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「最初はあいつ、なんてお節介焼きなんだって思ってた」
「俺もそう思うよ」


2人で笑う。
だって、普通恋人の面倒を親友に頼まなくねえ?
あいつやっぱ、変だよ。笑えるくらい。うん。

あいつの親友なだけあって、こいつも変。
俺のこと好きになったとか言うんだよ。

それに絆された俺も、変。

変、なのかなあ。


「まだ、あいつのこと忘れた訳じゃない。まだ、好き……」
「うん」
「でもさ、俺の都合のいい妄想かもしんないけど、前向けって怒られた気がしてさ」


今日はお墓参り。成人したよって報告に。
そしたらなんか、お前が呆れてる気がして。
気のせいかな。気のせいかも。
でも、今日はなんだろう、素直に受け入れられる気がした。


ぎゅっと、軽く握っていた親友くんの手を強く握り、目を合わせる。


「まだ、完全に親友くんに気持ちが向いた訳じゃないけど、それでも、それでも……」
「……いいよ」
「へ……」
「君の気持ちが俺に完全に向いてる訳じゃないことは分かってる。何年一緒にいたと思ってるの」


だけど、と親友くんは続ける。


「それでも俺は君が好きです。あいつの分まで、俺が君を愛します。だから、俺と一緒にいて下さい」
「そん、そんなの……」
「だめ、かな」
「ダメな訳ない!こっちのセリフだ!俺、俺……」


ふと、親友くんの後ろに目を向ける。

そこにはあいつがいて。

驚いて瞬きをすれば、一輪の花。



ポインセチア。



あいつの好きだった、花。

そうか、それがお前からの最期のはなむけの言葉か。



なら、俺はその言葉をずっと忘れない。お前を愛したことも、お前に愛されていたことも。



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