僕は君になりたかった

15

文字の大きさ
上 下
2 / 6

しおりを挟む
「…か、翔琉…手、離さないの?」

「んー?なに、俺と手繋ぐの嫌なの?」

「ちがっ…!そういうわけじゃ、ないんだけど…」

「けど?」

ずっと手を離してくれない翔琉に困惑しながらも尋ねれば、何故か手を離すどころか強く握られて…ちょっと痛い。
っていうか、なんでそんなに聞いてくるの?これ、答えなきゃいけないよね…。

「…は、恥ずかしくて…」

「え?」

「て、手なんて滅多に繋がないじゃない…照れちゃうよ…」

「…」

今の僕は顔が真っ赤な自信がある。どうしてこんなこと言わせるのさ。
その顔を隠すように俯けば周りも静かになる。
…あぁ、僕はまた失敗してしまったのかな。
だんだん血の気が引くような感覚に陥る。

そんな時また新たな声がかかった。

「こーら。みんなして都取り囲んで何してんの。怖がってるよ」

あの人の声だ。その声に反応して顔を上げようとしたけど、その後翔琉と話始めたからタイミングを逃してまた俯く。
自己嫌悪に陥っていた僕にはその後の会話なんて入ってこなかった。

「あ、そーすけさん!違うっすよぉ…都が可愛すぎてみんな黙っちゃってんの。うける」

「てめっ…!それバラすなよ!っていうかお前もだろ!?」

「都が可愛いなんて俺は昔から知ってまーす」

「はいはい。そこまでにして、お前は都を離しなさい」

「嫌だね。そーすけさんになんか渡さないっすから」

「なんかってお前ね…」

段々意識がちゃんとしてきて、ぼーっとその会話に耳を立てる。
…仲、良さそうだなぁ。
ちらりと宗佑さんの顔を見れば、呆れていながらも楽しそうな、嬉しそうな顔をしていてやっぱり僕の胸はツキンと音を立てた。
何回見ても慣れないや。…それでも側を離れられない僕って、本当ダメなやつ。

はぁ…と思わずため息を吐けば宗佑さんに「都どうした?やっぱり翔琉は嫌か?」と意味のわからない事を聞かれて首を傾げつつも「翔琉は、僕の憧れ…なので、そんなことはないです、よ?」と答えた。

すると翔琉が嬉しそうに「都の憧れなの、俺!?まじで!?」と見えない尻尾が振られているように喜びの声をあげた。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幸せになりたかった話

幡谷ナツキ
BL
 このまま幸せでいたかった。  このまま幸せになりたかった。  このまま幸せにしたかった。  けれど、まあ、それと全部置いておいて。 「苦労もいつかは笑い話になるかもね」  そんな未来を想像して、一歩踏み出そうじゃないか。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった

たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」 大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。

キミの次に愛してる

Motoki
BL
社会人×高校生。 たった1人の家族である姉の由美を亡くした浩次は、姉の結婚相手、裕文と同居を続けている。 裕文の世話になり続ける事に遠慮する浩次は、大学受験を諦めて就職しようとするが……。 姉への愛と義兄への想いに悩む、ちょっぴり切ないほのぼのBL。

君はさみしがり屋の動物

たまむし
BL
「ウォンバットは甘えるの大好き撫で撫で大好き撫でてもらえないと寿命が縮んじゃう」という情報を目にして、ポメガバースならぬウォンバットバースがあったら可愛いなと思って勢いで書きました。受けちゃんに冷たくされてなんかデカくてノソノソした動物になっちゃう攻めくんです。

処理中です...