続かない話(1p完結詰め合わせ)

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君の中に、僕はいない

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ああ、よかった。

咄嗟にそう思ってしまった。
神様、ありがとうだなんて。そう、思ってしまったんだ。

貴方の中から、僕のことが消えて、よかった。
これで貴方は普通の道を歩んでいける。
女性と、恋人になって、結婚して…子供が出来て。

僕と一緒にいても何も生まれない。
貴方はそれでもいいと言っていたけれど。
きっと心のどこかでは不満、不安があったんだろう。

だから、僕のことを忘れたんだよね?
はは、もしかしたら覚えてるのかもしれないけれど。

それでよかったんだと思う。
僕は普通じゃないから。ずっとそう言われて、周りに誰もいなくなって。

「笑ってれば、いい事があるって…貴方が言ったのに。」

何があっても笑っていたのに、いい事なんて1つもなかった。
最後には貴方さえ失ってしまった。
僕の、せい。

僕が貴方を縛ってしまったせい。

僕は貴方の前から消えよう。それがいいんだ。
万が一僕のことを思い出してしまっても、連絡なんてしてこないだろうし。
してきても、出ることはない。

すごく、すごく好きで、大切にしたかった。
何にかえても、守り抜きたかった。

それでも、僕じゃダメだった。

「…星が、たくさんだ…。」

こんな事もなければ、気付かなかったかもしれない。
貴方と歩いたこの道から見上げた星空が、こんなにも綺麗だなんて。
とても美しくて、涙が止まらないや。

「ぅっ…ぅぁ……しゅ、んや…しゃんやさん…ッ…。」

初めて、ずっと一緒にいれると思った。
初めて、こんなにも人を愛することが出来た。

初めて、つらくて死んでしまうと思った。

「ごめ、んなさいッ…僕は…僕は耐えられない…。」

僕のことを忘れてしまった貴方を見ることが。

「手をッ…とることも…出来なかった…ッ…。」

怪訝そうに見る貴方の視線に体が固まってしまった。


いっそのこと、僕と貴方のことを忘れられたら良かったのに。



***
大切な人の記憶から自分のことだけが抜けてしまった。
いつ思い出せるのか、むしろ思い出せるのか分からない。
それなら貴方は普通の人生を歩んで、幸せになってほしい。
だから、僕は逃げ出した。

そんな話です。
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