23 / 52
俺、爆誕
18歩
しおりを挟むジョセフ様との魔法の練習をすると約束した日、朝から俺は父さんに呼ばれてジャグと共に父さんの待つ部屋へと向かっていた。
「…こんなあさ早くから、なんだろう」
「従者は慌てていたようですが」
「……早く行こう」
確かにいつも落ち着いている従者さんがとても慌てていたような気がする。
嫌なことじゃなかったらいいけどなー。
コンコンコンと三回程ノックをし「フェリチタです」といえば中から「入れ」と返ってきた。
「失礼致します」
「ああ、こんな時間から済まないな。…取り敢えず、そこに腰を落ち着けてくれ」
指示された椅子へと腰掛け、父さんを見やれば何処か疲れた様子で何かあったのだろうかと内心首を傾げる。
俺はまだ学園に入ってさえいないから家の事等ジャグに聞くぐらいしか知らない。
そんな俺を呼んで話があるとは一体何事なのか。
緊張した面持ちでじっと待つ俺に父さんは小さく溜息を吐いて俺を見た。
「…そんなに緊張しなくてもいい。大した話ではない」
「本当ですか?」
「ああ。…フェリチタが半年後に入学する学園の話だ」
「学園の…」
学園の話…?入学するのに何か話しておかなければならない事があるのだろうか。
「…学園に入学する際に、己のステータスを初めて開示するのだが……その、ステータスがフェリチタの場合ちょっと特殊でな」
「…僕の?…でも、僕はいたってふつうの…」
「大まかに言えば、な。…親は子が産まれた時、子のステータスを見る事が出来る。…能力を隠す事もな」
え、俺何か隠されてたの?いや、まあ隠されてても自分が何を持ってるのかさえ知らないんだけど…。
きょとんとした表情を浮かべる俺に父さんはクツクツと喉で笑って「特殊と言っても、バレても問題ではない」と言った。
「…では、どうしてかくされたのですか…?」
「フェリチタ、今は公の場ではないから普通に話して良いぞ。話にくいだろう」
「…ちょこっとだけ…」
「ふははっ!素直でいいな。…隠したのには2つ、理由がある」
難しい言葉とか、長い言い回しの時とか舌足らずなこの口だと喋りにくくて嫌なんだよなぁ。
見事に父さんにバレていたみたいだけど。
ずずいっと二本の指を立てた手を近づけられ、俺は身を引く。
「まず1つ目だが……幼い年齢だと、自覚のないまま使ってしまうから。なのでまずは魔法に慣れて貰おうと思った」
「2つ目は…」
「2つ目は………フェリチタ。お前が、生きにくいと思ったからだ。こんなものと言ってしまえば楽だが…そうもいかん。実際にお前が持っているものだしな」
「…その隠したものって、いったい…」
そんな怖いもの俺持ってたの!?っていうか、このまま隠して貰ってた方がいいんじゃ…。
恐る恐る父さんを伺えば父さんは暫し考えた後こう言った。
「…『魅了』だ」
「…みりょう…?」
「そうだ。簡単に言ってしまえば、人を惹きつける力…だな。誰彼構わず力が働いたものは、フェリチタに惹かれてしまう」
「……」
それを聞いた俺の今の気持ちを正直に言おうか。
ぽかん………だ。
急にそんな事言われてもさ!?受け入れられることと、そうでないことってあるじゃん!?
今、それの後者!!受け入れられません!一生隠してて下さい!
「お、お父様…それはずっとかくしてもらうことって、できないの…?」
「……本当はそうしてやりたいんだがな。親が隠すことが出来るのは、学園に入学するまでなんだ」
「そ、そんな…」
……ん?あれ?親が?
「だからな、フェリチタ。今日から自分自身で制御する事を、覚えなさい」
「僕が……え、でも、どうやって……」
「だから、今日ジョセフが来ているんだ。…頼んだぞ、ジョセフ」
チラリと扉の方に目をやって父さんにつられて俺も振り返れば、いつの間にそこにいたのかジョセフ様が立っていた。
突然呼ばれたのに動揺も何もしてないジョセフ様は「やっぱり人使いが荒いな」と苦笑いした。
…今日の練習って、制御なのか…。
助かったような、残念なような…別にいいんだけどさ。
「じゃあ、フェリチタ。行こうか」
「…はぁい…お父様、僕、がんばります!」
「ああ。応援している」
むんっと気合いの入った俺の頭を優しく撫でて父さんは柔らかな笑みを浮かべ、応援してくれた。
38
お気に入りに追加
854
あなたにおすすめの小説
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

嫌われ変異番の俺が幸せになるまで
深凪雪花
BL
候爵令息フィルリート・ザエノスは、王太子から婚約破棄されたことをきっかけに前世(お花屋で働いていた椿山香介)としての記憶を思い出す。そしてそれが原因なのか、義兄ユージスの『運命の番』に変異してしまった。
即結婚することになるが、記憶を取り戻す前のフィルリートはユージスのことを散々見下していたため、ユージスからの好感度はマイナススタート。冷たくされるが、子どもが欲しいだけのフィルリートは気にせず自由気ままに過ごす。
しかし人格の代わったフィルリートをユージスは次第に溺愛するようになり……?
※★は性描写ありです。

【完結済み】準ヒロインに転生したビッチだけど出番終わったから好きにします。
mamaマリナ
BL
【完結済み、番外編投稿予定】
別れ話の途中で転生したこと思い出した。でも、シナリオの最後のシーンだからこれから好きにしていいよね。ビッチの本領発揮します。

起きたら草原…女性がいない世界ってマジですか!?
天音の柊
BL
気づいたら草原にいたんだ
周りには犬?がいて...えっと...?
しかもこの世界...女性がいないってマジですか?
☆ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
BLよりファンタジー要素の方が最初強めです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる