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突然スタートさせられた異世界生活
知りたくて知りたくない事実
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その人間の都合によって浄化の目的で連れて来られたってのは分かった。異世界から人を連れてくるくらいなら自分で何とかする方法考えた方が楽だったんじゃない?納得は出来ないし、到底許すことなんて出来ないけど。
それでも根本的な問題が解決していない。
「魔族が…、なん、で助ける。」
途中で、ラヴァルから声に出さず頭に言いたい事を強く念じなさい、と言われた。
(魔族が何故人間の、しかも異世界人の私を助けるの?)
そこが分からなかった。予言があったからといって目的なしにほいほいと人助けなんてしてられないだろう。
アノーリオンが答えた。
「数百年前までは人間と魔族が戦争しておった。といっても人間による、魔族が有する物を奪うためだけの一方的なものだったがのぅ。
その命と引き換えに戦争を終わらせ、人間達から傷ついた魔族たちを守ってくれた一人の異世界人がいたのじゃ。」
ギルミアが引き継いで答えた。
「彼は四宮 守といってね、人間の王国に保護されていたんだ。でも魔族達の現状を知るや、人間達へお灸を据えてやるっていってそこの湖で自殺したんだよ。」
「異世界人である彼の身が死してなお魔族領にあることで、魔族領は半永久的に淀みから守られた。そして彼は稀代の策士でのぅ、ラヴァルが師匠と仰ぐほどだったのじゃ。彼が作り出した誓約のお陰で人間は魔族に軍を差し向ける事が出来んようになったのじゃ。その彼と約束したのじゃ。困っている異世界人を一人残らず保護してほしいというな。我らは幾千年経ようと彼の恩を忘れん。
それと、ララや。わしは認知症では決して無い。年のせいでな、ちぃーっと忘れっぽいだけじゃから誤解しないように。」
アノーリオンが念押しした。
「それでもぉ、一つだけ弊害があってねぇ。それが一番厄介なのよぉ。」
カーミラが言った。
ラヴァルが頷いて言った。
「真名の縛りですね」
「そうよぉ。まさか人間達に守が使った契約方法を知られるとは思わなかったんだもの。
あのね、ララちゃん。真名の縛りってね、親に生まれて初めてつけてもらった名前を他人に知られて、魔力を込めてその名前を呼ばれると命令に逆らえなくなるのよぉ。勿論、親は別だけれどね。」
とカーミラが解説してくれる。
「真名は求婚の時に男から明かすんだよ。求婚を受ける時は女性も自分の真名を明かして、結婚の契約をするんだ。だから普段は愛称か偽名を使うんだ。」
とギルミア。
「だからどうか教えてほしい。なんならこの話を誰にも漏らさないという契約をしても構わない。
ララランドという名前は君の本名かい?」
(いいえ。本名一文字もかすりもしてません。)
契約しても良いとまで言ってくれたギルミアに、私は即答した。
ギルミアは一番の問題が解決したのにもかかわらず、複雑そうな表情を浮かべていた。何故なのかと聞けば、
「…キミ、警戒心随分強いね…?咄嗟に偽名思い付くとかさ…。いや、そのお陰で無事だったから良かったんだけど……」
ギルミアが何故か引いていた。
ここで一つ、疑問が湧いた。
(…私は、帰れますか。家族の元へ。)
しん、と突然静寂がおりた。それだけで答えが分かったような気がした。
皆が痛ましい顔をしてこちらを見ていたから。それでも聞かずにはいられなかった。
アノーリオンが言いにくそうに言った。
「我ら魔族総出でその方法を探しておるがのぅ…、異世界から来る人は最も強力な浄化作用を持つ事が分かっておる。そしてだな…、この世界にも自衛本能のようなものがある事も判明しておる。だからな、その、儂らが異世界への扉を開いても、世界がその身を守ろうと反発して上手くいかんのじゃ…。異世界人はこの世界の時空を越える事がどうしても出来なんだ…。何度試しても、繋いだはずの道が掻き消されるのじゃ…。
我らの力不足で、家族の元へ還してあげられなくてごめんのぅ…。我らは未だ受けた恩を返せていない恥知らずよ…。儂ら魔族も、そなたを召喚した人間も変わらず、そなたにとっては、そなたから搾取するだけの略奪者にすぎん…。」
いつの間にか私もアノーリオンも泣いていた。顔のサイズが違いすぎて、アノーリオンの涙一粒がバケツ一杯分程あるようで、私の足元でばっしゃんばっしゃんいっている。
言いたい事は山のようにあった。それでもそれを、この人たちの前で言うのは違うと思った。何百年も前に受けた恩をまだ返せていないと、すまないと泣く人に八つ当たりなんて出来なかった。
だから今は全てを飲み込んだ。歯を食いしばって、両手を強く握りこんで。
やっぱり私をここに呼んだ人間がいる。
行き場を無くした感情が一つの方向性を得て暴れ狂った。
それでも根本的な問題が解決していない。
「魔族が…、なん、で助ける。」
途中で、ラヴァルから声に出さず頭に言いたい事を強く念じなさい、と言われた。
(魔族が何故人間の、しかも異世界人の私を助けるの?)
そこが分からなかった。予言があったからといって目的なしにほいほいと人助けなんてしてられないだろう。
アノーリオンが答えた。
「数百年前までは人間と魔族が戦争しておった。といっても人間による、魔族が有する物を奪うためだけの一方的なものだったがのぅ。
その命と引き換えに戦争を終わらせ、人間達から傷ついた魔族たちを守ってくれた一人の異世界人がいたのじゃ。」
ギルミアが引き継いで答えた。
「彼は四宮 守といってね、人間の王国に保護されていたんだ。でも魔族達の現状を知るや、人間達へお灸を据えてやるっていってそこの湖で自殺したんだよ。」
「異世界人である彼の身が死してなお魔族領にあることで、魔族領は半永久的に淀みから守られた。そして彼は稀代の策士でのぅ、ラヴァルが師匠と仰ぐほどだったのじゃ。彼が作り出した誓約のお陰で人間は魔族に軍を差し向ける事が出来んようになったのじゃ。その彼と約束したのじゃ。困っている異世界人を一人残らず保護してほしいというな。我らは幾千年経ようと彼の恩を忘れん。
それと、ララや。わしは認知症では決して無い。年のせいでな、ちぃーっと忘れっぽいだけじゃから誤解しないように。」
アノーリオンが念押しした。
「それでもぉ、一つだけ弊害があってねぇ。それが一番厄介なのよぉ。」
カーミラが言った。
ラヴァルが頷いて言った。
「真名の縛りですね」
「そうよぉ。まさか人間達に守が使った契約方法を知られるとは思わなかったんだもの。
あのね、ララちゃん。真名の縛りってね、親に生まれて初めてつけてもらった名前を他人に知られて、魔力を込めてその名前を呼ばれると命令に逆らえなくなるのよぉ。勿論、親は別だけれどね。」
とカーミラが解説してくれる。
「真名は求婚の時に男から明かすんだよ。求婚を受ける時は女性も自分の真名を明かして、結婚の契約をするんだ。だから普段は愛称か偽名を使うんだ。」
とギルミア。
「だからどうか教えてほしい。なんならこの話を誰にも漏らさないという契約をしても構わない。
ララランドという名前は君の本名かい?」
(いいえ。本名一文字もかすりもしてません。)
契約しても良いとまで言ってくれたギルミアに、私は即答した。
ギルミアは一番の問題が解決したのにもかかわらず、複雑そうな表情を浮かべていた。何故なのかと聞けば、
「…キミ、警戒心随分強いね…?咄嗟に偽名思い付くとかさ…。いや、そのお陰で無事だったから良かったんだけど……」
ギルミアが何故か引いていた。
ここで一つ、疑問が湧いた。
(…私は、帰れますか。家族の元へ。)
しん、と突然静寂がおりた。それだけで答えが分かったような気がした。
皆が痛ましい顔をしてこちらを見ていたから。それでも聞かずにはいられなかった。
アノーリオンが言いにくそうに言った。
「我ら魔族総出でその方法を探しておるがのぅ…、異世界から来る人は最も強力な浄化作用を持つ事が分かっておる。そしてだな…、この世界にも自衛本能のようなものがある事も判明しておる。だからな、その、儂らが異世界への扉を開いても、世界がその身を守ろうと反発して上手くいかんのじゃ…。異世界人はこの世界の時空を越える事がどうしても出来なんだ…。何度試しても、繋いだはずの道が掻き消されるのじゃ…。
我らの力不足で、家族の元へ還してあげられなくてごめんのぅ…。我らは未だ受けた恩を返せていない恥知らずよ…。儂ら魔族も、そなたを召喚した人間も変わらず、そなたにとっては、そなたから搾取するだけの略奪者にすぎん…。」
いつの間にか私もアノーリオンも泣いていた。顔のサイズが違いすぎて、アノーリオンの涙一粒がバケツ一杯分程あるようで、私の足元でばっしゃんばっしゃんいっている。
言いたい事は山のようにあった。それでもそれを、この人たちの前で言うのは違うと思った。何百年も前に受けた恩をまだ返せていないと、すまないと泣く人に八つ当たりなんて出来なかった。
だから今は全てを飲み込んだ。歯を食いしばって、両手を強く握りこんで。
やっぱり私をここに呼んだ人間がいる。
行き場を無くした感情が一つの方向性を得て暴れ狂った。
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