上 下
75 / 76

番外編 学園祭の話3

しおりを挟む
そして学園祭当日。
オレはあの大変な衣装を着てメイク道具片手にニコニコと笑っている生徒を前に、駄々をこねていた。


「いーやーだー!!」
「嫌って言ってもやめませーん。ほら、大人しくして」
「うぅ……あくまぁっ!人でなしぃっ!!」
「涙目で睨まれても怖くないし、僕以外にやったらすぐ襲われちゃうよ」


こんな180cm男を襲う人間なんています!?喧嘩なら負けませんけど!?
いくら文句言っても生徒は諦めないし時間もないしでオレは泣く泣くメイクを施された。
…オレ、この学園に来てから2回もメイクされてるんだけどォ…。うぅ…。


「よし、完成!我ながら最高傑作。元がいいと何しても完璧になるから助かる~」
「…それは褒めてくれてるの?もう、やだぁ…」
「あっ泣かないでね!?ほら、君の大好きな彼氏に見せてきなよ」
「なんかバカにされてる!?…んもう……瑛ちゃんありがとー」
「あははっ!顔と言葉が合ってないよ!いいから行ってきなって」


ひらひらと手を振られてオレは先に準備が終わっているであろう直也の元へと歩みを進めた。
…直也に癒してもらおう…。

ガラッと直也のいる教室の扉を開けキョロキョロと探せばすぐに探し人は見つかった。
ぱぁっと顔が明るくなるのを感じる。「直也ー!」と小走りで近寄ればオレを見た直也が目を見開いたまま固まっていた。


「…直也?」
「え、あ、……いや……」
「オレ色々いじられちゃってさぁー!変じゃなぁい?」
「へ、んじゃ…ない………すげーかわいい…」
「へ」


直也は顔を真っ赤にして口を押さえながら小さかったけれどそう言ってくれた。
オレはもうそれだけ機嫌なんてすぐ直っちゃうし、有頂天になっちゃう!!!
喜びのあまりオレは直也に抱きついて「直也もすっげーかっこいい」と耳元で囁く。
まだ本番前だからなのか首元が緩められているのを見てオレはピコーンと閃いた。

今のオレは吸血鬼だもんね。

直也の晒されている首元にカプリと噛み付けばびくっと直也の身体が跳ねた。
んふふ、いつもの仕返しだよ。


「ちょ、智充…っ…」
「きゅーけつひだもんっ…」
「だめ、だって…!」
「なーんーでー!」


バリッと直也に引き剥がされてオレは口を尖らせて見るとはーはーと息を上らせた直也と目があった。
…おっと。
そこでオレはやらかしてしまったことを悟った。
そして直也に耳元で囁かれたのだ。


「ーー夜、覚悟しておけよ」
「は、はひ…」


明日は一日ベッドコースかなぁ…。


****
「いらっしゃいませ」


そう言って入って来たお客さんをエスコートすればキャイキャイと女の子の黄色い声が聞こえてくる。
オレの普段の喋り方はダメって言われたから間延びしない喋り方にしてるんだけど、結構疲れる~。
でもまあ、それはいいんだけどね。オレが一番嫌なのはさ…。


「あのぉ~写真撮ってくださぁい」
「あー……お嬢様の生き血と引き換えになりますが、宜しいですね?」
「キャーーーーッ!!!わ、私の血でよければ…!!」
「ふふ、ではこちらに」


こ・れ・で・す。
なにこのセリフ。需要あるの?
ま、血なんて飲まないしノーセンキューである。
実際はブースに行って撮るだけだ。しかも金がかかる。なんで人気なのかさっぱり。

喜んで帰っていくお客さんを見送ってオレは盛大なため息を吐く。
休憩までにオレ死んじゃいそう…。


「大丈夫か?」
「っなおやぁ……うん。あとちょっとだもんね。頑張る」
「ふ、そうか。無理はするなよ」
「直也もね?…あんまり、女の子に近寄っちゃ、やだよぅ…」
「ああ、わかってる。でも智充もだぞ?」


ぽん、とオレの頭に手を置いて覗き込んでくる直也にオレは笑みを浮かべてガッツポーズをすれば少し笑ってくれた。
直也の裾をきゅっと握り上目に見つめれば甘い笑顔で応えてくれる。そしてオレの頬を両手で挟んで言われてオレは首を傾げた。

別にオレは女の子に近寄ってなんかないけど…。


「…女だけじゃなくて、男もだからな」
「あはは、直也の気にしすぎだよ。…ん、でも気をつける」
「そうしてくれ。…じゃあ、後少し頑張ろうな」
「はーい、そこのお2人さん。いちゃつくのは後でにしてねー」


休憩に入るまで何度かこんなやりとりがあったけど、何故かお客さん(特に女の子)にも人気でパフォーマンスのようになっていた。






****
くっ。終わらなかった!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話

八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。 古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。

同室のイケメンに毎晩オカズにされる件

おみなしづき
BL
 オカズといえば、美味しいご飯のお供でしょ?  それなのに、なんで俺がオカズにされてんだ⁉︎  毎晩って……いやいや、問題はそこじゃない。  段々と調子に乗ってくるあいつをどうにかしたいんです! ※がっつりR18です。予告はありません。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

悪役令息の兄には全てが視えている

翡翠飾
BL
「そういえば、この間臣麗くんにお兄さんが居るって聞きました!意外です、てっきり臣麗くんは一人っ子だと思っていたので」 駄目だ、それを言っては。それを言ったら君は───。 大企業の御曹司で跡取りである美少年高校生、神水流皇麗。彼はある日、噂の編入生と自身の弟である神水流臣麗がもめているのを止めてほしいと頼まれ、そちらへ向かう。けれどそこで聞いた編入生の言葉に、酷い頭痛を覚え前世の記憶を思い出す。 そして彼は気付いた、現代学園もののファンタジー乙女ゲームに転生していた事に。そして自身の弟は悪役令息。自殺したり、家が没落したり、殺人鬼として少年院に入れられたり、父に勘当されキャラ全員を皆殺しにしたり───?!?!しかもそんな中、皇麗はことごとく死亡し臣麗の闇堕ちに体よく使われる?! 絶対死んでたまるか、臣麗も死なせないし人も殺させない。臣麗は僕の弟、だから僕の使命として彼を幸せにする。 僕の持っている予知能力で、全てを見透してみせるから───。 けれど見えてくるのは、乙女ゲームの暗い闇で?! これは人が能力を使う世界での、予知能力を持った秀才美少年のお話。

【完結】もっと、孕ませて

ナツキ
BL
3Pのえちえち話です。

凶悪犯がお気に入り刑事を逆に捕まえて、ふわとろま●こになるまで調教する話

ハヤイもち
BL
連続殺人鬼「赤い道化師」が自分の事件を担当する刑事「桐井」に一目惚れして、 監禁して調教していく話になります。 攻め:赤い道化師(連続殺人鬼)19歳。180センチくらい。美形。プライドが高い。サイコパス。 人を楽しませるのが好き。 受け:刑事:名前 桐井 30過ぎから半ば。170ちょいくらい。仕事一筋で妻に逃げられ、酒におぼれている。顔は普通。目つきは鋭い。 ※●人描写ありますので、苦手な方は閲覧注意になります。 タイトルで嫌な予感した方はブラウザバック。 ※無理やり描写あります。 ※読了後の苦情などは一切受け付けません。ご自衛ください。

処理中です...