死んだと思ったら生まれ変わって魔族になってたんですが…。

15

文字の大きさ
上 下
23 / 52
俺、爆誕

18歩

しおりを挟む


ジョセフ様との魔法の練習をすると約束した日、朝から俺は父さんに呼ばれてジャグと共に父さんの待つ部屋へと向かっていた。


「…こんなあさ早くから、なんだろう」
「従者は慌てていたようですが」
「……早く行こう」


確かにいつも落ち着いている従者さんがとても慌てていたような気がする。
嫌なことじゃなかったらいいけどなー。

コンコンコンと三回程ノックをし「フェリチタです」といえば中から「入れ」と返ってきた。


「失礼致します」
「ああ、こんな時間から済まないな。…取り敢えず、そこに腰を落ち着けてくれ」


指示された椅子へと腰掛け、父さんを見やれば何処か疲れた様子で何かあったのだろうかと内心首を傾げる。
俺はまだ学園に入ってさえいないから家の事等ジャグに聞くぐらいしか知らない。
そんな俺を呼んで話があるとは一体何事なのか。

緊張した面持ちでじっと待つ俺に父さんは小さく溜息を吐いて俺を見た。


「…そんなに緊張しなくてもいい。大した話ではない」
「本当ですか?」
「ああ。…フェリチタが半年後に入学する学園の話だ」
「学園の…」


学園の話…?入学するのに何か話しておかなければならない事があるのだろうか。


「…学園に入学する際に、己のステータスを初めて開示するのだが……その、ステータスがフェリチタの場合ちょっと特殊でな」
「…僕の?…でも、僕はいたってふつうの…」
「大まかに言えば、な。…親は子が産まれた時、子のステータスを見る事が出来る。…能力を隠す事もな」


え、俺何か隠されてたの?いや、まあ隠されてても自分が何を持ってるのかさえ知らないんだけど…。
きょとんとした表情を浮かべる俺に父さんはクツクツと喉で笑って「特殊と言っても、バレても問題ではない」と言った。


「…では、どうしてかくされたのですか…?」
「フェリチタ、今は公の場ではないから普通に話して良いぞ。話にくいだろう」
「…ちょこっとだけ…」
「ふははっ!素直でいいな。…隠したのには2つ、理由がある」


難しい言葉とか、長い言い回しの時とか舌足らずなこの口だと喋りにくくて嫌なんだよなぁ。
見事に父さんにバレていたみたいだけど。

ずずいっと二本の指を立てた手を近づけられ、俺は身を引く。


「まず1つ目だが……幼い年齢だと、自覚のないまま使ってしまうから。なのでまずは魔法に慣れて貰おうと思った」
「2つ目は…」
「2つ目は………フェリチタ。お前が、生きにくいと思ったからだ。こんなものと言ってしまえば楽だが…そうもいかん。実際にお前が持っているものだしな」
「…その隠したものって、いったい…」


そんな怖いもの俺持ってたの!?っていうか、このまま隠して貰ってた方がいいんじゃ…。
恐る恐る父さんを伺えば父さんは暫し考えた後こう言った。


「…『魅了』だ」
「…みりょう…?」
「そうだ。簡単に言ってしまえば、人を惹きつける力…だな。誰彼構わず力が働いたものは、フェリチタに惹かれてしまう」
「……」


それを聞いた俺の今の気持ちを正直に言おうか。

ぽかん………だ。

急にそんな事言われてもさ!?受け入れられることと、そうでないことってあるじゃん!?
今、それの後者!!受け入れられません!一生隠してて下さい!


「お、お父様…それはずっとかくしてもらうことって、できないの…?」
「……本当はそうしてやりたいんだがな。親が隠すことが出来るのは、学園に入学するまでなんだ」
「そ、そんな…」


……ん?あれ?親が?


「だからな、フェリチタ。今日から自分自身で制御する事を、覚えなさい」
「僕が……え、でも、どうやって……」
「だから、今日ジョセフが来ているんだ。…頼んだぞ、ジョセフ」


チラリと扉の方に目をやって父さんにつられて俺も振り返れば、いつの間にそこにいたのかジョセフ様が立っていた。
突然呼ばれたのに動揺も何もしてないジョセフ様は「やっぱり人使いが荒いな」と苦笑いした。


…今日の練習って、制御なのか…。
助かったような、残念なような…別にいいんだけどさ。


「じゃあ、フェリチタ。行こうか」
「…はぁい…お父様、僕、がんばります!」
「ああ。応援している」


むんっと気合いの入った俺の頭を優しく撫でて父さんは柔らかな笑みを浮かべ、応援してくれた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...