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錯覚
しおりを挟む俺だけを見てほしい、とか。
俺だけを愛してほしい、とか。
そんなこと言うつもりないけど。
…そんなこと言えるはずもなくて。
ふとした時に見せる表情とか、俺を見る目だとか。
錯覚を起こしそうになる。
お前が俺のことを好きなんじゃないかって。
少しぐらい絆されてくれてるんじゃないかって。
なんて都合のいい解釈をしてたんだろう。
お前からの愛なんて、俺が貰えるはずもないのに。
夢だったらよかった。
何度そう思ったことだろう。
数えたらきりがないような、そんな馬鹿みたいな考え。
ただ、お前を好きだなって。それだけ。
俺がお前を好きなら、それだけでいいかなって。
きっとお前からの愛なんて貰えないんだろうから、せめて俺のこの気持ちだけは俺のものにしたくて。
それでも待つだけ時間の無駄って言われてるような気がして。
1人、待ち合わせした場所に佇みながら一つ一つ考える。
どこで間違えたんだろうなぁ。
「…なんであいつがここに来てくれるなんて思ったんだろう」
ポツリポツリと降り出した雨に、はしゃぎながら知らない女と駆けていくあいつを見る。
「少しぐらいぐらついてくれたかと思ったのに」
夢であって欲しかった。…夢だったらさめてほしい。
あいつのいない世界で、目をさましたい。
そして俺はそこで死ぬんだ。
誰からも必要とされない俺なんか、いてもいなくても一緒だから。
お前からあの人を奪ってしまっま俺なんかを、お前が愛するはずもないから。
どうして俺は生きてるんだろう。
死にたい、なぁ。
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