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第四章 クロード・ロキ・グラニエの来訪

ありがたき幸せ

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「二人、後継者がいります。前述の、破壊剣エクスカリバーと、守護剣アイギスを持つ覚悟と勇気のある者を探しているのです。アッシュさん、あなたは皇国付きのナイトをされていると伺っております。ただ、戦争ばかりする皇国からいったん離れ、少しの間、来るべき戦いに備え、旅をしていただきたい」
「!!」アッシュが驚きの表情を見せる。
「まぁ!」と、フリーダも驚く。
「このことにご了承を得たい。私がある程度、お力や知恵をお貸しすることはできますが、あなたには世界を救うという意志はおありでしょうか」
「あなた様の後継者として、ですが……。わたくしめは、姫君に仕えると誓ったものです。姫君がいいとおっしゃるなら、喜んでお力、お貸ししましょう」
「そうですか、ありがとうございます」
「アッシュ!ここは、大賢者様の言う通り、世界アラシュアのために、戦いましょう、アッシュ!私も旅についていくわ!」
「姫君!?!」
「アッシュ、私とあなたは二人で一つよ!私だって、まだ16歳、結婚するには早いし、その間、あなたと世界をめぐって、世界のために旅するのも悪くないわ」
「姫君・・・・・」
「では、このことを、皇帝陛下にもお伝えしてきます。一部、皇国に対する悪口のようなものがあったのと、あなたに断られたら別の手段を考えていたため、陛下にはご退席していただきました。では」と言って、クロードは別室で待機しているオーガスト皇帝陛下のもとへと向かった。
 しばらくして、皇帝が戻ってきた。
「話は聞いた」と、皇帝。
「アッシュ君、今日から君の、フリーダの護衛役を解除する。君は、世界のために戦ってほしい」
「陛下!しかし、アッシュめは、姫君と一緒にいたいのです!いつまでも、姫君をお守りしたくて、その・・・・」
「私と一緒ならいいそうです」と、フリーダが珍しくはっきり言った。
「お父様、わたくしはまだ16、結婚には早すぎます。時の大賢者様、クロード・ロキ・グラニエ様の後継者にして、世界を救う者として選ばれた、アッシュ・ディ・ルーナとともに、世界のために旅する許可を、私に下さいませ」
「・・・・!!!フリーダ、しかし・・・!!」
「わたくしめからも、お願いいたします、陛下」と、ドロテがお辞儀をする。
「わたくしめからも!」と、リディとミュリエルが続いてお辞儀をする。
 自然と、ラファエルも深々とお辞儀をする。
「・・・・わかった。こうしよう、フリーダ。もう君はアッシュ君と結婚しなさい。君にその意思があるのなら」
「え?」と、フリーダ。
「君がアッシュ君に心を開き、心を寄せていることは、こっそり侍女たちから聞いている。なんでも、ハインツェ王子殿下のところで、夜にキスを交わしたそうではないか。君とアッシュ君なら、幸せになれるだろうし、我が国の、『領土目当ての戦争ばかり』というイメージを払しょくできるいい機会だ」
「陛下・・・・」と、アッシュが呆然として言う。
「ではな。あとは二人で決めなさい。旅の許可は出すよ、フリーダ」と言って、皇帝陛下は、従者を伴って、部屋を出ていった。
 その場に取り残された一行は、しーんとなり、やがて皆の視線が、フリーダとアッシュに注がれた。クロードもにこにこして二人を見つめている。
「姫君、わたくしとともに、世界の果てまでも、ついてきてくださいますか」と、アッシュがフリーダの手を取って言った。
「アッシュ・・・・はい、わたくしめも、あなたと一緒についてきます。どこまでも」と言って、二人は見つめあい、キスをした。
 ドロテが、「キャッ」と言って、手で真っ赤になった顔を隠す。
「うん、これで一件落着かな」と、クロード。
「あとね、アルトゥーラ君の名づけの件です。実は、アルトゥーラ君の名前は、生まれる前から、母竜と父君によって、決められていました。ドラゴンの名前には、詩の一説をとる、という風習があってですね!アルトゥーラ君の真の名前は、『銀梅花は静かに、月桂樹は高くそびゆ』という名前なんだ。ようは、月桂樹のドラゴン、というわけです。省略して言うと、シュリンカという名前なんです」
「!!そうですか、私たちが勝手に名付けたのがいけなかったのね」と、フリーダ。
「あなた方は知らなかった、何も悪くありません。ただ、親御さんがシュリンカくんとなづけていらっしゃるので、それを尊重していただけるとありがたいです」と、クロードがペコリと一礼する。
「わかりました」と、フリーダ。
「さて、ではシュリンカ君を拝見させてもらうとして、その後、ドラゴンが来るのを待つとして、アッシュ殿にもう少し、詳しい話をしましょう」
 そう言って、一同はいったん解散となった。
「姫様、」と、ドロテが階段を下りながら、フリーダに言う。
「本当に、アッシュ殿と・・・・・!?」
「ええ、ドロテ」と、フリーダはきっぱりと言った。
「わたし、アッシュのような方と結婚するのが、夢でしたし、アッシュはなにより、私のよき友人でもあります」
「それは存じておりますが……」
「ドロテ、」とフリーダが階段で立ち止まり、微笑む。
「これからも、私の力になってくれますか。私、アッシュを選びます」
「ええ、もちろん、姫様にどこまでもついていきます」と、ドロテが顔をほころばせて言う。
 リディとミュリエルも、微笑んでいる。
「あんな美形の騎士さんなんて、この国中探してもおりませんわ、姫様」
「結婚式は、だいだい的になさるのかしら」
 と、二人が言いあう。
 次の日の朝、部屋で公務の一部をしていたフリーダのもとに、アッシュが様子を見に来た。
「姫君、クロード大賢者様から、あらかたの事情を聞いてまいりました。昨晩は一晩ほどかかりました」「
「あら、アッシュ!」と言って、フリーダが顔を真っ赤にして振り向く。
「姫君?」
「な、なんでもないの」
「姫君、確認です。アッシュめとの結婚を、受け入れてくださいますか」
「はい、アッシュ。どこまでも、ついていきます。この世の果てまでも。死霊の国で戦うことになろうと、この世界の端までいって、破壊剣を取りに行くことになろうとも、わたくしは、自分でつかみ取った、この幸運な命運に身を委ねます」
「ありがたき幸せ」と言って、アッシュがフリーダを抱きしめた。
「姫君、姫君」と言って、二人はしばし抱き合った。
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