1 / 10
写真
しおりを挟むふと思い立って片付けをしていた時、恋人である公彦の部屋にある棚で写真立てが倒れていることに気付いた。
「何かの拍子に倒れたのか?」
首を傾げながらその写真立てを手に取って俺は言葉を失った。
「……俺は身代わりだったってこと?」
写真には俺そっくりの人があいつの横で幸せそうに笑っていて、あいつもその人を愛しい、とそんな表情で見ているものが写っていた。
頭の中がぐるぐるして脚の力が抜ける。
この人に、俺が似てたから。
俺を通してこの人を見ていた?
俺なんか、本当は愛してなかった…?
そう、そうだよな。
おかしいと思っていたんだ。
俺の気にしすぎだと思っていたけど、やっぱりそうだったんだ。
じゃあ、もう真実を知ってしまった身代わりなんて価値ないじゃん。
「は、はは……ばっかみてぇ……」
ズキズキと痛む胸を無視して、写真立てを戻す。
先程と同じように、ではなくちゃんと写真が見えるように。
この人がもし亡くなっているのなら、こんなの酷いと思った。
亡くなってないとしても大事な写真なら倒さないで欲しい。
別に隠さなくてもいいのにな。
「……ごめんなさい。でも、俺、分かってます。ちゃんと終わらせます」
だから、今日だけは一緒に笑わせて下さい。
写真を暫く眺めて、頭を下げて部屋を出た俺は夕ご飯の支度を始めた。
ガチャっと玄関の扉が開く音がした後いつもと同じ、明るい声が届く。
「ただいま~。おっ今日は肉じゃがか?って、俺の好きなものだらけだな!今日って何かあったか?も、もしかして記念日だったか!?」
「なーに言ってんだよ。ただ公彦の好きなもの作っただけだっつの。風呂も沸いてるけど……どっち先にする?」
「んーゆっくり味わいたいし……急いで風呂に入ってくる!」
ダッシュで風呂場に向かう公彦に「着替え持ってくからー」と声をかけてお皿にラップをかける。
「……はぁ。俺、ちゃんといつも通り出来てたかな。……最後、最後なんだ。泣くなよ」
「は~今日のご飯も美味しかった……。アキラは本当に出来た奥さんだなぁ」
「奥さんって……ばーか」
「……旦那さんに向かってそんな口聞くのはこの口か?」
「ちょっ…んぅ…っぁ……き、みひこっ…ァンッ……おやじくさ……」
冗談めかして言ってきた台詞があまりにも……だったので思わず口に出すと胸を押さえてショックを受けていた。
だからそういうところがおっさんくさいんだよ。
その後ベッドに連れて行かれて散々喘がされた俺はへとへとになっていた。
……俺歩けるかな。
くるん、と横を向いてぐーすか寝ている公彦の顔をまじまじと見つめる。
…すっかり騙されてたな。全然身代わりだなんて思いもしなかった。
変だな、とは思っていたけど。
こいつとの出会いって、今思い返せば変だったな。
35
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
消えたいと願ったら、猫になってました。
15
BL
親友に恋をした。
告げるつもりはなかったのにひょんなことからバレて、玉砕。
消えたい…そう呟いた時どこからか「おっけ〜」と呑気な声が聞こえてきて、え?と思った時には猫になっていた。
…え?
消えたいとは言ったけど猫になりたいなんて言ってません!
「大丈夫、戻る方法はあるから」
「それって?」
「それはーーー」
猫ライフ、満喫します。
こちら息抜きで書いているため、亀更新になります。
するっと終わる(かもしれない)予定です。
気にしないで。邪魔はしないから
村人F
BL
健気な可愛い男の子のお話
,
,
,
,
王道学園であんなことやこんなことが!?
王道転校生がみんなから愛される物語〈ストーリー〉
まぁ僕には関係ないんだけどね。
嫌われて
いじめられて
必要ない存在な僕
会長
すきです。
ごめんなさい
好きでいるだけだから
許してください
お願いします。
アルファポリスで書くのめっちゃ緊張します!!!(え)
うぉぉぉぉぉ!!(このようにテンションくそ高作者が送るシリアスストーリー💞)
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
可愛くない僕は愛されない…はず
おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。
押しが強いスパダリα ✕ 逃げるツンツンデレΩ
ハッピーエンドです!
病んでる受けが好みです。
闇描写大好きです(*´`)
※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております!
また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)
人生二度目の悪役令息は、ヤンデレ義弟に執着されて逃げられない
佐倉海斗
BL
王国を敵に回し、悪役と罵られ、恥を知れと煽られても気にしなかった。死に際は貴族らしく散ってやるつもりだった。――それなのに、最後に義弟の泣き顔を見たのがいけなかったんだろう。まだ、生きてみたいと思ってしまった。
一度、死んだはずだった。
それなのに、四年前に戻っていた。
どうやら、やり直しの機会を与えられたらしい。しかも、二度目の人生を与えられたのは俺だけではないようだ。
※悪役令息(主人公)が受けになります。
※ヤンデレ執着義弟×元悪役義兄(主人公)です。
※主人公に好意を抱く登場人物は複数いますが、固定CPです。それ以外のCPは本編完結後のIFストーリーとして書くかもしれませんが、約束はできません。
BL小説に転生したモブは報われない恋をしている
アキアカネ
BL
“主人公の受けに恋をする当て馬役”
それが俺の好きなひと
あることをきっかけに
かつて読んでいたBL小説の世界に転生したことを知った唯
自分がこの小説のモブキャラであることと同時に
幼馴染で唯の片想いの相手である斗真が
この小説の主人公に恋をしてしまうことを思い出す
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる