死んだと思ったら生まれ変わって魔族になってたんですが…。

15

文字の大きさ
上 下
21 / 52
俺、爆誕

17歩

しおりを挟む


俺の呟いた声は聞こえていないと思ったけどジョセフ様は辺りをきょろきょろと見回して俺を見つけ、驚いたように少しだけ目を見開いたがすぐに笑顔になって「こんな所で、どうしたんだい?」と尋ねてきた。


「今、たからさがしをしていたんです!…ジョセフ様はここでなにを?」
「ああ…ユスクにね、少し頼まれて。宝物は見つかったかい?」
「お父様に?…あっ!たからものは見つかりました!」
「そうか。それは良かったね。…あ、そうだ。フェリチタ…今日ここで会った事は内緒にしていてね」
「…どうして、ですか?」


父さんに頼まれてここにいるのなら、別に隠したりしなくてもいいはずだ。
意図が分からず首を傾げればジョセフ様は苦い笑みを顔に浮かべて、俺の頭を撫でながら言った。


「…最近ね、ここ周辺で魔物が現れるっていう話があってね……その調査も兼ねてこの屋敷のこの場所を借りて、調査中なんだよ。あまりおおやけには出来ないから…確かな情報が手に入るまでは、内密にって指示なんだよね……全く、あいつは本当に人使いが荒いんだから」


呆れたように溜息を吐く姿は物凄く珍しくて俺は思わずくすくすっと小さく笑ってしまい、それを見たジョセフ様に「こら」と頬を摘まれてしまった。


「ごめんなひゃい…はなしてぇ~」
「ははは、フェリチタは本当に可愛いね。…ほら、宝探しの途中だったんだろう?もう戻りなさい」
「いたい……あ!ジョセフ様、こんどはいつ来られますか?僕、まほうのれんしゅーいっしょにしたいです!」


ペチペチとジョセフ様の手を叩けば笑いながら手を離してくれた。…まだ子供なのにひどい…。
そういえば、と頬を押さえながら思い出したようにジョセフ様に笑いかければ「そうだったね」とジョセフ様は考え始めた。

俺はわくわくと湧き上がる気持ちが抑えきれず両手を胸の高さで握りしめキラキラとした瞳を向け、返事を待つ。
だってだって!楽しみで仕方ないんだもの!
魔法の練習はジャグがいてくれるけど、やるのは俺一人だけだし…どうせなら一緒にやりたい。


「そうだね……明後日はどうだろうか?」
「僕は、だいじょうぶです!ジョセフ様がいいなら、その日にしましょう!」
「ああ、わかったよ。…それじゃあ、またね」
「はい!ジョセフ様、おきをつけて」


魔物の調査をしていると言っていたから怪我には気をつけてという意味で伝えたのだけど、ジョセフ様は何故か泣きそうな、悲しそうな顔をしていて不思議に思ったがそのままジョセフ様は何処かへ消えた。


「…おぉ……テレポーション……」


目の前で初めて見るテレポーションにパチパチと拍手をする。
…それにしても、なんであんな顔を……。
うむむ…と顎に手をやり悩んでいたらガサガサと草をかき分ける音と「フェリチタ様ー」と、俺を呼ぶジャグの声が聞こえてきたので中断した。


「…すぐ行く!」


とにかく、先程のことは誰にも内緒なのだ。
今は何も考えずまたジョセフ様に会えることを楽しみにしておこう。
そう思い直して俺はジャグの声がする方へと走り出した。


…案の定息の上がった俺を見てジャグに「病み上がりなんですから、走らないで下さい!」と怒られたけど。

急がなきゃと思ったんだもん。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

悪役令嬢に転生したが弟が可愛すぎた!

ルカ
BL
悪役令嬢に転生したが男だった! ヒロインそっちのけで物語が進みゲームにはいなかった弟まで登場(弟は可愛い) 僕はいったいどうなるのー!

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

王道学園なのに、王道じゃない!!

主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。 レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ‪‪.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…

処理中です...