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前世の、俺
プロローグ、的な
しおりを挟む「爽ちゃん…!!いやよ、目を開けてちょうだい…っ…そう、ちゃん…!!」
「爽!!!爽!!!」
「ひぐっ…ぅえ、ぅぇええ~ん!!に、ちゃ…にぃちゃ、やぁだよぉ~!」
ざわざわとせわしなく聞こえる騒音に、俺、何してるんだっけ、と冷静に考える自分がいた。
爽、爽って…あぁ、俺か。…何?って聞きたいけど、もう目が開かないし…物凄くだるい、なぁ…。
泣いてる声ばっかり聞こえるや。ごめん、ごめんな。
母さん、生まれたときからこんなんでごめんな。
それでも毎日笑顔を見せてくれてありがとう。泣いてる事は知ってたけど、俺の前では一切泣かなかったよな。
あの子が頑張ってるのに、なんて言って。
母さんの笑顔、見てるだけで安心した。…だけど、治らないなんて事とっくの昔に知ってたから申し訳なくて、俺もちょっとだけ泣いた。…ちょっとだけ。
父さん…仕事が忙しくてあんまりお見舞いに来れなかったみたいだけど、時間が空けば飛んできてくれてたの知ってるよ。
俺の大好きだったものもたくさん持ってきてくれて…照れ臭くて素直に言えなかったけど、本当に感謝してる。
どんどんやせ細っていく俺を見ては、顔をしかめていたのはちょっと面白かった。
にいちゃ、にいちゃと泣きながら俺を呼んでいるのは、弟…。
もっとお前とたくさん遊びたかったな。ごめんな、全然相手できなくって。
俺と遊べるとわかったときのお前の反応が可愛くて、無理しちゃって怒られたりもしたけど…。
…俺にべったりだったお前がかわいくて、かわいくて仕方なかったよ。
最後に撫でてやりたかったけど、もう、無理、みたいだ…。
たくさん、たくさんやりたかった事はあるけど、時間はもう、ない。
後悔がないなんて言えないし、言いたくもないけどさぁ…。
でも、やっとこの状態から解放されるのかーって思ったら、少し嬉しい。
生まれ変われるなら…またこの3人の元にうまれたいな。…なんて。
恥ずかしくて絶対言えないけどな。
ごめんねと、ありがとう…綺麗事かもしれないけど最期ってわかったらこの気持ちしか残ってないや。
不思議と苦しいって思わない。死ぬときってこんな感じなんだって驚きだわ。
あぁ、みんな泣かないで…家族以外の泣き声も聞こえるんだけど…なんだ、俺って結構愛されちゃってたのか。
…最期に嬉しい事もわかったし、もう、いいか。
ものすごく、眠たい…んだ…。
『おやすみ』
きっと聞こえるはずはないけど、俺はずっと決めてたんだ。
最期の言葉はこれにしようって。
また、目が覚めて夢だったんだって、思いたいから。
そこで俺の意識は途切れて、短い人生に終わりを告げた。
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