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ずっと
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ずっと、ずっと好きだった。
きっとこれからも。
なんて健気に思ってたのはいつまでだったっけ。
もうそんな気持ちなんて忘れてしまって、今はそんな事考えられない。
あの人だって俺の事なんて忘れてしまっただろうし。
…俺も忘れたものだと思っていたけど、時々思い出してしまう。
好きだからじゃない。あの日の事をずっと引きずったままだから。
…二度と思い出したくないと思っているのに。
あの日から、俺だけなにも変わらないまま。
そう思ってるのは俺だけかもしれないけど。
ぼぅっとそんなことをつらつら考えていると、もう二度と聞くことはないだろうと思っていた声が聞こえた。
「……ま、なと…?」
目を見開き俺見つめる男。
信じられないとでもいうように口をあけている。
「…は、久しぶりとでも言えばいい?」
「どこに…いたんだ!?ずっと探してたんだぞ!?」
「だからなに?俺は二度と貴方に会いたくなかったよ」
探してたなんでどの口が言ってるんだろう。
俺がこうなってしまったのは、貴方のせいなのに。
冷めた目で相手を見つめる俺に、信じられないことを口にした。
「あの日、帰ったらいなくなってて…それから毎日探してた」
「…毎日?」
「ああ。連絡を取ることすら出来なくて、無事なのかも分からなくて毎日毎日、元気でいてくれるように祈ってたよ」
「着拒してたから…それに、俺は貴方から逃げた。ただそれだけだよ」
「なんで!なんで逃げたんだ!」
淡々と語る俺に対して、悲痛な叫びをあげたのは男だった。
「理由言わなきゃ分からないわけ…?」
「…何度も考えたけど。全然分からなくて、でもきっと原因は俺にあるんだろうと思って…」
長い沈黙の後、俺は呟いた。
「………あの日、貴方が……俺の事を、いらないと言っていたから…消えなきゃ…と思って…」
俺の痕跡を少しも残さないように、貴方が俺を早く忘れるように。
そんな気持ちを思い出してしまって勝手に涙が溢れてくる。
だめだ、泣くな、泣くな。
そう思えば思うほど涙は止まらなくて。
必死に涙を拭う俺を強く男は抱きしめた。
離して!と暴れる俺に、ごめんと何度も言いながらも離さない男に段々と冷静になっていく。
そして、そこで気付く。…男が震えていることに。
「違う…違うんだよ……」
「なにが違うって言うの!?俺と貴方が付き合っていたこと!?だったらもう、俺は貴方を好きじゃないから!もういいでしょう!?」
「違う!!」
突然大声で叫ばれて、ビクッと肩をすくめる俺に相手はハッとしたように再度、違うんだ…と俺を優しく抱き締めた。
「言い訳になってしまうけど、聞いてほしい」
「…」
「…お前と付き合っていた時、俺はすごくお前に甘えていて…それに気づきもせず俺は…」
そこで言葉を区切ると俺を離した。
あんなに離れたいと思っていたのに、寂しく感じてしまう。
あの日のことを今更聞かされても、俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「…お前がいなくなってしまった時、俺は自分の浅はかさに吐き気がしたよ」
「あんなに大切にしようと思っていた子を、自分で傷つけて手を離してしまった」
「今更、遅いかもしれない…また付き合ってくれなんて言わない」
期待などしていなかったはずなのに、そう言われた時心に何か突き刺さった気がした。
「…そう。もう俺には関係ないから」
「でも!…俺はまだお前が好きなんだ」
思わずバッと相手を見ると、真剣な目で俺を見つめている優しい目とぶつかる。
「だから…」
「だから、俺と1から始めてくれませんか?」
「…1、から…?」
「うん。きっとお前は俺の事を信じられないだろうから」
まさにその通りで、ギクリと体がこわばる。
「構えないでくれ。これは俺への罰だから…嫌だったら断ってくれていい」
「そん、なの…」
信じられない、いやだと伝えればいいだけなのに口は動いてくれない。
涙だけが止まる事なく流れていく。
「…もう泣かないでくれ…どうしようもない気持ちでいっぱいになる。…どうしたら泣き止んでくれる…?」
優しく涙を指で拭いながら、顔を覗き込む。
「…俺は…貴方にとって…必要なんですか…?」
「必要だよ。むしろ、お前がいないと俺は生きていけない」
「…それだけで、十分です…」
大好きだった。だからこそ、貴方のことを考えて貴方の前から消えた。
その気持ちなんて、とっくの昔になくなったと思っていたのに。
「貴方が、好きです…でもッ…怖くて…!」
「ああ…」
「だけどッ……貴方が必要だと言ってくれるのなら、俺は貴方の側に…いたい、です…」
そう答えたと同時にきつく、きつく存在を確かめるように抱きしめられた。
貴方のそばに、いる事が出来るのなら。
俺はいつまでも笑える気がする。
きっとこれからも。
なんて健気に思ってたのはいつまでだったっけ。
もうそんな気持ちなんて忘れてしまって、今はそんな事考えられない。
あの人だって俺の事なんて忘れてしまっただろうし。
…俺も忘れたものだと思っていたけど、時々思い出してしまう。
好きだからじゃない。あの日の事をずっと引きずったままだから。
…二度と思い出したくないと思っているのに。
あの日から、俺だけなにも変わらないまま。
そう思ってるのは俺だけかもしれないけど。
ぼぅっとそんなことをつらつら考えていると、もう二度と聞くことはないだろうと思っていた声が聞こえた。
「……ま、なと…?」
目を見開き俺見つめる男。
信じられないとでもいうように口をあけている。
「…は、久しぶりとでも言えばいい?」
「どこに…いたんだ!?ずっと探してたんだぞ!?」
「だからなに?俺は二度と貴方に会いたくなかったよ」
探してたなんでどの口が言ってるんだろう。
俺がこうなってしまったのは、貴方のせいなのに。
冷めた目で相手を見つめる俺に、信じられないことを口にした。
「あの日、帰ったらいなくなってて…それから毎日探してた」
「…毎日?」
「ああ。連絡を取ることすら出来なくて、無事なのかも分からなくて毎日毎日、元気でいてくれるように祈ってたよ」
「着拒してたから…それに、俺は貴方から逃げた。ただそれだけだよ」
「なんで!なんで逃げたんだ!」
淡々と語る俺に対して、悲痛な叫びをあげたのは男だった。
「理由言わなきゃ分からないわけ…?」
「…何度も考えたけど。全然分からなくて、でもきっと原因は俺にあるんだろうと思って…」
長い沈黙の後、俺は呟いた。
「………あの日、貴方が……俺の事を、いらないと言っていたから…消えなきゃ…と思って…」
俺の痕跡を少しも残さないように、貴方が俺を早く忘れるように。
そんな気持ちを思い出してしまって勝手に涙が溢れてくる。
だめだ、泣くな、泣くな。
そう思えば思うほど涙は止まらなくて。
必死に涙を拭う俺を強く男は抱きしめた。
離して!と暴れる俺に、ごめんと何度も言いながらも離さない男に段々と冷静になっていく。
そして、そこで気付く。…男が震えていることに。
「違う…違うんだよ……」
「なにが違うって言うの!?俺と貴方が付き合っていたこと!?だったらもう、俺は貴方を好きじゃないから!もういいでしょう!?」
「違う!!」
突然大声で叫ばれて、ビクッと肩をすくめる俺に相手はハッとしたように再度、違うんだ…と俺を優しく抱き締めた。
「言い訳になってしまうけど、聞いてほしい」
「…」
「…お前と付き合っていた時、俺はすごくお前に甘えていて…それに気づきもせず俺は…」
そこで言葉を区切ると俺を離した。
あんなに離れたいと思っていたのに、寂しく感じてしまう。
あの日のことを今更聞かされても、俺はどうしたらいいのか分からなくなってしまった。
「…お前がいなくなってしまった時、俺は自分の浅はかさに吐き気がしたよ」
「あんなに大切にしようと思っていた子を、自分で傷つけて手を離してしまった」
「今更、遅いかもしれない…また付き合ってくれなんて言わない」
期待などしていなかったはずなのに、そう言われた時心に何か突き刺さった気がした。
「…そう。もう俺には関係ないから」
「でも!…俺はまだお前が好きなんだ」
思わずバッと相手を見ると、真剣な目で俺を見つめている優しい目とぶつかる。
「だから…」
「だから、俺と1から始めてくれませんか?」
「…1、から…?」
「うん。きっとお前は俺の事を信じられないだろうから」
まさにその通りで、ギクリと体がこわばる。
「構えないでくれ。これは俺への罰だから…嫌だったら断ってくれていい」
「そん、なの…」
信じられない、いやだと伝えればいいだけなのに口は動いてくれない。
涙だけが止まる事なく流れていく。
「…もう泣かないでくれ…どうしようもない気持ちでいっぱいになる。…どうしたら泣き止んでくれる…?」
優しく涙を指で拭いながら、顔を覗き込む。
「…俺は…貴方にとって…必要なんですか…?」
「必要だよ。むしろ、お前がいないと俺は生きていけない」
「…それだけで、十分です…」
大好きだった。だからこそ、貴方のことを考えて貴方の前から消えた。
その気持ちなんて、とっくの昔になくなったと思っていたのに。
「貴方が、好きです…でもッ…怖くて…!」
「ああ…」
「だけどッ……貴方が必要だと言ってくれるのなら、俺は貴方の側に…いたい、です…」
そう答えたと同時にきつく、きつく存在を確かめるように抱きしめられた。
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俺はいつまでも笑える気がする。
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