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オレ、お前の事。

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のんびりとみんなのところへと戻っていると「…おい」と声をかけられた。

「…会長…」
「そんなに警戒するな。別に何もしない」

いやいやそんな事言われても信じませんけどね?

「何か御用ですか?」
「…用がないと話しかけてはいけないのか」
「えぇ…だって会長とオレ別に仲良くない…」

そこまで言ってふとオレは気付く。
なんで会長オレの容姿に何も言わないの?っていうか何で気がついたの?
イメチェン…というか本来の姿に戻ったのは知っていたとしても、あれから会ってさえいないし…顔を知られていたとは思えない。
だってこの人が近くにいたら周りの生徒が騒がない筈がないし。
んん?と首を傾げれば何がおかしいのか会長は、ククッと喉で笑った。

「…くっ…いや、すまん。百面相しているのが面白くて、ついな」
「百面相なんてしてません…会長こそこんな所で何してるんですか?」
「…まあ、それはな。なんだ、気になるのか?」
「え?全然。お話がないならもうオレ行きますけどぉ」
「…相変わらず連れないな。いいぞ、もう」

何がしたいのか全くわかんない。こわ…と思いつつ頭を下げて歩き出してちらりと後ろを向けば会長は真顔でじっとこちらを見ていた。

…ねーーー本当に怖いんですけどぉおおお!!
オレ、ホラーなのとかまじで無理なチキンだからやーめーてー!
内心半泣きでみんなの元へ急げば「なんでそんなに息切らしてんだ?」と不思議そうにされた。
訳を話せば佐原は「お前、本当に変な人に好かれるなぁ」なんて笑うからジミーくんに嘘泣きで縋る。
ジミーくんは優しいから佐原に本気で怒っていた。ぷぷぷ。

「ちょ、旬!そいつ嘘泣きだぞ!」
「そんな訳ないでしょ!…智充くん、ごめんね?」
「ぐすっ…んーん…旬くんは悪くないよぅ…」
「ほら、これあげる」

よしよしと頭を撫でてくれるジミーくんはまるで聖母のようだ。
あ、そうそうオレとジミーくん超仲良しになって、名前呼びにまで発展したのだ!でもついつい心の中ではジミーくんって呼んじゃう。

はい、と飴を渡されたので大人しくそれをコロコロと舐める。
甘い物は人類を救うよねぇ…。ふにゃ…と思わず頬を緩めれば黙ってオレ達のやりとりを見ていた楢原から抱き寄せられた。

「…なぁに、楢原」
「くっつきすぎだ。…あとなんでそいつの名前は呼ぶのに、俺に対しては未だに名字なんだよ」
「えー?やきもちぃ?」
「……んだよ、悪ぃか」
「んふふ、全然?」

今は周りに人いないしいいか、と思ってほっぺにチュ、と軽くキスをすれば機嫌が治ったのかぐりぐりと頭を擦り付けてきた。
オレが楢原の名前呼ばないのって、誰にも話した事ないんだけど…ただ単にセックスしてる時の事思い出して恥ずかしいからなんだよね。
乙女かよと思ってしまうけど、なんか……なんかさぁ…。

んー…と少し考えて楢原の耳元で呟く。




「…直也、帰ったらきもちーこと……シよ?」


そう言った直後横抱きされて連れて帰られるとは思わなかったよねー。
人間って恐ろしい。



**
また遅刻…!!申し訳ない…!!
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