死んだと思ったら生まれ変わって魔族になってたんですが…。

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俺、爆誕

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ジョセフ様との魔法の練習をすると約束した日、朝から俺は父さんに呼ばれてジャグと共に父さんの待つ部屋へと向かっていた。


「…こんなあさ早くから、なんだろう」
「従者は慌てていたようですが」
「……早く行こう」


確かにいつも落ち着いている従者さんがとても慌てていたような気がする。
嫌なことじゃなかったらいいけどなー。

コンコンコンと三回程ノックをし「フェリチタです」といえば中から「入れ」と返ってきた。


「失礼致します」
「ああ、こんな時間から済まないな。…取り敢えず、そこに腰を落ち着けてくれ」


指示された椅子へと腰掛け、父さんを見やれば何処か疲れた様子で何かあったのだろうかと内心首を傾げる。
俺はまだ学園に入ってさえいないから家の事等ジャグに聞くぐらいしか知らない。
そんな俺を呼んで話があるとは一体何事なのか。

緊張した面持ちでじっと待つ俺に父さんは小さく溜息を吐いて俺を見た。


「…そんなに緊張しなくてもいい。大した話ではない」
「本当ですか?」
「ああ。…フェリチタが半年後に入学する学園の話だ」
「学園の…」


学園の話…?入学するのに何か話しておかなければならない事があるのだろうか。


「…学園に入学する際に、己のステータスを初めて開示するのだが……その、ステータスがフェリチタの場合ちょっと特殊でな」
「…僕の?…でも、僕はいたってふつうの…」
「大まかに言えば、な。…親は子が産まれた時、子のステータスを見る事が出来る。…能力を隠す事もな」


え、俺何か隠されてたの?いや、まあ隠されてても自分が何を持ってるのかさえ知らないんだけど…。
きょとんとした表情を浮かべる俺に父さんはクツクツと喉で笑って「特殊と言っても、バレても問題ではない」と言った。


「…では、どうしてかくされたのですか…?」
「フェリチタ、今は公の場ではないから普通に話して良いぞ。話にくいだろう」
「…ちょこっとだけ…」
「ふははっ!素直でいいな。…隠したのには2つ、理由がある」


難しい言葉とか、長い言い回しの時とか舌足らずなこの口だと喋りにくくて嫌なんだよなぁ。
見事に父さんにバレていたみたいだけど。

ずずいっと二本の指を立てた手を近づけられ、俺は身を引く。


「まず1つ目だが……幼い年齢だと、自覚のないまま使ってしまうから。なのでまずは魔法に慣れて貰おうと思った」
「2つ目は…」
「2つ目は………フェリチタ。お前が、生きにくいと思ったからだ。こんなものと言ってしまえば楽だが…そうもいかん。実際にお前が持っているものだしな」
「…その隠したものって、いったい…」


そんな怖いもの俺持ってたの!?っていうか、このまま隠して貰ってた方がいいんじゃ…。
恐る恐る父さんを伺えば父さんは暫し考えた後こう言った。


「…『魅了』だ」
「…みりょう…?」
「そうだ。簡単に言ってしまえば、人を惹きつける力…だな。誰彼構わず力が働いたものは、フェリチタに惹かれてしまう」
「……」


それを聞いた俺の今の気持ちを正直に言おうか。

ぽかん………だ。

急にそんな事言われてもさ!?受け入れられることと、そうでないことってあるじゃん!?
今、それの後者!!受け入れられません!一生隠してて下さい!


「お、お父様…それはずっとかくしてもらうことって、できないの…?」
「……本当はそうしてやりたいんだがな。親が隠すことが出来るのは、学園に入学するまでなんだ」
「そ、そんな…」


……ん?あれ?親が?


「だからな、フェリチタ。今日から自分自身で制御する事を、覚えなさい」
「僕が……え、でも、どうやって……」
「だから、今日ジョセフが来ているんだ。…頼んだぞ、ジョセフ」


チラリと扉の方に目をやって父さんにつられて俺も振り返れば、いつの間にそこにいたのかジョセフ様が立っていた。
突然呼ばれたのに動揺も何もしてないジョセフ様は「やっぱり人使いが荒いな」と苦笑いした。


…今日の練習って、制御なのか…。
助かったような、残念なような…別にいいんだけどさ。


「じゃあ、フェリチタ。行こうか」
「…はぁい…お父様、僕、がんばります!」
「ああ。応援している」


むんっと気合いの入った俺の頭を優しく撫でて父さんは柔らかな笑みを浮かべ、応援してくれた。

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