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彼方ルート4-終-
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「……だ…」
「え?」
「離れるなんて、嫌だ」
「ぇ…ぅわっ」
ぐいっと彼方に腕を引かれ彼方の胸に顔を打つ。
何するんだと抗議しようとした口はそのまま、彼方の唇に塞がれてしまった。
「んっ…ふ、ぁ…っ…っめろ!」
「っ……」
「なん、で…なんでこんな事するんだよ…!今更、なんなんだよ……もう、諦めさせてよ…!」
舌を入れてこようとする彼方の舌をガリッと噛んで離れる。
血の味がする。痛かったかな。そんな心配をしてしまう自分がいて、嫌になる。
ボロボロと流れる涙を袖で拭いながら気持ちを吐露すると、彼方が「なんで諦めるなんて言うの」と言った。
は…?と顔を上げれば頬を両手で包まれて優しく涙を拭われる。
「大和、やまと……お願い…俺の話を聞いてほしい……もしそれでも離れるっていうなら、俺はそれを受け入れるから」
「……何を言っても、僕は…」
「いい。それで、いいから」
「……わかった」
聞いているこちらの胸が痛くなるような声色で言う彼方に僕は力を抜いた。
きっと水無月さんの事なんだろう。本当はこのまま逃げ出したい。でも彼方が聞いて欲しいなら、聞いてからでも遅くはない。
大人しくなった僕に安心したようにほっと息を吐いて彼方は話し始めた。
それを聞いて僕は耳を疑った。
ーー彼方が、僕を好き?
でもそれを聞いても僕は驚いただけで、喜びとか嬉しさとかは全く感じなかった。
「…俺、本当に大和が好きで…でも、男同士だしもし告白して気持ち悪いって言われたって思うと俺…生きていけないから…」
「それで別の人の名前を出したの?」
「うん……でも、水無月は本当にただの腐れ縁で!大和の考えてるような関係じゃなくて…」
「…そう」
「水無月にも言われたんだ」
水無月さんに?
「大和を泣かせるなって。お前みたいな人間の側にいてくれるような人を、傷付けるなよって」
「……彼方は別に、普通の人じゃない?」
「………それは…俺は大和に見限られたくなくて、かっこつけてただけで…本当はただの弱虫だし、束縛激しいし……っ…大和以外にはどう見られたってなんとも思わなかったけど!!…大和にはかっこいい俺だけを見ててほしくて…」
「…僕が、そんな人間だって思ってたって事?」
「ちがっ…!」
うん、男だもんね。その気持ちはわかるよ。
だけどさ僕も男だよ。なんでそれぐらいで見限られるって思ったの?
訳分かんないよ。
「…彼方は……きっと、僕じゃなくてもいいんだよ。あぁ、別に嫌味とかじゃなくて。…この離れてた2ヶ月ずっとそう思ってたんだ」
好きで好きで仕方なかった。2ヶ月間ずっと頭から離れなかった。
でも彼方は僕じゃなくても、他の人とでも幸せになれる。それこそ、女性とでも。
そう考えた時僕は彼方とはもう親友でいようって決めてしまった。
「彼方、痩せたね。ごめんね、僕があんな風に出て行っちゃったからだよね。…僕はさ、彼方の重荷になりたくないんだ。だから…」
「重荷になんてなってない!!俺はっ…俺は、大和じゃないと嫌だ!お願い…戻って来て…」
ぎゅう、とまるで迷子の子供のように僕を抱きしめる彼方に僕は何かとんでもない事をしたんじゃないかと焦った。
……それと同時に、胸が温かくなるのを感じた。
だめ、だめだ。もう好きになんてなっちゃだめだ。…なのに。
「好き、好き…愛してるんだよ…!!」
「彼方…」
絆されてしまいそうな自分がいる。
…いい、のかな。僕がまた彼方の手を取っても。
「…僕、彼方の側にいても、いいの?」
「当たり前だ!ずっと隣にいてほしい」
「好きで、いて…いいの…?」
「っ…出来れば…」
抱き込まれたままの姿勢で彼方が僕の耳に囁く。
「愛して欲しい」
それを聞いて僕は彼方の背に腕を回して子供のように泣いた。
僕には手に入らないと思っていたものが、今はすぐ近くにある。
ただそれだけの事なのに嬉しくて嬉しくて、死んでしまいそうだ。
「大和、愛してるよ。大和だけが欲しい。だから、俺だけを見てて」
「…うん、僕も。彼方だけを見てる」
****
うーん…。
「え?」
「離れるなんて、嫌だ」
「ぇ…ぅわっ」
ぐいっと彼方に腕を引かれ彼方の胸に顔を打つ。
何するんだと抗議しようとした口はそのまま、彼方の唇に塞がれてしまった。
「んっ…ふ、ぁ…っ…っめろ!」
「っ……」
「なん、で…なんでこんな事するんだよ…!今更、なんなんだよ……もう、諦めさせてよ…!」
舌を入れてこようとする彼方の舌をガリッと噛んで離れる。
血の味がする。痛かったかな。そんな心配をしてしまう自分がいて、嫌になる。
ボロボロと流れる涙を袖で拭いながら気持ちを吐露すると、彼方が「なんで諦めるなんて言うの」と言った。
は…?と顔を上げれば頬を両手で包まれて優しく涙を拭われる。
「大和、やまと……お願い…俺の話を聞いてほしい……もしそれでも離れるっていうなら、俺はそれを受け入れるから」
「……何を言っても、僕は…」
「いい。それで、いいから」
「……わかった」
聞いているこちらの胸が痛くなるような声色で言う彼方に僕は力を抜いた。
きっと水無月さんの事なんだろう。本当はこのまま逃げ出したい。でも彼方が聞いて欲しいなら、聞いてからでも遅くはない。
大人しくなった僕に安心したようにほっと息を吐いて彼方は話し始めた。
それを聞いて僕は耳を疑った。
ーー彼方が、僕を好き?
でもそれを聞いても僕は驚いただけで、喜びとか嬉しさとかは全く感じなかった。
「…俺、本当に大和が好きで…でも、男同士だしもし告白して気持ち悪いって言われたって思うと俺…生きていけないから…」
「それで別の人の名前を出したの?」
「うん……でも、水無月は本当にただの腐れ縁で!大和の考えてるような関係じゃなくて…」
「…そう」
「水無月にも言われたんだ」
水無月さんに?
「大和を泣かせるなって。お前みたいな人間の側にいてくれるような人を、傷付けるなよって」
「……彼方は別に、普通の人じゃない?」
「………それは…俺は大和に見限られたくなくて、かっこつけてただけで…本当はただの弱虫だし、束縛激しいし……っ…大和以外にはどう見られたってなんとも思わなかったけど!!…大和にはかっこいい俺だけを見ててほしくて…」
「…僕が、そんな人間だって思ってたって事?」
「ちがっ…!」
うん、男だもんね。その気持ちはわかるよ。
だけどさ僕も男だよ。なんでそれぐらいで見限られるって思ったの?
訳分かんないよ。
「…彼方は……きっと、僕じゃなくてもいいんだよ。あぁ、別に嫌味とかじゃなくて。…この離れてた2ヶ月ずっとそう思ってたんだ」
好きで好きで仕方なかった。2ヶ月間ずっと頭から離れなかった。
でも彼方は僕じゃなくても、他の人とでも幸せになれる。それこそ、女性とでも。
そう考えた時僕は彼方とはもう親友でいようって決めてしまった。
「彼方、痩せたね。ごめんね、僕があんな風に出て行っちゃったからだよね。…僕はさ、彼方の重荷になりたくないんだ。だから…」
「重荷になんてなってない!!俺はっ…俺は、大和じゃないと嫌だ!お願い…戻って来て…」
ぎゅう、とまるで迷子の子供のように僕を抱きしめる彼方に僕は何かとんでもない事をしたんじゃないかと焦った。
……それと同時に、胸が温かくなるのを感じた。
だめ、だめだ。もう好きになんてなっちゃだめだ。…なのに。
「好き、好き…愛してるんだよ…!!」
「彼方…」
絆されてしまいそうな自分がいる。
…いい、のかな。僕がまた彼方の手を取っても。
「…僕、彼方の側にいても、いいの?」
「当たり前だ!ずっと隣にいてほしい」
「好きで、いて…いいの…?」
「っ…出来れば…」
抱き込まれたままの姿勢で彼方が僕の耳に囁く。
「愛して欲しい」
それを聞いて僕は彼方の背に腕を回して子供のように泣いた。
僕には手に入らないと思っていたものが、今はすぐ近くにある。
ただそれだけの事なのに嬉しくて嬉しくて、死んでしまいそうだ。
「大和、愛してるよ。大和だけが欲しい。だから、俺だけを見てて」
「…うん、僕も。彼方だけを見てる」
****
うーん…。
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