死んだと思ったら生まれ変わって魔族になってたんですが…。

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魔法学園

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一週間後。

俺はどどんっと擬音がつきそうな建物を前に口を開けたまま固まっていた。


「フェリチタ、大丈夫かい?」
「と、父様………これは、お城ですか?」
「え?……あぁ…まあ、確かにフェリチタからしたら大きいのか。かわいいなぁ」


心配そうに声をかけてきた父さんは俺の言葉を聞くなり微笑ましそうな顔になり、頭を撫でてきた。…うぐ。恥ずかしい。
でも、でもさ!!お城みたいに大きいんだ。学校って、こんなに大きいんだね……確かに人が沢山生活するんだもん、そうだよね…。

キラキラとした目を隠しきれていないフェリチタを見て、父親のユスクは何かを堪えるようにグッと目を閉じた。
ーー…私の息子が!こんなにも、かわいい!!!
そんな父親の胸中を知る由もないフェリチタは自分がこんなにはしゃいでしまったから、怒っているのかと勘違いしていた。


「…父様…?」
「ーーっ…すまない。行こうか」
「はいっ」


いかん。父親としての威厳を失うところだった。

****

「はわぁ……中はもっと凄い……」
「………」
「わっ!物が売ってる…わわ、お菓子も!」
「…っ……」
「父様、学校ってすごいですねっ!街のようです!」
「…そう、だな…!」


さっきから父さんがおかしいんだけど、やっぱ俺がはしゃいでるから怒ってるのかな。こんな事ぐらいではしゃぐな!みたいな?でもさ~初めてなんだもん。色んなものが新鮮で、キラキラ光って見える。
こんな場所で学べるって、凄いなぁ。嬉しいなぁ。
くふくふと喜びを隠せていないフェリチタは満面の笑みのまま会場へと向かうのであった。


そして、会場に着いた瞬間俺は余りの人の多さに腰が抜けそうになった。
……人多すぎない……?…色んな耳や尻尾の人がいる……触りたい……。もふもふしてる……。
先程とは別の色んな誘惑に惹かれそうになりながらも、指定された席へと腰掛け式の開始を待つ。


「…父様もこの学校に通っていたのですか?」
「ん?そうだよ。…昔とは結構変わっているから、私もなんだか新鮮な気持ちになるな」
「へぇ…」
「なんだ、緊張しているのか?」
「うぐ……僕、ちゃんと生活が出来るのか不安です……寮に入ってから」


そう。寮に入るか迷っていた俺は、学ぶ時間の方が大事だと思い寮に入る事を選んだ。…それに、ちょっとだけ憧れてたんだ。1人で生活する事に。…まあ、ジャグがついてくるけど。
父さんと母さんはみんないなくなるから寂しそうだったけど、俺が決めた事ならと賛成してくれた。
でも、一番関わっていた親元を離れて知り合いのいない場所で俺はやっていけるのか自信がない。怖すぎる。

そんな不安を抱いていた俺の手を父さんが握ってこう言った。


「みんな最初は誰でも初めての事だらけだ。でもな、初めての事だからこそみんなで助け合っていくんだよ。不安になるのも分かるが、一度それを隠して色んな人とお話してごらん。…きっと、大切な仲間が出来るはずだよ」
「…はい」
「それにね、フェリチタには帰る場所があるんだから。いつでも帰っておいで」
「…はいっ」


優しく笑う父さんに元気な返事をするとくしゃくしゃっと頭をかき混ぜるように撫でてくれた。父さんの、優しい安心する大きな手。魔法の手。

不安でいっぱいだけど、取り敢えず頑張ろう。
…ウィリアム様にも早く会いたいもんね。




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