偽物の僕は本物にはなれない。

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そして僕が選んだのは、彼方と付き合う、だった。
でも、大丈夫だよ。分かってるから。
この関係がすぐに終わりを迎える事なんて。
期待はしない。我儘も言わない。僕を優先して、なんて絶対に言わない。言えない。

そんな僕の確固たる決意は彼方が知る事なく、僕達は順調に付き合いを続けていた。
合鍵を貰い、セックスもした。
痛くて痛くて死んでしまいそうだったけど、彼方は沢山キスをしてくれて僕は幸せで、だけど彼方はそうじゃないんだと思うと涙が止まらなかった。
快感で泣いていると彼方は勘違いしてくれていたのが、少し救い。

でも、そんな幸せな日々はやっぱり長くは続かなくて。

僕は見てしまった。

用事がある、と出掛けた彼方。
そしてその横には綺麗な笑みを浮かべる水無月さん。

「…なんだ、お似合いじゃん」

僕はお店の窓に反射する自分の顔を見て、ゾッとした。
こんな顔が今まで彼方の隣に並んでいたのかと思って。

「…はは、そりゃ水無月さんの方がいいよね」

当たり前のことだとわかるのに。
なんでかな、悲しくて、胸が痛くて……なのに、涙は出なくて。
終わりがある事に気付いていたからかな。

そして僕はふらふらと自分の家に帰り、気晴らしになんて出掛けるんじゃなかったなぁと自嘲した。
見なければこんな終わりが来る事もなかったのかもしれないのに。

…でも、本物がいるなら偽物は消えなくちゃ。

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