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俺、爆誕
19歩
しおりを挟む「魅了っていうのは、じかくがないと、本人のいしがなくとも、はつどうするものなのですか?」
「まあ、そうだね。…理性のあるちゃんとした大人であれば、避ける事も出来るんだが…まだ魔法の事もよく分かっていない子供相手だとそうもいかなくてな」
「へぇ……まほうって、たいへんですね…」
「…すごく他人事のように言うけど、フェリチタ。君の能力の事でもあるからね?」
「あ。ごめんなさい…」
この世に生を受けて2年と少し…まだ前の生の方が長かったから、魔法の練習をしていると言えど他人事で聞いてしまう。
しょぼん…と落ち込んだ俺の頭上から小さな笑い声が聞こえてきた。
「…どうしてジョセフ様は笑っているのですか」
「はは。ごめんって…本当にフェリチタは可愛いなぁ」
「……早く、せいぎょのれんしゅうをしたいです…」
いいよ、もう!そうやって子供扱いしてればいいだろー!実際子供だけど!
これ以上何を言っても俺が拗ねると思ったのかジョセフ様はすぐに切り替えて「まずは…」と俺の能力の仕組みを説明し始めた。
……でも、制御するってことは常に気を張っておかないといけないってことか。…大丈夫かな。
ーーーー……
「はぁっはぁっ……ど、どうですか!」
「…うん。さっきよりは収まっているね」
「………僕、もう…むりです…疲れました…」
「それじゃあ、休憩にしよう」
出しては引っ込め、出しては引っ込めを繰り返して何時間が経ったんだろうか。
ジョセフ様がスパルタ過ぎて俺もう泣いちゃいそうです。
集中力が切れかかる度にジョセフ様が「はい、集中力切れてるよー」と魔力を使って圧をかけてくるし、最早涙目だったよ、俺。
ジャグが準備してくれた椅子に行儀は悪いがどさっと座り背もたれに寄りかかれば、「その調子でいけば入学するまでには、制御出来ている筈だよ」と言われた。
「…そうだといいんですけど…」
「フェリチタは真面目だからね。よし、今日は後少しやって終わろうか」
「……はい」
まだやるのか……ああ、でも確かに後少しのような気もする……。
ずっと集中していたからかクラクラするけど、休めば治るはずだ。
「…フェリチタ様、大丈夫ですか…顔色が少々…」
「…ん…?…あはは、だいじょうぶだよ。…あとちょっとだし…」
「……フェリチタ、何処か具合でも?」
「え?いいえ、だいじょうぶです!…よしっ!じゅーぶんに休んだので、つづきをやりましょう!」
「…フェリチタがそう言うなら」
この間寝込んだばっかりだったし、ジャグとジョセフ様が心配性なだけだよ!
これぐらいで倒れるなんてどんだけ体が弱いのって話になっちゃうし、ここは倒れるわけにはいかない!
それから何度も練習をして、漸く。
「…っ……ぅ…?…あっ……なるほど……これを、こう……出来た!」
「…うん、完璧だよ。やっぱり一度コツを掴んでしまえば飲み込みが早いね。優秀だな」
「えへへ!ジョセフ様のおしえ方がとっても分かりやすかったからです!」
「そう言って貰えると教えた甲斐があるな。…特別に君にはこれをあげよう」
そう言ってジョセフ様は首につけていたペンダントを取り外して俺の首へとつけた。
「…これは…?」
「これは、いつか君がもし危険に晒された時…きっと君を守ってくれるよ。お守りとして、つけていてくれるかな?」
「…良いのですか?…たいせつに、します」
両手でペンダントを持ち上げ見つめながらお礼を言えば優しく頭を撫でられ「今日はここまでにしよう。もうフェリチタに教える事はないよ」と告げられる。
「え!?で、でも…他のまほうをおそわりたいです…」
「何も今日じゃないといけないわけではないだろう?君が学園に入学した後でも十分教える時間はある。その時まで楽しみにしておいてくれないか?」
「…はい」
「…それに、学園に入学した後の方が自分の属性が分かっていいだろう?…ほら、そんなにしょげた顔をするな。かわいい顔が台無しだぞ」
「……かわいくはないです……ジョセフ様、今日はありがとうございました。また、よろしくおねがいいたします」
ジョセフ様が困っている事がはっきり分かって少し悲しいけど、こればかりは仕方ないのかな。
…あまり困らせたくはないし……もう今日は…いや、入学するまでは我慢しよう。それしかない。
少し早口でお礼を言ってぺこっと頭を下げ背を向ける。
「…拗ねちゃったかな」
というジョセフ様の言葉は届かなかった。
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