7 / 48
本編
精霊祭の出会い (拐われた少女視点1)
しおりを挟む
私の両親は、大通りに店を構える若い女性向けの雑貨屋を営んでおり、10歳離れた兄ルディとその三歳下の姉サラがいた。
「兄さんったら、また彼女変わったの!?リズとかいう女の人が店まで押し掛けて来たのよ!!姉さんもうすぐ臨月だから店番手伝って貰えないのに!!」
「ナタリーはもう15歳になったんだね。今日もとっても元気がいいなぁ」
長男のルディは母譲りの栗色の少し癖のある髪に、甘いマスクと人懐っこい雰囲気で女性にしょっちゅう言い寄られており、フラれた女性が店に押し掛けてくることも多々あった。兄は経営を学ぶため他の商会に勤めており、店に突撃してくる女性達の矢面に立つのは、いつも店番をしている私だった。
姉のサラは父譲りの赤毛で、見事な巻き毛だった。性格はとてもおっとりしている。「怒っているのよ!」とはっきり言わないと怒っていることに気が付かないほどだと思う。ちなみに、私の容姿は母方の祖母譲りの金髪だ。
前は姉と一緒に店番していたが、姉は忙しい母に代わり家の使用人達を取り仕切っていた。姉の性格では結局矢面に立つのはいつもナタリーである事にナタリーは気が付いていない。
「兄さんたらちゃんと聞いてよ!女性と別れる時は双方納得の上でしなさいよ!私が迷惑するじゃない!私は精霊祭の準備で忙しいのよ!!」
私は怒るが、この兄には何を言っても笑ってかわされる。腹立だしいことこの上ないが、この優秀で優しい兄が大好きだった。
「フラれたのは僕の方なんだけどね。それより、今年は何を売るんだい??」
ルディは心底楽しそうに尋ねた。
「今年は一段と気合いをいれたの。造花で作った花冠と、花を刺繍した香り付きのハンカチを売るつもりよ」
この時期限定で売り出される商品の一部はナタリー自身で作って売っており、ナタリーは自身が手掛けたものが昨年の売り上げでどの店よりダントツだったことがとても誇らしかった。
「うちの看板娘は頼もしいね。明日は張り切りすぎて無理するんじゃないよ」
「無理なんてしないわ!祭りは前半3日が勝負なのよ!あ、祭りの後半は少し余裕が出来るから、祭り一緒に回ろうね、兄さん。約束よ。」
この一家に、暗雲が立ち込めるのはこの会話から三日後の事だった。
「兄さんったら、また彼女変わったの!?リズとかいう女の人が店まで押し掛けて来たのよ!!姉さんもうすぐ臨月だから店番手伝って貰えないのに!!」
「ナタリーはもう15歳になったんだね。今日もとっても元気がいいなぁ」
長男のルディは母譲りの栗色の少し癖のある髪に、甘いマスクと人懐っこい雰囲気で女性にしょっちゅう言い寄られており、フラれた女性が店に押し掛けてくることも多々あった。兄は経営を学ぶため他の商会に勤めており、店に突撃してくる女性達の矢面に立つのは、いつも店番をしている私だった。
姉のサラは父譲りの赤毛で、見事な巻き毛だった。性格はとてもおっとりしている。「怒っているのよ!」とはっきり言わないと怒っていることに気が付かないほどだと思う。ちなみに、私の容姿は母方の祖母譲りの金髪だ。
前は姉と一緒に店番していたが、姉は忙しい母に代わり家の使用人達を取り仕切っていた。姉の性格では結局矢面に立つのはいつもナタリーである事にナタリーは気が付いていない。
「兄さんたらちゃんと聞いてよ!女性と別れる時は双方納得の上でしなさいよ!私が迷惑するじゃない!私は精霊祭の準備で忙しいのよ!!」
私は怒るが、この兄には何を言っても笑ってかわされる。腹立だしいことこの上ないが、この優秀で優しい兄が大好きだった。
「フラれたのは僕の方なんだけどね。それより、今年は何を売るんだい??」
ルディは心底楽しそうに尋ねた。
「今年は一段と気合いをいれたの。造花で作った花冠と、花を刺繍した香り付きのハンカチを売るつもりよ」
この時期限定で売り出される商品の一部はナタリー自身で作って売っており、ナタリーは自身が手掛けたものが昨年の売り上げでどの店よりダントツだったことがとても誇らしかった。
「うちの看板娘は頼もしいね。明日は張り切りすぎて無理するんじゃないよ」
「無理なんてしないわ!祭りは前半3日が勝負なのよ!あ、祭りの後半は少し余裕が出来るから、祭り一緒に回ろうね、兄さん。約束よ。」
この一家に、暗雲が立ち込めるのはこの会話から三日後の事だった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
婚約者の心の声が聞こえるようになったけど、私より妹の方がいいらしい
今川幸乃
恋愛
父の再婚で新しい母や妹が出来た公爵令嬢のエレナは継母オードリーや義妹マリーに苛められていた。
父もオードリーに情が移っており、家の中は敵ばかり。
そんなエレナが唯一気を許せるのは婚約相手のオリバーだけだった。
しかしある日、優しい婚約者だと思っていたオリバーの心の声が聞こえてしまう。
”またエレナと話すのか、面倒だな。早くマリーと会いたいけど隠すの面倒くさいな”
失意のうちに街を駆けまわったエレナは街で少し不思議な青年と出会い、親しくなる。
実は彼はお忍びで街をうろうろしていた王子ルインであった。
オリバーはマリーと結ばれるため、エレナに婚約破棄を宣言する。
その後ルインと正式に結ばれたエレナとは裏腹に、オリバーとマリーは浮気やエレナへのいじめが露見し、貴族社会で孤立していくのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる