死んだと思ったら生まれ変わって魔族になってたんですが…。

15

文字の大きさ
上 下
3 / 52
前世の、俺

プロローグ、的な

しおりを挟む


「爽ちゃん…!!いやよ、目を開けてちょうだい…っ…そう、ちゃん…!!」
「爽!!!爽!!!」
「ひぐっ…ぅえ、ぅぇええ~ん!!に、ちゃ…にぃちゃ、やぁだよぉ~!」


ざわざわとせわしなく聞こえる騒音に、俺、何してるんだっけ、と冷静に考える自分がいた。
爽、爽って…あぁ、俺か。…何?って聞きたいけど、もう目が開かないし…物凄くだるい、なぁ…。

泣いてる声ばっかり聞こえるや。ごめん、ごめんな。

母さん、生まれたときからこんなんでごめんな。
それでも毎日笑顔を見せてくれてありがとう。泣いてる事は知ってたけど、俺の前では一切泣かなかったよな。
あの子が頑張ってるのに、なんて言って。
母さんの笑顔、見てるだけで安心した。…だけど、治らないなんて事とっくの昔に知ってたから申し訳なくて、俺もちょっとだけ泣いた。…ちょっとだけ。

父さん…仕事が忙しくてあんまりお見舞いに来れなかったみたいだけど、時間が空けば飛んできてくれてたの知ってるよ。
俺の大好きだったものもたくさん持ってきてくれて…照れ臭くて素直に言えなかったけど、本当に感謝してる。
どんどんやせ細っていく俺を見ては、顔をしかめていたのはちょっと面白かった。

にいちゃ、にいちゃと泣きながら俺を呼んでいるのは、弟…。
もっとお前とたくさん遊びたかったな。ごめんな、全然相手できなくって。
俺と遊べるとわかったときのお前の反応が可愛くて、無理しちゃって怒られたりもしたけど…。
…俺にべったりだったお前がかわいくて、かわいくて仕方なかったよ。
最後に撫でてやりたかったけど、もう、無理、みたいだ…。

たくさん、たくさんやりたかった事はあるけど、時間はもう、ない。
後悔がないなんて言えないし、言いたくもないけどさぁ…。
でも、やっとこの状態から解放されるのかーって思ったら、少し嬉しい。
生まれ変われるなら…またこの3人の元にうまれたいな。…なんて。
恥ずかしくて絶対言えないけどな。

ごめんねと、ありがとう…綺麗事かもしれないけど最期ってわかったらこの気持ちしか残ってないや。
不思議と苦しいって思わない。死ぬときってこんな感じなんだって驚きだわ。

あぁ、みんな泣かないで…家族以外の泣き声も聞こえるんだけど…なんだ、俺って結構愛されちゃってたのか。


…最期に嬉しい事もわかったし、もう、いいか。
ものすごく、眠たい…んだ…。


『おやすみ』


きっと聞こえるはずはないけど、俺はずっと決めてたんだ。
最期の言葉はこれにしようって。

また、目が覚めて夢だったんだって、思いたいから。



そこで俺の意識は途切れて、短い人生に終わりを告げた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました

taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件 『穢らわしい娼婦の子供』 『ロクに魔法も使えない出来損ない』 『皇帝になれない無能皇子』 皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。 だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。 毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき…… 『なんだあの威力の魔法は…?』 『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』 『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』 『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』 そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

起きたら草原…女性がいない世界ってマジですか!?

天音の柊
BL
気づいたら草原にいたんだ 周りには犬?がいて...えっと...? しかもこの世界...女性がいないってマジですか? ☆ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ BLよりファンタジー要素の方が最初強めです

BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

BL
前世の記憶を持ったまま異世界に転生! しかも転生先が前世で死ぬ直前に買ったBLゲームの世界で....!? モブだったので安心して壁になろうとしたのだが....? ゆっくり更新です。

生まれ変わりは嫌われ者

青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。 「ケイラ…っ!!」 王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。 「グレン……。愛してる。」 「あぁ。俺も愛してるケイラ。」 壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。 ━━━━━━━━━━━━━━━ あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。 なのにー、 運命というのは時に残酷なものだ。 俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。 一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。 ★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...