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さよなら、運命の人(あんまり濃くは出ませんがオメガバースの話です。そして死ネタ。)
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「やっぱりね」
そう呟いたのは、目の前から愛して、愛されたはずの男が所謂”運命の番”と消えた時だった。
所詮、βはΩに勝てない。そんな事は分かっていたはずなのに。
もしかしたら、なんて思ってしまったのが間違いだった。
「…あっけない終わりだなぁ…。」
はは、と笑ったはずなのに出てくるのは涙だけ。
こんなはずじゃなかったのに。だから俺は嫌だと言ったのに。
いつかなくなってしまうのなら、いらない。ずっと拒めばよかった。
絶対にお前の元に戻るから。
そう言って去って行った、愛しい男。
そんなことあるわけないのに。
きっとお前はそいつと一生を添い遂げるんだろう。
俺は一人で生きていくんだろう。
この性にうまれてから、αやΩと恋などしないと決めていたのに。
相手にとっては遊びでも、俺からしてみたら何もかもが本気だった。
「本当に、愛していたんだよ。お前がどう思っていようと。」
これから、どうしたらいい。
俺の部屋に残るお前の痕跡は、俺が消さなきゃいけないのか。
消えてしまいたいのに。お前は俺の前からいなくなっても俺を苦しめるのか。
「…もう、嫌だ…。」
涙は止まることなく流れ続ける。
それを拭わず無理矢理足を動かす。
行き先なんて、居場所なんて、ない。
あいつの元に行くと決めた時、全てを捨てた。
そうすれば……。
「運命になんて、逆らえないのは分かっていたのに。どうして俺はお前を望んでしまったんだ。」
誰からも返ってこない疑問を闇に投げかける。
βは所詮、運命の代わり。いや、代わりにさえなれなかった。
俺じゃ、駄目だった。
きっと、俺だから駄目だったんだ。そうか、そうだったのか。
誇れるものも、得意なものさえ、何もない。
こんな平凡な俺じゃ、仕方ない。
ふと気がつくと、ビルの屋上に立っていた。
「…ここ、」
前に2人で寝転がって星を眺めた場所だ。
キラキラとした星明かりに照らされて、ずっとこんな日々が続けばいいと思っていた。
多分、それは俺だけ。
手を伸ばせば届く距離にいたお前はもういない。
俺の頭を優しく撫でる、大好きな手は今頃知らない人間を抱きしめているんだろうな。
ぎり、と胸が酷く痛む。
あぁ、タイムリミットかな、なんて。
この痛みはお前が去ったからだけではない。
周りにも、お前にさえ黙っていたけれど。
俺はもう直ぐこの生を終える。
生まれた時から決まっていたことだ。
は、は、と呼吸も乱れ始めその場にうずくまる。
もう、いいか。
そう思って意識を手放した。
**
夢を見た。
幸せだった、あの頃の。
優しく頭を撫でてくれるお前がいた頃の。
優しく、それでも強く抱きしめてくれるお前がいた頃の。
愛しているよと囁く、お前がいた。
その顔を見て、俺は言った。
「うそつき」
「さよなら、 」
そう呟いたのは、目の前から愛して、愛されたはずの男が所謂”運命の番”と消えた時だった。
所詮、βはΩに勝てない。そんな事は分かっていたはずなのに。
もしかしたら、なんて思ってしまったのが間違いだった。
「…あっけない終わりだなぁ…。」
はは、と笑ったはずなのに出てくるのは涙だけ。
こんなはずじゃなかったのに。だから俺は嫌だと言ったのに。
いつかなくなってしまうのなら、いらない。ずっと拒めばよかった。
絶対にお前の元に戻るから。
そう言って去って行った、愛しい男。
そんなことあるわけないのに。
きっとお前はそいつと一生を添い遂げるんだろう。
俺は一人で生きていくんだろう。
この性にうまれてから、αやΩと恋などしないと決めていたのに。
相手にとっては遊びでも、俺からしてみたら何もかもが本気だった。
「本当に、愛していたんだよ。お前がどう思っていようと。」
これから、どうしたらいい。
俺の部屋に残るお前の痕跡は、俺が消さなきゃいけないのか。
消えてしまいたいのに。お前は俺の前からいなくなっても俺を苦しめるのか。
「…もう、嫌だ…。」
涙は止まることなく流れ続ける。
それを拭わず無理矢理足を動かす。
行き先なんて、居場所なんて、ない。
あいつの元に行くと決めた時、全てを捨てた。
そうすれば……。
「運命になんて、逆らえないのは分かっていたのに。どうして俺はお前を望んでしまったんだ。」
誰からも返ってこない疑問を闇に投げかける。
βは所詮、運命の代わり。いや、代わりにさえなれなかった。
俺じゃ、駄目だった。
きっと、俺だから駄目だったんだ。そうか、そうだったのか。
誇れるものも、得意なものさえ、何もない。
こんな平凡な俺じゃ、仕方ない。
ふと気がつくと、ビルの屋上に立っていた。
「…ここ、」
前に2人で寝転がって星を眺めた場所だ。
キラキラとした星明かりに照らされて、ずっとこんな日々が続けばいいと思っていた。
多分、それは俺だけ。
手を伸ばせば届く距離にいたお前はもういない。
俺の頭を優しく撫でる、大好きな手は今頃知らない人間を抱きしめているんだろうな。
ぎり、と胸が酷く痛む。
あぁ、タイムリミットかな、なんて。
この痛みはお前が去ったからだけではない。
周りにも、お前にさえ黙っていたけれど。
俺はもう直ぐこの生を終える。
生まれた時から決まっていたことだ。
は、は、と呼吸も乱れ始めその場にうずくまる。
もう、いいか。
そう思って意識を手放した。
**
夢を見た。
幸せだった、あの頃の。
優しく頭を撫でてくれるお前がいた頃の。
優しく、それでも強く抱きしめてくれるお前がいた頃の。
愛しているよと囁く、お前がいた。
その顔を見て、俺は言った。
「うそつき」
「さよなら、 」
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