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魔法学園
37歩
しおりを挟む「リシャール君」
「デュラン先生!あの、あの日はご迷惑をおかけしてしまって、すみませんでした!」
「はは、いいんだよ。困っている人がいたら助けるのは当たり前だからね。それより、本当に元気になっていてよかったよ。…ふむ、君は身体が弱いのかい?」
「はい…昔よりマシにはなったと思うのですが…少し無理をすると、ちょっと。あ、でも授業には支障はないと思うので…!」
「なるほど。一応私も教師だからね…生徒の体調も見ていかないといけないから、少しでも具合が悪いようならすぐに言ってほしい」
授業が終わりデュラン先生に声をかけられ、振り向いてすぐ俺は頭を下げて謝った。
真剣な顔をしてそう言われたので俺はコクコクと頷く。
無理をしてまた倒れたらそれこそ迷惑だしね!
それを見た先生は安心したように笑みを浮かべて去って行った。
はぁ…色んな先生に虚弱体質がバレてしまった…。
担任のガルニエ先生はまだしも……ううん、でも俺が倒れなければいいだけの話だし…!!
「…あの日ってなんだ?」
「あっ」
「まぁたこれも秘密かぁ?」
「ひ、秘密っていうか…」
隣にシルがいた事を忘れていた。
訝しげに俺を見るシルから目を逸らせばつまらなさそうに口を尖らせた。
あの日俺が倒れてしまった事はリュカ以外誰も知らない。
だって嫌なんだもん…!知られるのが!
「…この間リュカと街に行った時にちょっと…色々あって。先生にお世話になっちゃっただけだよ。まぁ、先生だって事は知らなかったけど。あ、でも本当に大した事じゃないから!そこは!気にしないでっ!ね?」
「……フェルがそう言うならもう聞かねぇけどさァ……やっぱあの日俺も着いて行けばよかったぜ」
「ふふ、今度一緒に行こうね。すっごく楽しかったからさ、シルも気に入ってくれるといいな」
そういえばあの日、シルは「俺も着いて行く」と言って聞かなかったな。
リュカが断固拒否してたから俺にはどうしようもなくて、また今度ねと申し訳なくなりながら手を振ったんだっけ。
今思い返しても本当に楽しかったなぁ~。
リュカと2人でも十分楽しかったけど、人数が多い方が"楽しい"を共有出来る気がする。分かんないけどね。
その後シルと別れ教室に戻る道すがら動物のような鳴き声が聞こえてきた。
ーークゥン…キュ……
……鳴き声が止まった!?
俺は急いでその鳴き声が聞こえていた場所を草を掻き分けて、探した。
そして俺の目に飛び込んできたのはブルブルと震えながら蹲っている毛玉のような獣だった。
…この学園で飼われてるのかな…それにしては……と、こんな事考えてる場合じゃない!
震える獣を怖がらせないようにゆっくりと近寄りそっと手を伸ばす。
その手をやはり獣は怖がっていたので「ごめんね、怖いよね……でも、君のその怪我を治したいんだ…」と声をかけながら下からそっと手を差し出した。
突然撫でられても怖いだろうから、こうやって匂いを嗅いで君が判断してほしい。
そして獣はぺろっと俺の指を舐めたので俺は傷口に手が当たらないようにそっと抱き上げた。
「…なんでこんな傷が…?すぐに手当てするからね。ちょっとだけ我慢してね」
傷口に手を翳し『治癒』と心の中で唱えればあっという間に傷口が塞がっていく。
……うん、もう大丈夫かな。
「…あんまりヒールには慣れてないんだけど…どうかな。まだ、痛い?」
「クゥン!」
「わっ…あはは、くすぐったいよぅ…!ところで君はどこからやってきたの?飼い主さんがいるのかな?」
「クゥンキュ!」
「……そっかそっか。うーん…僕ね、今からまた授業があって……君がこの胸ポケットに入るぐらいの大きさだったら、連れていけたんだけど…なんて」
ね、までは言えなかった。
突然腕の中のわんちゃん(仮名)が光ったと思ったら物凄く小さくなった。
………えっと?
パチクリと瞬きをすれば褒めてと言わんばかりに尻尾を振っているわんちゃん(仮名)。
…連れて行け、ってことかな。
飼い主さんがいる訳でもないらしいし、ここに放置してまた怪我したら……。
それに、この……かわいいわんちゃん(仮名)を置いてはいけない…!!
もふもふ…!!
「ふふ、じゃあ一緒に行こうね。その後、君のことを先生に相談するね」
「クゥンッ」
そっと胸ポケットに近づけると器用にその中へと入っていった。
……まぁ、なんとかなるよね。
*****
彼は天才型なんです。
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