偽物の僕は本物にはなれない。

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目を逸らしながら言えば彼方はきょとんとした表情で「俺ら付き合ってなんか、ないけど」と言った。

「は、はぁあ?なんで?お互い好きなんでしょ?なんで、付き合って……あぁ、そっか」
「なに?」
「男同士だから、みたいな変な壁があるんでしょどうせ。…そんなの、関係ないのにさ」

両想いなのにくっつかないって、なんなの?
見てるこっちがしんどい。いっその事早くくっついてくれたら、僕は諦めがつくのに。

「…そんなんじゃ、ない」
「そんなんじゃないなら何?…ねえ、もういい?理由は言ったよね?」
「もういいって、なんだよ!」
「…何に怒ってるのか知らないよ。だけど、僕これから奏多さんと会う約束してるから…遅れたくない」
「奏多って…また、またあいつかよ!俺とあいつ、どっちの方が大事なんだよ!」

叫ぶように言われ思わず彼方に決まってる、と言いそうになる口を閉じ言葉を飲み込んだ。
だめだ、これは言ったら、だめ。
一瞬の葛藤。
ふぅ…と息を吐いて彼方を見据える。

「…奏多さんだよ。だって、奏多さんは僕の好きな人だもん……報われなくてもさ、側にいるだけで幸せなの」

僕が言うこのカナタは、彼方なのか奏多さんなのかもう分からない。でもどっちでも彼方には関係ないよね。
ああ、嫌だな。泣いてしまいそうだ。
そんな顔を見られたくなくて俯くと、僕の肩を掴んでいた彼方の手に力が入る。

「…っ…辛いなら……、…辛いなら、俺にしろよ!」
「え…」
「俺なら、大和をこんな顔にはさせない!なあ、俺を選べよ…!」
「でも…彼方は水無月さんが…」
「あいつは、別に…」

…ああ、そっか。さっき付き合ってないって言ってたもんね。
もしかしたら水無月さんは抵抗がある人なのかもしれない。
好きだけじゃ、やっていけないんだね…。

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