さよならの合図は、

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だめだよ、

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「あき…せ、せんせい…なんですか?」

「あ…いや…」

俺の腕を掴んで離そうとしないのに、何も言わない秋良さんに俺は気まずい気持ちを隠せない。
俺たちの関係性を知らない友人は俺が秋良さんに何かしたのかと、きょとんとしながら待っている。

「…俺、用事あるんで。何もないなら離してください」

「っ…よ、用事なら、ある…」

「なんですか?もう、俺行きたいので今話してください」

目を合わせることなく、言えば掴まれた腕に力がこもる。
いや、痛い痛い。

「ここじゃ…ちょっと、」

「は………ごめん、ちょっと行くわ。すぐ戻るから…待っててくんね?」

「おー全然待つぜ!」

「さんきゅ」

ニカッと笑う友人に大型犬だな、と感じつつ俺も笑みを返す。
そしてその笑みを消して秋良さんに向き直って「どこなら話せるんですか?」と面倒臭そうに言った。
そんな俺に息を飲む秋良さんに、これで俺を嫌いになって俺なんか忘れてほしい、と願う。

「…こっち」

そう言って俺の腕を引っ張って人気のない場所へと連れて行く。
…そんなにかしこまった話でもすんのかな。…兄さんの話、とか?

生徒の話し声さえ聞こえない場所へとついた時、パッと腕を離されてちょっとだけ寂しいと思ってしまった。
だめだ。絶対に、だめだ。こんな思い、間違いなんだ。

そして秋良さんが俺に向き直ったかと思うと、勢いよく頭を下げて「本当に、すまなかった」と苦しそうに謝った。

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