えても思っても現実は僕を置いていく。
「りんごが、食べたいな。」
酸素マスク越しに言いづらそうにだったけど、貴方がそう言ったから「すぐに買ってくるから、待っててね!」と走って買いに出掛けた。
貴方の願いだから、叶えたくて。
急いでりんごを買って貴方の喜ぶ顔が見たくて、どんな顔をするのかなってわくわくしながら病室に戻った。
もしかして貴方は分かっていたのかな。
自分の最期が。
慌ただしい病室。
その部屋は、貴方がいた部屋。
呼ばれている名前は、貴方の名前。
ドサッとりんごの入った袋が手から滑り落ちて。
スローモーションのように見える光景にただ呆然と立っていることしか出来なくて。
気付いたら貴方は眠ったように目を閉じていて、二度とその目が開くことはなかった。
「…ねぇ、秋人さん…りんご…買って、きた、んだよ…?起きて一緒に食べよ…?…ッ…あき、ひと…さん…ッ!」
貴方が食べたいと言ったりんご。
とっても美味しそうなものを選んだんだよ。
貴方に喜んで欲しくて…1つじゃ足りないかなって、3つも買ってきたんだよ…。
僕だけじゃ、食べきれないよ…。
「…だいすきだよ、ずっと…今までも…これからも…、…。」
何度言っても返事が返ってくることはない。
そして、貴方の命日にはりんごを持っていく。
そっちで食べてくれたらいいなぁ。たくさんあるからおすそ分けでもしてね。
「秋人さん、あのね…——。」
揺れた花に貴方を見た気がした。
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