さよならの合図は、

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ふたたび、

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そしてそれから何年も過ぎ去って、俺は空虚な毎日を過ごして、それなりの友人関係を築いていたけど親友、なんて呼べるような人間関係はどうしても築けなかった。

高校にはいって、髪なんか染めたりして。
やんちゃな友人と馬鹿騒ぎして過ごしていたそんな時、あの人が教師として目の前に現れた。

「今日から、産休に入る佐藤先生の代わりに入る佐伯秋良先生だー。お前ら迷惑かけんなよー」

「…よろしくお願いします」

ちょっと天然の入った黒髪に、怠そうな目。昔とは、全く違ったその目に俺は少しだけショックを受けた。
…そっか、秋良さん、教師になったのか。

兄さんの夢だった、教師に。

俺も不良を更正させるんだー!なんて熱血マンガを読んでから、ずっと同じ事を言っていた昔のことを思い出して少しだけ笑う。
…少しは、吹っ切れたのかな。

そう思って秋良さんを見ると、視線がバチっとあって固まってしまった。
秋良さんも俺がいることは知らなかったのか、目を見開いて驚いていたけどそれも一瞬ですぐに視線を逸らされてしまった。
…ちょっと悲しいけど、仕方ないよな。……あぁ、でも、俺のこと覚えててくれたんだ。
現金にも嬉しくなってにやにやしていれば、隣に座っていた友人が「何、ニヤついてんの?」と怪訝そうな目で見てきた。

「うるせ」

「てか、あの教師イケメンじゃねー?女子の目、ハートになってんじゃん」

「あー…そうだなぁ」

確かに、女子の目はハートになっている。キャァキャァなんて黄色い声も聞こえるし、すぐ人気になるんだろう。
…やっと、幸せになろうとしているのかな。


だけど、秋良さんは、俺の考えとは逆で、毎日思いつめたような顔をしていてまだ、秋良さんの中には兄さんがいるんだと複雑な気持ちになった。

「…もしかして、」

俺が、いるから?

**
残り、5話です。
勢いで書き上げたものです。
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